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    もものかんづめ

    @kmjy25

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    もものかんづめ

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    楓恒と視線の話

    軽微な濁点だけあります

    ##楓恒

    幕間の楓恒⑲ 資料室に響いているのは機械を操作する音と、時折紙を捲る音。丹恒は機械の操作パネルをじっと見つめアーカイブの整理を行っており、丹楓はそんな丹恒から離れたところでどこかの星で購入された書物を読んでいた。
     丹楓が顕現してからというもの日常と言っても過言ではない風景の一つではある。しかし、会話の一つもないまま数日間この様子であるので丹恒は丹楓の様子を時折伺っていた。
     丹恒が羅浮へ行く時は丹楓は同行してこないのだが、丹恒が数日前少しの間羅浮に滞在し戻ってきた時から丹楓の様子がおかしい。
     まず、夜は共に寝ていた筈だが就寝の準備をしている間に資料室を出て行ってしまい戻ってこない。始めは何か用事があるのだろうと思っていた丹恒だったが、それが一日一日と積み重なり今ではほぼ毎日になっている。
     もう一つは日中は資料室に居る丹楓だが、目を合わせようとしない。名前を呼んでも返事はするが、読んでいる書物へ向けた視線がこちらへ向くことは無い。
     丹恒とて、集中して書物を読むときは同じようにしてしまうこともあるので強くは言えないがこちらも毎日続いており流石におかしいと感じていた。
     だが、不機嫌そうにしているようにも見えずどうしたものかと丹恒は息を吐き出した。
     一度丹楓と話をした方が良いのかもしれないと、手元の操作パネルの確定ボタンを押す。アーカイブへ登録される時のウィンドウの表示を確認し、次はどれを行うべきかと積み上げられている資料へ手を伸ばした。
     「……ッ、…丹楓?」
     指先が資料に触れる寸前、離れていたはずの丹楓の指が丹恒のおとがいを撫で、掴んでくる。驚いている間もなく丹楓の方へ顔を向けさせられた丹恒は目を丸くさせ、丹楓の名前を呼んだ。
    「なん…っ、…んんっ…」
     丹恒が口にしようとした言葉が丹楓の唇に塞がれて、飲み込まれていく。重なった唇の間、薄く開いたそこから丹楓の舌が唇の縁を舐め、口内へ入り込んでくる。
    「ん、ッ……ん、はっ…」
     奥へと逃げてしまった丹恒の舌を逃がさないとでもいうように、舌で絡みとられきつく吸い上げられるとぞわりとしたものが丹恒の背筋を震わせた。
     感覚に耐えきれず丹楓の上着を握ると、丹恒の舌を解放した丹楓は唇を離していく。丹楓と丹恒の唇の間で銀糸がかかる。
    「は、…たん、ふ……突然、何をする……」
     息を整えるために濡れた唇を手の甲で拭うと、こちらを見下ろしている丹楓の目が剣呑なものに変わっていった。
     丹恒は突然丹楓がこのようなことをした理由も、今まで様子がおかしかった理由も聞かなければと丹楓から視線をそらさない。
    「其方は最近ひどく忙しそうではないか」
    「……いつもと変わらないだろう」
    「そうか? 余と目を合わせる時間もない程に書物ばかり気にかけているだろう」
     丹楓の伝えたいことがうまく理解できず丹恒は首を傾げた。
     そもそも、丹恒と目を合わせていなかったのは丹楓の方だと思っていたからだ。
    「それは、丹楓もだろう」
    「余は其方を気遣っていたにすぎぬ」
    「…夜、資料室に居ないこともか?」
    「もしや覚えておらぬのか? 其方が羅浮より戻りし日のことを」
     丹恒は丹楓に言われて自分の記憶の中を遡る。丹楓の言っているその日は羅浮での依頼内容が難しいと星から言われ、手分けした方が良いと三月と星と三人で羅浮へ赴き数日かけて依頼内容をこなし列車に戻ってきた日だろう。
    「其方は此処に戻るなり、その場に倒れて眠ったのだ」
    「……記憶にない」
    「眠っていたのだから当たり前だろう。余が其方を寝台まで運んだのだ」
     丹楓に言われ更に思い出そうと瞼を閉じる。確かに羅浮での任務は、追放令が解除されたとは言え持明族のこともあり落ち着いて休むことはできていなかったように思う。任務中は疲れ等あまり感じなかったが、列車に戻り資料室へ入り丹楓の顔を見た安心感のようなものでそのまま眠ってしまったのかもしれない。
    「疲れている其方に無理強いをすることはできぬと、余は其方に触れぬようにしていただけにすぎぬ」
    「…ならばなぜ、今こんなことをする」
     丹楓は丹恒のおとがいを掴みずっと話をしている。そのせいか丹恒と丹楓の顔は近く話す度に息もかかるほどだった。
    「其方の目が余以外を見つめ続けるのは我慢ならぬと思ってな」
    「……俺は丹楓のことしか見ていないが」
    「番としてではない、現実での話だ。余の方を向かぬ其方の瞳が気に入らぬ」
     丹恒を気遣い距離をとったのは丹楓であり、丹恒はそんな丹楓の様子がおかしいと更に距離をとっていたのだが。丹楓はそんな丹恒の様子が気に入らないと言う。
     話をするか悩んでいたこともばからしいと思えてしまうくらいのことに、丹恒は心の中で小さく笑うとおとがいに触れている丹楓の手に自分の手を重ね合わせた。
    「丹楓の方を見れずすまなかった…丹楓が俺と距離を取ろうとしていることには気づいていた。だから…、……触れたいと思ってしまわないように目を合わせないようにしていた」
     丹恒は瞳を伏せる。丹楓が丹恒に触れないように気遣い離れていったように、丹恒もまた丹楓に触れたいと思わないように視線を離していただけにすぎなかった。
     どこまでもすれ違ってしまっているが、本質的にはお互いのことを考えすぎていたのだと今ならばわかる。
    「其方も余と同じようだな」
    「…そうだな」
     おとがいに触れていた丹楓の手が頬へと移る。慈しむように撫でられ、丹恒は丹楓の手へ頬を寄せた。
    「丹恒よ、瞳を閉じよ」
    「…ん、…は…んん…」
     先ほどの強引な口づけとは違いそっと重なった口づけに丹恒は自分から丹楓の唇を舌先でつつく。優しい口づけも嫌いではないが、今はもっと深く交ざり合いたい。
    「んぅッ…ふ、ん…っ、は、…ん!」
     迎え入れられた丹楓の口の中で、丹楓の舌に自分から舌を絡める。くちゅくちゅと鳴る水音も今は興奮する為の音でしかなく、もっと丹楓を感じたいと丹恒はさらに舌を差し出した。
    「は、んんぅッ…ッ!」
     ぢゅ、と音が聞こえそうな程丹楓に舌を吸い上げられて、びりっと走った快感に丹恒は膝の力が抜けてしまう。
    「…其方は誠に…目が離せぬな」
    「は、ぁ…あ…、…」
     座り込む直前丹楓の尾に体を支えられて、丹恒は乱れた息のまま丹楓を見上げる。てらてらと濡れた丹楓の唇が自分と丹楓の唾液が交ざったものだと思うと今更ながら僅かに恥ずかしさがある。
     こちらを見やる丹楓の指先が丹恒の唇を撫で、唇の端から肌を伝って顎まで垂れていた唾液を拭っていった。
    「…ん」
    「っ! ぁ、…た、んふ…」
    「続きは夜更けに」
    「ん…」
     丹恒に見せつけるように丹楓は拭った唾液をゆっくりと舌先で舐めと、丹恒の唇に指を近づけてくる。舐めろとも、食めとも言われていないその指を丹恒は瞼を閉じて口内に迎え入れるとちゅ、と音を鳴らして舐めとる。
     夜更けまでに体の熱をさまさなければと頭の片隅で考えながら。
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