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    もものかんづめ

    @kmjy25

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    もものかんづめ

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    丹楓さんがおしょたな丹恒くんを育てている楓恒の初夏の贈り物の話

    紫丁香花:ライラック

    ##楓恒

    幕間の楓恒㉖ 有象無象が己の意見を述べるだけの場になっている会議で、丹楓は眉目を寄せながらその光景を眺めていた。実のある話をしたのははじめだけ、次の戦はどの時期に何処へどの部隊が向かうかを話していたのだが気が付くと話の流れは羅浮の統治の話へと変わり、己の権力を誇示したい者たちだけが次々と意見を出す場へと変わっていた。
     このような場に丹恒を連れて来れず、屋敷に一人置いてきたのだが今頃どうしているのかとふと考えてしまう。このような場で要らない時を過ごしているうちに何かが起こっているかもしれない。
     そう考えると、この意味のない時間を早く終わらせなくてはと思ってしまう。
    「飲月、顔に出ているぞ」
    「……其方も出ているが」
    「もう二人共! 大事な会議なんですよ!」
     鏡流、白珠と話をしていればチラチラとこちらを伺うような視線を向けられた。この三人のやり取りにも意味はなく、話し合うことが無いのであればここに居る必要すらない。
     はぁ、と息を吐き出してまだ口を開き続ける者達が居る中、席を立つ。
    「我等は此処で退席する」
    「飲月君…!」
     引き留めてくる声を無視して、鏡流と白珠を連れ部屋を後にする。
     あの場に居た所で意味のない時間が続くだけならば、居る意味等ないだろう。
    「二人共このまま帰るんですか?」
    「そのつもりだが」
    「でしたら、二人共お土産を買っていきませんか?」
     鏡流と二人、是と示せば白珠はふるると耳を震わせて楽しそうに笑いながら提案をする。お土産とは、一人で屋敷に残してきた丹恒に向けてのものだろうが、同じ羅浮でそのようなものを贈ったところで意味はあるのだろうか。
    「お土産というより、ご褒美の方がわかりやすいかもしれないですね!」
    「景元はそのようなものを喜ぶような歳ではないと思うが」
    「わかりませんよ? それは贈ってからのお楽しみという事で!」
    「ふむ…」
     丹恒に褒美として渡すのであればどういうものが良いのだろうかと視線を動かす。装飾品や、衣類等の店ももちろんあるが丹恒に贈るものにしては些か造りが拙い。そういうものよりは本の方が良いだろう。
    「飲月は食べ物にしたらどうだ」
    「何か理由でもあるのか」
    「小さな子は、食べ物が好きだろう」
     鏡流の意見もわからなくはない。食べたことのないものには興味が尽きないようで、果物一つでも喜ぶような子だ。
     ふむ、と視線を彷徨わせある一点に目が留まる。まだ、食べさせたことも見せたこともない其ならば興味はきっとあるだろう。
     他の店を見ながら、何を贈るのか相談している二人を置いて小さなその店へと近寄る。然程客が入っている店ではないようだが、普段羅浮では見ないものが多い。
     白群色のリボンのついた小さな小瓶に入った薄紫色と白色の紫丁香花が入った其を手に取り店主へと金を渡す。
     目に留まったのは丹楓も普段あまり食べないものだったからということもあるが、人工の光に反射した小瓶が僅かに輝いて見えていたからかもしれない。
    「あれ? もう決めたんですか?」
     鏡流も買うものが決まったのか、店へと入っていったので白珠が丹楓の手元を覗き込む。小さな小瓶に入った紫丁香花を見てパチパチと目を瞬かせた。
    「紫丁香花の砂糖漬けですね!」
    「小さな子は食べ物が好きなのであろう?」
    「ふふ、喜んでくれるといいですね」
     白珠がそう言っている間に鏡流も金を渡し終えたのか、店から出てくる。二人はそのまま鏡流の贈り物を渡しに行くらしいが、生憎と丹楓の屋敷は別の方向になるので其処で丹楓は別れ一人屋敷へと向かう。
     屋敷へ着き、丹楓は己の部屋へと向かう。向かう途中で視線を向けた庭の方には居なかった所を見るとやはり丹楓の部屋に居るようだ。
    「ふうにぃ」
    「何事も無かったか」
     丹楓がいつも書類を広げている机に向かい、本を読んでいた丹恒が扉を開ける音で顔を上げた。以前読んでいたものよりも僅かに難しいものを読んでいたいたようだ。
     部屋の中も争ったような形跡は無く、丹恒も丹楓の問いかけにこくりと頷く。
     丹楓は小さく息を吐き出して、丹恒の隣へと腰を下ろす。
    「ふうにぃ、それは?」
    「留守を一人で守り抜いた其方への褒美だ」
    「ほうび…」
     瓶を丹恒のまだ幼さを残す手の上に乗せる。丹楓が持っている時はそれほど大きく感じなかったが丹恒には僅かに大きいのか両手で包み込むように持っていた。
    「…きらきら」
     蓋を開けず瓶を光に透かして眺めている丹恒に、丹楓は僅かに口角を上げながら丹恒の持っている瓶を取り、蓋を開ける。
     華やかな香りと甘さがふわりと漂い、その中から花弁を一つ拾い上げると丹恒の口元へと運ぶ。
    「丹恒」
    「あ」
     名を呼ぶだけで口を開けた丹恒へ紫丁香花の花弁を含ませる。食感と甘さに丹恒の瞳が丸くなっていく。ゆるりと揺れた尾に苦手な味ではなかったようだと、瓶に蓋をして丹楓は丹恒へと再び手渡した。
     大事そうにそれを受け取った丹恒は口の中の花弁をまだ味わうように食みながら、瓶を光に透かして眺めていた。どうやら味よりも、見目の方に興味を奪われてしまったらしい。
    「ふうにぃ、ありがとう」
    「必ず食べるのだぞ」
    「…ん」
     壊さないようにぎゅぅっとそれを抱きしめた丹恒は部屋の光が当たる棚の上へと瓶を運び、眺めながら尾を揺らしている。
     尾の様子からも喜んでいることはわかるが、腐らせてしまう前に一枚一枚食べさせねばならぬと思いながら丹楓は砂糖菓子を眺め続けている丹恒の頭をゆるりと撫でた。

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