兄さん、遂に会えるんだな。
燦燦と陽光が降り注いだ日のこと。アスファルトとソーラーパネルの多重反射により威力の強まった光線が室内へ紫外線カットフィルムを通して緩やかに満たすドイツ邸にそれはあった。
10センチ程の丸みを帯びた三頭身のボディと大きな蒼い瞳は愛嬌を豊かに備え、乱れもない正装に光沢のある黄金を想わせるオールバックと引き結んだ口は凛々しさを体現したかのよう。常ならば身を置いている二階建ての屋敷から飛び出して、持ち主──の弟の手元で共にデスクトップを覗いていた。
そう、一般に『ねんどろいど』と呼ばれる人形が彼だ。
今にも身を乗り出さんとする彼を支える手の持ち主はその人形に瓜二つで、人形とは違って丸みのない輪郭と切れ長の瞳は理知的でポロシャツから延びる腕は隆々と膨らみよく鍛えられていることがわかる。
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