逆光体中にまだ人間達の怨嗟が纏わりついている気がする。
凍えて死ぬ程度、炎にまかれるより楽だろうに。人間は死に方にさえ注文をつける。
冷気と怨嗟がまとわりついた外套を使い魔の雪だるまに渡す。翌夜には綺麗になっているだろう。
「おとうさま!」
階段の上から、十歳前後の少女の声が響いた。
大声を出すなどはしたない。やめなさい。
などという注意はしなかった。
「おかえりなさい、おとうさま!」
「ただいま、私の愛しい仔」
転げるように階段を降り脚へと抱きついてきた癖毛の子供を抱き上げる。
柔らかい身体の中から聴こえるひたすら遅い鼓動。
それでも聞こえてくる小さな心臓の音に氷笑卿は微かに微笑んだ。
※
子供──クラージィには過去も記憶もない。
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