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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/Ⅱラスト前日/不器用なキス

    ユミルの里、その渓谷道の奥に顕現していた氷霊窟で用事を済ませたクロウは、貴族連合の本拠地へと帰ろうとしていた。
    「ク、ロウ……なのか」
     雪の踏み締める音で双刃剣を構える。振り返ると今はユミルに居るはずのないリィンが呆然とした顔で立っていた。
    「来てたのか」
     構えていた双刃剣を背に戻す。リィンもまた鞘から引き抜いた太刀を収めた。しかし、彼がクロウの元へ歩み寄ってくることはない。
     ふたりのあいだを冷たい風が吹き抜けていった。
    「あ、ああ。それで、こちらから嫌な気配がして」
    「それならアレだな。ま、俺が一足先に片付けさせてもらったが」
     背後にあった氷霊窟を指した。最深部で待ち構えていた魔煌兵は、先ほどクロウが倒したばかりだった。
     もしもリィンのほうが先にあの霊窟へたどり着いていたなら、あの魔煌兵とやり合っていたのは彼だったのかもしれなかった。
     今はもう、過ぎた話だ。
    「そういうわけだ。じゃあな」
     戸惑い瞳を揺らす彼に背を向け、オルディーネと向き合う。
     騎乗しようとした途端、肩を掴まれよろめいた。胸ぐらを掴まれ、崩れた体勢のままリィンの唇が押し付けられる。勢い余ってぶつかった歯で唇に痛みが走った。
    「言いたいことは全部、次会ったときにぶつけてやるから覚悟してろ」
     意思の宿った紫黒がクロウを貫く。その迫力に喉が鳴った。
    「ああ。楽しみにさせてもらおうか」
     本拠地へ帰還したクロウをクロチルダが出迎えた。
    「頼まれていた件、終わらせてきたぜ。ユミルの里近く、本当に精霊窟が現れてたわ」
    「ふふ、お疲れさま。心配の種は取り除いておいたほうがいいでしょうし。――あら、どうしたのその口元。一段とかっこよくなっているじゃない」
     指摘され、もう血も止まり瘡蓋になりかけていた唇を撫でる。
     勢いだけの不器用な口付けを思い出し、緩む頬を隠した。
    「治してあげましょうか」
    「いや。このままでいい」
     術を奏でようとした彼女に断りを入れるのだった。
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