Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    さらさ

    思い付いたのを適当に。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 47

    さらさ

    ☆quiet follow

    『瞳の交換』

    Q.何日遅れましたか?
    A.三日です(大遅刻)
    バレンタインデーの続編のつもりで書いたクロリン。ホワイトデーの昼から夜にかけた二人の話。

    #クロリン
    chlorin

    「よっす、トワ。リィンいるか?」

     三月十四日、世間ではホワイトデーと呼ばれる日。バレンタインデーのお返しをする日と言われる今日は、当然のごとくクロウは先月から晴れてお付き合いを始めた恋人の所に顔を出す――つもりでいた。しかし、尋ね人はどうやら不在らしく。

    「今日は自由行動日だし買いたいものがあるからって、帝都に行ったみたいだよ。珍しいよねぇ」

    トワの言葉にクロウは同意する。何せ、自由行動日ともなれば率先して依頼を引き受けては忙しなく動く性分なのだから。だからこそ、これは珍しい。

    「今日はホワイトデーだし、クロウ君が来るのは予想してると思うけど……。先月の事、まだ気にしてるのかなぁ?」
    「ああ、あの赤飯事件な……」

    東方に伝わるという不思議な風習に倣って、勘のいい生徒の一部が赤飯を炊いた事件があった。勿論、ある程度東方由来の文化に通じている当事者がその意味を知らない筈もなく。その場で倒れてしまい大騒ぎになってしまった。分校中に広まってしまったそれは彼にとっては勿論羞恥以外何もなく。主導者が彼の教え子だった事もあり、新Ⅶ組を中心にその話題は御法度となった。ただ、そうなる前にクロウの耳には届いてしまった為に彼の知るところとなってしまった。

    「まあ、羞恥プレイ以外の何物でもねぇよな」
    「そうだよねぇ……。クロウ君、気になるなら帝都に行ってみたら?」
    「ああ、そうしてみるわ。わりぃな邪魔して。トワも程々にな」

    働き詰めになりやすいのはトワも同じ、しかも今となっては誰よりも忙しく茨の道を歩んでいるのだ。陽の当たるところへ引き上げてくれた友人の一人に、無理はして欲しくないのだと願いながら。

    「……喜んで、くれるだろうか」

     帝都、ヴァンクール通り。ジャンル問わず様々なショップが建ち並ぶそこは、当て所なく買い物をしようと出てきたリィンにとってはちょうどいい場所であった。理由はあっても目当てはなかったからだ。そしてそれは、いい方向へ転がった。偶々目に入ったアメジストのピアス、これがリィンにとっての最善解だった。今日はホワイトデー、先月に形あるものを贈ってくれた恋人に彼も同じように贈りたいと思った。それが理由だ。

    「そろそろクロウもリーヴスに来てるだろうし、俺も戻るか」

    すると、ARCUSⅡの着信音が鳴り響く。独特なそれは《Ⅶの環》を介したそれは恐らくⅦ組関係者誰かからの物。開いて繋いでみれば、そこに映ったのは先程思い描いた人物だった。

    『よっす、リィン。今どこにいる?』
    「クロウか。帝都のヴァンクール通りにいるんだが」
    『ヴァンクール通りな。適当に時間潰しててくれや、迎えに行くからよ』
    「ちょ、クロウ……!」

    言うだけ言って切られてしまったARCUSⅡは鳴らしても出ることなく。確かに今日は導力バイクがメンテナンスで使えないからリィンにしては珍しく列車で帝都まで来たのだけど。

    「時間、潰すか」

    今どこにいるかは分からなかったが、言われた通り時間を潰すことしか彼にはできなかった。

    「おっ、いたいた」

     百貨店の喫茶コーナーで、ついでだからと買った本を読みながら待っていたリィンに声を掛けたのはクロウだった。ARCUSⅡで時間を確認するものの、然程時間は経っていないらしい。精々一時間足らずといったところか。この距離で言えばちょうど近郊にいたということになる。

    「案外早かったな」
    「リーヴスに寄ったら帝都にいるってトワに聞いてな。ま、流石に広いから連絡したんだが」

    成る程それでか、とリィンは納得した。ともあれ、場所を移動しようと二人で百貨店を出て結局リーヴスに戻ることとなった。クロウは移動手段にバイクを使用している為、彼の後ろに乗せて貰う。そしてふと、リィンはあることを思い出した。

    「なんだか、学院祭の衣装を取りに行ったときを思い出すな。といってもあの時運転してたのは俺だけど」
    「ああ、お前が一人で取りに行こうとしてた奴か?ったく、ほんと俺が通り掛からなかったらどうするつもりだったんだか」

    やれやれ、と言うもののハッキリとは見えないまでも嫌そうには見えず。むしろその思い出を懐かしんでいるようにさえ見える。

    「あれもフェイクじゃなかったのか?」
    「……そうしきれなかったから俺は今ここにいるんだろ?」

    嘘だったことが嘘なんじゃないか、最早その言葉は野暮だからこそリィンは口にしない。というよりも内戦の頃には既に分かっていたことだ。

    「クロウ」
    「ん?なんだ?」

    その名を呼べるだけでも嬉しくて、特に用もないのに呼んでしまった。どうしようか、と思案するも言いたいことは恥ずかしい一つの事しかなくて。腰に回していた腕を少しだけ強めてそっと呟いた。

    「好き」

    バイクのエンジンの音と風に掻き消えたかもしれないその言葉を口にしただけで恥ずかしくなったリィンはそっとその背に顔を埋める。

    「――知ってる、随分前からな」

    心なしかいつも以上にクロウは優しい声音でそう紡ぐ。悪くない、この時間も。背から伝わるリィンの熱を、ただなにも言わずに彼は感じ取りながらハンドルを強く握った。

    「ちょっとくらい飲む時間ねぇか?」
    「本当にちょっとだぞ?クロウだってこれからの行き先もあるだろうし」

     リーヴス着いて早々の言葉に、リィンは溜め息をついた。本当は何処にも行かせたくないと言う思いは心に秘めて、いつも通りに返せばクロウは彼に詰め寄った。

    「――寂しそうな顔、してんじゃねぇか」
    「そんなことない……」

    きゅっと、革紐で通した指輪を服の上から握る。そんな顔をしないように心掛けていたリィンだったが、どうやらお見通しらしい。

    「ったく、強情な奴め。ちったあ素直に寂しいって言ってくれてもいいんだぜ?」
    「クロウは俺を甘やかし過ぎなんだ」
    「まーな、それが俺の特権だし」

    それにその特権も悪くないとクロウは思っている。誰にも甘えないからこそ許された唯一は、彼に薄暗い喜びを与えた。

    「あー、無理。このまま抱きてぇ」
    「往来でそういう事言わないでくれるか?」
    「どーせ分校の生徒にはすぐにバレるだろうよ」

    そう言いながら手を引いて入る先は《バーニーズ》で。料理やら酒やら頼んでいる途中でふと、どうして今日はクロウが尋ねてきたのだろうとリィンは不思議に思った。

    「そういえばクロウ、今日はどうしたんだ?」
    「おう、ちと面白いもんを見つけてな。手、出してみ?」
    「こう、か?」

    そっと差し出したリィンの手のひらに、透き通った薄い赤が転がり込む。独特な形状をしたそれに、彼も見覚えがあった。砂糖菓子の一種で、東方の極一部で好まれている品であるとか。

    「金平糖か。綺麗な赤だな」
    「そうだろ?ちなみにホワイトデーのお返しにも最適らしいぜ」

    食べてみ、と言われてリィンはアルコールの残る口の中へそれを放り込む。砂糖の甘味が口の中に広がるものの、中々溶けない。

    「金平糖は、口の中で溶けにくい性質なんだと。それに保存期間も長いから好意を示す菓子って言われるらしい」
    「これを、俺に?」
    「そりゃあ俺が金平糖あげる人間って一人しかいねえし?」

    好意を示す菓子。それにリィンの頬は熱くならずにはいられない。まるで先月と逆のようで。リィンはコートのポケットに入った小さな包みをクロウの前に差し出す。クロウはそれを手にとって包みをゆっくり開けば、目を見開いた。アメジストの嵌め込まれたピアス。その色が意味するところを、彼は理解してしまった。

    「おま、独占欲強いのな」
    「赤とも悩んだんだ。一時お揃いだったから。でも、俺と言えばこっちかなって。それにクロウは俺に形あるものを贈ってくれたから」
    「……ったく、この人タラシめ」

    いつも填めているピアスを一つ外して、紫のそれに手を伸ばす。銀の髪に映えるそれは、クロウが自分のものなんだと主張しているようで。きっと他の誰にも分からないだろう理由であるものの、貰った本人が意味を理解してくれているのだからそれでいいだろうと開き直る。

    「似合ってるよ。これでクロウは俺のものだって主張できるな」
    「そうかよ。あ、これ金平糖の瓶な」

    小さな小瓶に詰められた赤の星々。その色の意味を理解すると困ったようにリィンも笑った。綺麗な色であるのはどちらの色にしても嘘偽りはないのだが。

    「なんだか、クロウは俺の事好きすぎないか?」
    「死んでもズルズル引き摺ってたお前には言われたくないな。いやー、俺ってば愛されてる」
    「そうだ、俺はクロウを愛しているよ」

    何年たっても、この不意打ちに勝てる気がしない。クロウはそう思いながら盃をゆっくり傾ける。ちょっとだけと言う約束は守られず、翌日セーブしきれなかったクロウが二日酔いになっているのをリーヴスの住民たちに目撃されるのだった。

    END
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💒💒☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    さらさ

    CAN’T MAKE多分もう書かないと思われるオメガバースランロイの序章を見つけたので私のメンタル維持のためにあげておく

    バース性関係なく一緒にいたいαランディといつか来るだろう未来に諦めを抱いているβロイド


    このあとロイドくんがΩになっちゃっててんやわんやするんだろうなぁと思いつつも断念
     ずっと、思っている事がある。もしも自分がΩだったなら、この不毛な関係にも意味を持たせられたのではないかと。Ωとは第二の性にして産みの性。男女問わず妊娠し、出産する事が出来るのだ。そして対になる性、αと番関係を持つ事が出来る。俺には恋人がいる。ごく一般であるβの俺とは違う、約束された相手がいるはずのαの男だ。俺の心にどうしても惹かれたのだと言われるものの、俺には分かる。この関係にいつか終わりが来る事を。惹かれあう番に、俺が敵う筈もない。もし俺がΩだったとして、番になれるのなら。そんな叶いもしない願いを抱きながらいつか来る終わりに怯えながら今日も一日過ごすのだ。

     ずっと思っている事がある。もしも俺がβだったなら、愛している相手をこんなにも不安にさせなくていいのかと。言葉にはしてこないが、ずっと不安そうにしている事は気付いていた。恐らくそれは、俺の性に関係がある事だろう。俺が惹かれた相手はβだった。βというのは良くも悪くも普通で、実質第二の性がないようなものである。αやΩとは対極にいるような存在で、自分の意思で相手が決められる。俺達は結局フェロモンの匂いに充てられればいとも簡単に相手を変えてしまえるような最低な性だ、そんな相手と付き合っていられる精神性に最早脱帽だった。いつか運命やΩの匂いに充てられて今の恋人を捨ててしまったら。きっと俺は自分自身を殺したい程憎むだろう。仕方ないって笑うあいつの姿が目に浮かぶ。諦念を抱かせる位ならいっそ俺がβになるかあいつがΩになればいいのに。そんな叶いもしない願いを抱いて今日も一日人知れず怯えるあいつの背に歯噛みしながら過ごすのだ。
    694

    related works

    さらさ

    MOURNING遅刻大魔王によるすったもんだクロリンがバレンタインデーにくっついて分校全体に知られるまで。ポイピク練習も兼ねてる舌先の魅惑


    「え、え~!?クロウくんにチョコレートあげてないの!?」

     トワの素っ頓狂な声が、第Ⅱ分校の食堂に響き渡った。七耀歴1208年、2月。もうすぐバレンタインデーだ、食堂やら寮のキッチンを貸し切っての菓子作りに女子生徒たちが浮足立っている。去年の同時期と言えばクロスベル解放作戦当日だ、直接参加した訳ではないとは言えど親しみある教官と生徒が参加するともなればムードもそれどころではなかった。実質、今年が初めてのトールズ第Ⅱ分校バレンタインデーである。男子生徒も一部落ち着かない様子ではあるが、それも今更と言ってしまえばそれまでなのだが。ともあれ、青春では割とお約束のイベントが差し迫ったことを踏まえ、生徒たちの押しに負けて食堂にやってきたリィンなのだが。

    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

    さらさ

    MOURNING閃Ⅰでの8月の自由行動日、例のイベントで香水の匂いが移ってしまった後の話
    無自覚だった恋心を自覚してしまうクロ→(←)リン

    いつか続きは書きたい
    『ラベンダーの誘い』

     その日の夜、話題になったのはリィンがどこかの女性に迫られて香水の移り香をつけて帰ってきたという事だ。発端は委員長ちゃんだったが、それは瞬く間に第三学生寮へと広まっていった。女性陣から詰め寄られているのを遠目に、匂いはラベンダーだったと聞いたことを思い出す。この近郊で、ラベンダー。そして今日は日曜日。そのピースが揃ってしまうと嫌でもあの魔女の姿を思い出す。全く、純朴な青年に一体何をしているのやら。からかいついでにリィンに近付いてみれば、確かに思い浮かべた人物が使っている香水と同じ匂い。曰く、彼女の使う香水のラベンダーは特殊なものだそうで。俺で遊んでいるというのを嫌でも分かってしまう。

    「いやぁ、まさかリィンがそんな風に迫られちまうとはなぁ」
    「だから違うって言ってるじゃないですか」

    正直、腹が立つ。その反応さえも面白がられているのだから、余計に。そこでふと、どうして自分が腹立たしく思ったのかを考えてしまった。ただの後輩、今はクラスメイト。お人好しで他人優先、自由行動日や放課後に何もしない彼を見たことはない。危ういバランスの上で成り立ついたいけな青少年、それだ 904

    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
    3129

    recommended works

    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
    3129