好きではないけど愛してる「土方さん知ってやしたか、恋愛の賞味期限って三年らしいですぜ」
突然切り出した男は土方の記憶が正しければ二年前から恋人同士であり、一ヶ月ぶりに関係を持ったばかりの相手だ。
後始末を土方に丸投げして、素っ裸で携帯をいじっていたかと思ったらそんなことを宣った恋人を睨みつけた。土方とてムードを気にする方ではないが、あまりにもセフレに近い沖田の態度に若干恋人だと思っているのは自分だけかと心配になる。
「それがどうしたんだよ」
「あーあ、土方さんとの関係もあと一年かぁ」
幸い沖田にも恋人の自覚はあったようだ。恋人に言うにはあんまりな発言ではあったが。
二年経ったからあと一年。そんなことを軽く言うが、土方は「そんなわけないだろう」と相手にしなかった。
「なんで? 別れられないほど俺のことが好きなんですかィ?」
その言葉に土方は逆だろうと答えた。
「だってお前俺のこと好きじゃねぇじゃねぇか」
「……確かにそうですねィ」
沖田が愛してやまないのは近藤と姉だ。そしてそれは土方も同じ。沖田と土方を繋いでいるのは恋ではなくいわば同盟のようなもの。
恋愛の賞味期限が三年というのはドーパミンが出てドキドキする関係が三年ほどと言われているからだそうだ。そんなものは一年後どころか今ですら出ている気がしない。そもそも付き合い始めたですらそんなものはなかった。仮に土方だけがそう思っているのであれば問題だが、沖田も同様の気持ちだった。
「なんだ、じゃあ土方さんとはあと一年で終わんないのか」
「なにお前、そんなに俺と別れたいの!?」
ドキドキとした初々しい関係ではないが、一応恋人なのにそんなことを言われて土方はつい熱くなって返す。これ幸いと沖田は更に軽口を叩いた。
「名案があるんですが、ここは一つ一年以内に土方さんが死んでくれれば解決しやすね」
「テメェが死ね」
結局いつも通りのやりとりに落ち着いた。
ギャーギャーと言葉のやり取りを重ねていたが、やがて沖田はあくびをした。
「うわ、もうこんな時間じゃん。寝やす」
そう言って沖田はあっさりと会話を切り上げ本当に寝てしまったようだ。スースーという寝息が聞こえ、胸が規則正しく上下する。
土方は彼の頭を撫でてつい本音をこぼす。
「まあそれでも俺は愛してるけどな」
その愛は一般的な恋愛の愛ではないのかもしれない。付き合うことでドーパミンが分泌されるような関係では最初からなかった。
恋人になったときだって「付き合ってください」なんてかわいい始まり方ではなかった。お互い血に酔って、昂りを鎮めるために関係を持って、それから始まった。
それでも誰よりも近く、深く、だからこそ永遠に気持ちは変わることがないのだろう。
好きではないけど愛してる。