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    okinami_saza

    土沖とみかつるの短編小説とかアップしてます
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    みかつるハリポタパロ

    書きたいところだけ。設定爆盛り。ハリポタ知らない方には不親切。
    続きは私が読みたいです。

    ##みかつる

    みかつるハリポタパロ 世界一の魔法使いの名門校ホグワーツ。魔法使いの子供は長い学年末の休暇が終わって、実家に帰っていた生徒は明日からまたホグワーツに行く。それは魔法使いの名門、三条家も同じことで、また全寮制の生活になるため家族との団欒を過ごしている。
     夕食を最後に食べ終えた三日月が、真っ先に食べ終わってそれまで待っていた鶴丸に向かって声をかける。
    「やっと鶴丸も入学か。本来もっと早く一緒に学べたものを」
     突然の苦言に鶴丸は苦笑いしながら答える。
    「ははっ仕方がないだろう、どうしても必要な物があったんだ。学校なんて行ってる場合じゃない」
    「それがあのドラゴンたちか」
     三日月の口調は穏やかだが、目は探るように鋭い。普通の者であれば彼の視線に負けて心の内をさらけ出していたかもしれない。しかし同じ家で兄弟のように育ってきた鶴丸は怯まない。
    「……欲しかったのはそうだな。最終目的ではないがとりあえず今後は学校には行くさ。親父殿もお怒りだしなぁ」
     鶴丸は誉まれ高き三条家に連なる五条の出自でありながら、三年もホグワーツに通わず姿をくらませていた。高名な魔法使いの占いでも行方を掴むことができなかったのに、つい先日ふらりと三条家に帰ってきた。伝説の黒龍と隻眼のドラゴン二匹を連れ、戦って眷属にしてきたというものだから一族総出でひっくり返った。
     大慌てで入学手続きをして、なんとか新しい年度からホグワーツに通うことになった。学力、魔力、知識共に本来の学年でも問題ないということで、学長のはからいで特例中の特例としてスキップ入学となった。更に連れてきたドラゴンも人型を取って、二頭とも新入生としてホグワーツに通うことになった。

     汽車に乗ってホグワーツに着くと、まずは寮の組み分け儀式だ。鶴丸は一年生ではないのでひとり先に案内されて部屋に入る。中には先生の他に三日月が待っていた。
    「……なんできみがここにいるんだい?」
    「なに、寮を案内する係として呼ばれたまでよ」
     三条の魔法使いは代々決まってスリザリンに入っているし、鶴丸の両親もそうだった。そして三日月は今年度からそのスリザリンの監督生になっている。
     三日月もだが職員も全て鶴丸の寮をスリザリンだと確信しているようだ。
     組み分け帽子を被った鶴丸に、帽子が耳元で囁く。
    「君はどの寮に入っても問題無さそうだ。勇気もあるし、賢いし、基本にも忠実。でもどんな手段を使ってでも目的を達成しようとするところは――」
    「おっと、スリザリンだけはやめてくれ」
     帽子が寮を決めかけたところで鶴丸が心の中でまったをかける。帽子は心の声を理解してなぜと問いかけ、鶴丸はまた心の中で答える。
    「予想しうることだけじゃ、心が先に死んでいくからな」
     ふむ、と帽子は少しだけ考えならばと寮名を部屋にいる誰にも聞こえるよう宣言した。
    「グリフィンドール」
     その瞬間の三日月の表情を、鶴丸は生涯忘れられないと思った。決まりきっていたものが根底から覆ったような、それでいてなにかを理解したような。とにかく普段ニコニコと表情を崩さない三日月が、冷静さを失っていた。
    「なぜだ鶴丸……! なぜお前が――」
     食いかかるように尋ねてきた三日月の、その胸元を握りこぶしで軽く押して答える。
    「予想通りじゃ面白くないだろ? それに同じスリザリンじゃあきみと戦えない」
     鶴丸は左手の親指と人差し指で丸を作って球技で使う羽根の付いたボールを暗に示している。寮対抗戦の人気スポーツであるクィディッチ。三日月はスリザリン代表のシーカーだった。三日月がシーカーになってから負け知らずだということも鶴丸は知っている。
     鶴丸の言いたいことを汲み取った三日月は、大きく息を吐いて呼吸を整えた。それからいつも通りの笑顔を貼り付けて鶴丸に笑いかける。
    「……はっはっは、俺とやりあうというわけか。グリフィンドールでな?」
    「ああ、そうなるな」
     この場に新入生がいなくてよかった、とは居合わせた教員の後日談だ。二人とも笑っているのに空気は凍てつき、みじろぎすら躊躇うほどだったという。

     結局鶴丸は三日月と笑顔のまま別れ、その後新入生として大々的に組み分けられた二頭のドラゴンと合流して一緒に配属されたグリフィンドール寮の案内を受ける。二頭とも鶴丸と同じくグリフィンドールだったのだ。
     直接見たわけではないがやりとりは把握しているようで、隻眼の方のドラゴンである光忠が鶴丸の耳元でささやいた。
    「三日月さんに教えてあげればいいのに、本当のこと」
     光忠の言葉に鶴丸は一瞬傷ついた表情を浮かべた。
    「いや……三日月は気が付いてああ言ったんだ」

     五条鶴丸の出自は誰よりも特殊で、魔法使いの世界でそれを知らぬものはない。家柄も魔力も一流な五条夫妻の長男として産まれ、他の名門家の子たち同様に将来を約束されてスクスクと育つはずだったのだ。忌まわしきあの日、一家を悲劇が襲うまでは。『名前を呼んではいけないあの人』は夫妻を手にかけ、鶴丸もまたそこで命を落とすところだった。彼に襲われて生き残れた人間は誰もいない。それにも関わらず一歳だった鶴丸は攻撃を弾き、たったひとりで生き延びた。
     世界を掌握しつつあった『あの人』は、鶴丸が攻撃を返したことによって消滅してしまったと考えられている。そのため鶴丸は世界を魔の手から救ったことでも感謝されている。
     その後親戚の三条家に引き取られ、三条の兄弟たちと分け隔てなく育てられた。不幸な境遇ではあったものの、恵まれた環境のおかげで鶴丸は悲壮感もなく、良くも悪くものびのびと育ったのだ。
     そんな鶴丸が転機を迎えたのは三年前のホグワーツ入学直前のことだ。学校で使う教科書やローブを揃えて、杖を買った。初めて自分専用の杖を手にした瞬間、予知夢を見てしまったのだ。正確に言えば『予知』ですらない。現実にあったはずのことだった。
     予知夢の鶴丸は順当に入学して、スリザリン寮で三日月と共に楽しくも賑やかな学生生活を送っていた。しかし在学中に消失していたと思われた『あの人』が力を回復させ、同調しやすいスリザリンに近付いてきた。『あの人』はその過程で力を失った原因となった鶴丸に気が付き、あらゆる手を使って彼を殺したのだ。三日月はその後逆転時計で時を戻した。しかし何度やり直しても鶴丸は死んでしまう。直近で巻き戻すから失敗するのだと考え、入学よりも前まで大きく巻き戻したのが今回。つまり鶴丸が今認識している現実だ。
     三日月はたったひとりで、何度も何度も途切れることのない円環のように同じ時を繰り返していたのだ。
    「きみひとりで戦わせない」
     それが今回の鶴丸の答えであり、決意だ。学園生活を数年捨ててでも、ドラゴンを手にいれるために奔走したのは『あの人』に対抗するための力が欲しかったからだ。三日月と過ごすスリザリンでの学園生活を棄てたのも、三日月と過ごす未来のためだ。

     鶴丸は光忠と、もう一人の黒龍大倶利伽羅に向かって言う。
    「三日月は俺がスリザリンに配属されたのを過去に見てたんだ。組み分けがグリフィンドールだった時点で気がついてるさ」
     もっと言うなれば鶴丸が一年生で就学せず、ドラゴンを連れてきたところから今までの流れとは違っただろう。
    「きみたちの望みは俺が叶えてやる。だからよろしく頼むぞ」
     二頭のドラゴンをわざわざ学園まで連れてきて同じグリフィンドール寮に入って貰ったのは戦いのためだ。もちろんドラゴンたちにそんな義理はなかったが、鶴丸との対話でとある条件で動いてくれることになった。
    「信頼してるからね。……でも鶴さん少しワクワクしてないかい?」
     光忠からみた鶴丸は、これから命のやりとりを迎えるものとは思えない顔をしていた。彼は光忠の言葉にペロリと舌をだして戯けてみせた。
    「まあクィディッチでやりあってみたかったのもほんとだからな」
    「……嘘に真実混ぜると本当ぽくなるやつだね」
    「俺相手にどんな試合をするんだろうな、三日月は。絶対勝ってやる!」
     興奮する鶴丸に見かねたのか、無言を貫いていた大倶利伽羅が重い口を開く。
    「勝つにはまず、アンタが寮の代表に選ばれる必要があるが」
     もっともな指摘だったが、鶴丸はきょとんとした表情で大倶利伽羅を見つめた。
    「俺が選ばれないわけないだろう。三日月と一緒にスリザリンの代表で負けなしだったんだからな!」
     鶴丸は強く手を握りしめて言い放つ。
    「俺に勝てるのは三日月だけだし、三日月を倒すのも俺だけで充分なんだ」
     だからいらないのだ。『あの人』に敗北する未来はもう。
    「絶対に勝つぞ」
    「了解」

     ここまでがグリフィンドール寮の歴史に残る、一人と二頭のはじまりの話――。
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