嘘つき「なんだって?もう一度言ってくれ。僕のこの機嫌を伺っても尚口が開けるのであればだけどね」
アカツキワイナリーの蔵の前でディルックは静かに、しかし不機嫌であることを前面に目の前でへらへらと笑っているウェンティを睨めつけた。その視線をものともせずにウェンティは後ろに隠れてしまった子どもを引っ張り出し、再度笑顔で交渉を始める。
「だから、リサの試薬によって身も心も小さくなってしまった可哀想でかわいいガイアを預かって欲しいんだ」
ディルックの前に差し出された子どもは確かにかつて義弟として可愛がっていたガイアそのものだ。
何を考えているか分からないような今の勝気な表情はなく、不安を抱えているような面持ちでディルックを見上げている。
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