彼と彼のヒミツゴト「ブラッド!なんだあの無茶で雑な依頼書!」
晶は思わずびく、と肩を震わせた。
営業の部署が集中しているエリアの一角のスタンディングミーティング用のスペースから漏れたものらしい。
「ネロ……? の、声ですよね」
晶の疑問符は無理もない。新しい制度に対応するために導入する経理システムについての打ち合わせで共に会議室へ向かう途中だったファウストがそうだな、と晶とは対照的に至って冷静に頷いた。
「取引先から依頼があった新製品の打ち合わせだろう。……君、なんでそんな驚いた顔をしているんだ」
「あっ、すいません。ネロ、いつも緩いというか、のんびりっていうか……あまり怒っているイメージがなかったので、驚いちゃって」
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