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    cross_bluesky

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    エアスケブひとつめ。
    いただいたお題は「買い出しデートする二人」です。
    リクエストありがとうございました!

    #ブラネロ
    branello

    中央の市場は常に活気に満ちている。東西南北様々な国から商人たちが集まるのもあって、普段ならばあまり見かけることのないような食材も多いらしい。だからこそ、地元の人々から宮廷料理人まで多種多様な人々が集うという。
     ちなみにこれらは完全に受け売りだ。ブラッドリーはずっしりと重い袋を抱えたまま、急に駆け出した同行者のあとを小走りで追った。
     今日のブラッドリーに課された使命は荷物持ちだ。刑期を縮めるための奉仕活動でもなんでもない。人混みの間を縫いながら、目を離せば何処かに行ってしまう同行者を魔法も使わずに追いかけるのは正直一苦労だ。
    「色艶も重さも良い……! これ、本当にこの値段でいいのか?」
    「構わねえよ。それに目ぇつけるとは、兄ちゃんなかなかの目利きだな。なかなか入ってこねえモンだから上手く調理してやってくれよ?」
     ようやく見つけた同行者は、からからと明朗に笑う店主から何か、恐らく食材を受け取っている。ブラッドリーがため息をつきながら近づくと、青灰色の髪がなびいてこちらを振り返った。
    「ちょうどよかった、ブラッド。これまだそっちに入るか?」
    「おまえなあ……まあ入らなくはねえけどよ。せめてひと声かけてから動けよ。急に居なくなられるとびっくりすんだろ」
    「悪い悪い。ほら大所帯だしさ、出来たら良いもん安く手に入れたいだろ?」
     そう言って同行者──ネロは、ブラッドリーの持つ袋にさらに食材を詰め込んでいく。珍しく鼻歌でも歌い出しそうなほどご機嫌な様子に、ブラッドリーも溜め込んだ文句の行き場を失ってしまった。
     それからも何軒か同じように連れ回され、ようやく魔法舎への帰路につく頃にはブラッドリーはすっかり疲れてしまっていた。
     市場の外れのベンチで座り込み、「すぐに戻る」と言い残して姿を消したネロを待つ。袋の中身に手をつけようとするも、生で食べられるようなものはそう無かった。食材は調理されるから美味くなるのだ。
     頼まれ事など基本的に受け入れない。自分に利のあることならともかく、他人のために動くなんてのはブラッドリーのスタンスに反するのだ。それでもこんな風に荷物持ちを受け入れたのは、半分は気まぐれ、もう半分は他でもないネロからの頼みだったからだ。
     足音とともに視界がふっと暗くなる。顔を上げると、戻ってきたネロがこちらを覗き込んでいた。蜜色の瞳がぱちぱちと数回瞬いて、ふっと柔く緩められる。
     スパイスの匂いがする。そう思った時には、既に口元に何かが突っ込まれた後だった。じゅわ、と口の中で弾ける肉汁と、少し塩を効かせた味付け。ネロの作るものとは違うが、フライドチキンだ。手が汚れないようにか、ご丁寧に油を弾く素材の持ち手がついている。
    「そこの屋台で売ってたからさ。美味いか?」
    「んむ、美味え」
    「そりゃ良かった」
     ネロはそう言って隣に腰掛けると、ぐっと伸びをした。ひとつひとつの仕草から普段よりも浮ついた様子が伝わってくる。
    「機嫌良いな。そんなに良いもん買えたのか?」
    「ん? そんな風に見えるか?」
    「見える見える」
     ブラッドリーが頷くと、ネロは少しだけ考えるように小首を傾げたが、すぐにニッと口端を上げてみせる。
    「確かに気分は良いかもな。貴重な卵は手に入ったし、肉も安く買えたし……食い意地はった魔法使いが飯に目もくれずに必死に着いてきたのも面白かった」
    「……は」
     確かに市場には食材以外に出来合いの料理も沢山売られていた。いつものブラッドリーならば、腹が減ったと喚いて買わせるなり、屋台からこっそり奪って食うなりしていたかもしれない。
     しかし、今日は完全にすぐに居なくなる片割れを探すのに必死になっていた。ネロは買い出し中にたまに居なくなると聞いていたから気にしなかったが、よく考えると、一度の買い出しの間にそう何度も行方をくらませることがあるだろうか。
    「おいネロ、てめえまさかわざとか?」
    「ん〜? ……はは」
    「しらばっくれてんじゃねえぞ! ったく……」
     最初から手のひらで踊らされていたなど冗談じゃない。冗談じゃないが、追及する手を強める気にならないのは何故なのか。
     目前の男も恐らく同じだ。周りの目を気にする必要のない二人だけの外出に、多分、ちょっと浮かれているんだろう。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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