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    蒼月ルートのクロロレです。

    家出息子たちの帰還.7───ダスカーやパルミラの巫者は患者の主体的な経験としての苦しみを癒す。フォドラの回復魔法や医術のように客体的な疾患を治療するわけではない。だから霊的な理由で体調不良に陥る、と信じるものたちも骨折や脱臼の際には骨接ぎを利用するし、発熱の際はまず、薬師に薬草を煎じてもらう。(中略)おそらく病という単語の意味がフォドラとは違うのだ。彼らの苦しみは他者に認められて初めて認識される───

     フレンが行方不明になった。学生も彼女の行方を探すようとのお達しが出ていて、シルヴァンはひどく居心地が悪い。自分がマイクランに殺されかけた時もこんな騒ぎだったのかもしれない、と思うと感情が昂る。───お前を山に還せば母上が喜ぶ───
     ゴーティエ家には一時停戦の証としてスレン族の若者が預けられることがあった。異教徒である彼にフォドラの内情を知らしめ、その上で向こうに戻せば何かの役に立つかもしれない。同じことはこちらでも起き、両者の常識が滲んでいった。
     マイクランも悲しみと怒りを撒き散らすきっかけが欲しかっただけで本気で信じていなかっただろう。父はなんと愚かで無意味なことを、と言って兄を叱りつけていた。だが、本当に腹違いの弟を山に捧げれば前妻や生まれてくるはずだった子供が必ず蘇るとしたらどうだろうか。それでもゴーティエの紋章を選ぶのか、前妻を選ぶのか。
    「シルヴァン、手が止まっている」
     課題協力を繰り返した結果、担任教師であるベレトに誘われて転籍してきたローレンツが眉間に皺を寄せている。大柄な男二人がしゃがんで草むしりをしているさまは妙に滑稽だった。
    「なあ、フレンの件についてどう思う?」
     ローレンツとフェルディナントはどの名家にとっても理想の第一子だ。健康な男で紋章をその身に宿している。
    「情熱に突き動かされ、彼女に手を差し出す者が存在していて欲しい」
     シルヴァンは思わず瞬きをした。ローレンツもそう言う存在を欲しているのだろうか。自分なら絶対にその手を取らないし、それが自分の闇だ。
    「意外だな。妹や弟が駆け落ちしたらどうするんだ?」
    「僕に言わないはずがないだろう」
     ローレンツはしゃがみ込んで雑草を抜いているはずなのに何故か自慢げな顔をしている。
    「親に告げ口でもするのか?」
    「連絡だけは絶やさぬように説得する。フレンさんが言わなかったのならそう言うこと、なのだろう」
     彼の弟妹がその身に紋章を宿しているかどうかシルヴァンは知らない。だが、彼ならマイクランと同じ立場になっても自分を憎まないのではないかと思った。


     いつ自領に戻るように、と言われても不思議ではない。平然としているように見えて、内心でローレンツは頭を抱えていた。イエリッツァが聖墓を荒らした輩の仲間だったという。聖墓やフレンを結びつける何某かがあるのだがローレンツにはその線が上手く引けない。それに目隠しをされた状態で最適解に辿り着け、と言われているようで何だか癪に触った。
     ただ、ディミトリも言うように彼女が無事に発見されてよかった、と思う。ローレンツを青獅子の学級に誘ったベレトは基本無表情だが、あの時は珍しく嬉しそうな顔をしていた。フレンの件で延期になったものの食堂で歓迎会まで開いてくれている。質実剛健なファーガスのものたちらしく、あり物で済ませているのが微笑ましい。
    「クロードは寂しくなるね」
    「いや、アネットさん。あいつと僕は死ぬまで縁が切れない。だから学生時代のほんの一瞬くらいは構わないかと思ったのだ」
     ローレンツは将来、家督を継ぐことになる。リーガン家とグロスタール家が円卓会議に参加する五大諸侯の一員である限り、クロードとは生涯を共にすることになるだろう。
    「そうだね、寮の部屋も移らないし!それにしてもローレンツとガルグ=マクで再会するとは思わなかったな、私」
    「きっと女神様のお導きね〜」
     咄嗟に笑顔は作ったが信心深いメルセデスの言葉にローレンツは心から頷くことができない。確かに、幸運なことに、フェルディアで断たれた学問の道がガルグ=マクではまだ続いている。
     セイロス騎士団が守りを固めるガルグ=マクなら安全だと思って子女を送り出している名家の親は多い。しかしイエリッツァは聖墓を荒らした輩の仲間で、そんな男が教師として入り込んでいた。先日救出されたモニカの件も帰路のことまで責任を負えない、という理屈はわかる。だが親たちには報告や警告をすべきだ。快く送り出してくれた父の耳に入っていたのだろうか。
     中央教会はひどく緩んでいる。ローレンツがベレトからの誘いに乗ったのは彼が中央教会の文化に深く染まっていなかったから、と言うことが大きい。


     ツィリルは毎朝、朝を告げる鐘が鳴り響く前に目を覚ます。寝る前に汲んだ水で顔を洗って身支度を整え、礼拝でも学生たちのようにふざけたりはしない。自分に何か瑕疵があれば引き立ててくれたレアに迷惑をかけてしまう。だが礼拝の説教は何を言っているのかよく分からないし、聖典は読めない。
     そもそも故郷の村にやってきた巫者が占いに使う骨を見せてくれるまで、ツィリルは文字というものを認識したことがなかった。巫者は霊をその身に下ろす前にその是非を問う。出た卦が悪い場合は日を改めることが多い。巫者が霊力を使って無理矢理下ろしても霊は宴会の最中だ、と言って天界に戻ってしまう。
     パルミラの天界や死後の世界には地上と変わらない生活がある。そんな故郷の霊と比べるとセイロス教の女神や聖人は真面目だ。死後の世界は礼拝の説教で取り上げられることもなく、やたらぼやけているが静謐な日々はツィリルの性分に合っている。
     掃除をしていると朝食をとりに行く学生たちとすれ違う。ツィリルは基本、毎年顔ぶれが変わる彼らに注目しないが今年は例外だ。ツィリルの知るモニカは慎ましいと気持ち悪いが両立する奇人だったが絶対に傍若無人ではなかった。今の彼女はひたすらおぞましい。
     先ほどすれ違った際もエーデルガルトに馴れ馴れしくしていて不気味だった。何かに取り憑かれているのだろうか。考えても無意味なことを考えているうちにツィリルは箒を手に立ち止まっていたらしい。背中に衝撃を感じた時には柄を手放し、よろめいて膝をついてしまった。足元には箒と籠、そしてその中身らしき布の包みが転がっている。包まれているのは麵麭と乾酪だろうか。
    「すまない、ぶつかっちまったな」
    「ごめん、クロード。今のはぼんやりしてたボクが悪い。荷物とか大丈夫?」
    「食堂できちんと包んでもらったから大丈夫だ。でも俺がここで転んだことはローレンツには内緒な」
     どうやらローレンツは珍しく臥せっていて、クロードは彼に朝食を差し入れをするつもりらしい。ツィリルが転がった布の包みと籠を拾ってクロードに渡してやると礼を言い、小走りに去っていった。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
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