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    蒼月ルートのクロロレです

    家出息子たちの帰還.19───ダスカーやスレンにおける死後の世界は地上と似通っている。死者は皆、地上と同じような生活を送る。ダスカーでは死後の暮らしに困らぬように家財や仕事道具など生活必需品の絵を描いて亡骸と共に燃やし、スレンでは亡骸と個人が使っていた食器や服と共に埋葬する。(中略)死後の世界の王が補佐役にするため優れたものほど早死にするのだという。彼らは死後の世界でも地上にいた頃と同じように活躍する───

     アリルにまつわる伝説はセイロス教の聖典には載っていない。だが人々の口を膾炙して今も伝わっている。ギルベルト、いや、ギュスタヴは罪を贖いたいと思っているようだ。《無責任な男だ!過去は消えない!》罪が帳消しにされることなどあってはならない。もし女神にそんな能力があるとしたら、エーデルガルトの罪も消せると言うことだ。《知ったことか、あの女の首を、城門に晒せ》ディミトリは己の罪が帳消しになるくらいならエーデルガルトの首と共に地獄へ行く。
     歩みを進めるたびに愛した人々の仇に近付いていけるのなら、煉獄の谷もディミトリにとってそう悪いところではない。息をする度に熱が身体に入り込んでくる。右目のように鼻の奥や喉が失われていないことが驚きだった。《そうだ、お前には首を捩じ切る腕もある!首を、あの女の首を》頭の中が、世界が亡者の声で満たされていく。
     ディミトリは彼らの中に溶けてしまいたいのにそれは許されない。だからメルセデスとギュスタヴ、いや、ギルベルトの声が耳に届いた。崖の上に殺すべき敵が潜んでいる。あの時、躊躇せず先に彼らを殺してしまえば父かグレンどちらか一人だけでも助けられたかもしれない。それが炎でも帳消しにできないディミトリの罪だ。
    「……判断も何もない。殺しに行く手間が省けただけだ」
     ローべ伯の忠実な部下グェンダルが目の前にいる。ディミトリは先ず父やグレンにエーデルガルトの首を捧げねばならず、裏切り者を罰するのはその後だと思っていた。だがその機会に恵まれたことが嬉しい。ディミトリはイングリットを狙うスナイパーに向けて手槍を構えた。〔大丈夫だ、グレン〕
     罪を焼く炎は命ごと焼くらしい。ディミトリの手槍から逃れようとしたグェンダルの兵は罪を炎に浄化されて死んだ。《熱い、痛い、苦しい、こんなところは嫌だ》黒焦げになった兵がディミトリに話しかけてくる。〔お前の将であるグェンダルはここがお気に入りのようだぞ〕だが、確かに足の裏が熱いような気がしたのでディミトリは彼の亡骸を踏みつけてロドリグの元へ向かった。


     クロードはその力の及ぶ限り、密偵を放っている。ガルグ=マクもその一つだ。自分がエーデルガルトならあそこは絶対に手放さない。どの国にも行きやすく───何よりもアビスがある。学生時代に探索しきれなかったことが未だに悔しい。
     そのガルグ=マクをセイロス騎士団が奪還した件で円卓会議は日を跨ぐことになった。エドマンド辺境伯によるとフェリクスの実家、フラルダリウス家が兵を動かしているらしい。特に信心深い印象を持たない彼がセイロス騎士団に便宜を図る理由とは何か。
     ディミトリらしき人物が辺りを彷徨いていたと言う話もある。帝国の兵士を卵の殻を割るように殺害できる人物は他に存在しない。膂力は何よりも彼の証明となる。ついに膠着していた事態が動き始めるのかもしれない。それが同盟にとって好ましいものであるよう働きかけるのみだ。
     円卓会議はその方針を決定する。そして円卓会議には参加する諸侯はまともに判断を下すため参加日には必ず休息と食事をとること、という規則がある。祖父からその話を聞いた時クロードは改めてフォドラが好きだ、と思った。理に適っている。

     クロードはデアドラの街中にいくつか、店舗に偽装した拠点を持っていて───ローレンツもいくつかの鍵を持っていた。洋燈の灯り油はもう残り少なく、室内は影が優勢になりつつある。秘め事にはちょうど良い。
    「休息のための時間では?」
     自分から襟締を緩めながらローレンツが問うてきた。彼がどんな工夫をしてここにいるのかクロードは知らない。前にしつこく聞いたら怒られたからだ。野暮な振る舞いだった、と現在は反省している。
    「年寄りたちより体力に自信があってね」
     これからすること、は灯りなしでも問題ない。だがクロードはそっと灯り油を足した。ゆらめく炎は力を取り戻し、辺りを照らしている。壁に出来た影が一枚ずつ服を脱いでいった。影ですらこちらを煽ってくるとはどう言うことだろう。クロードはそっと横たわるローレンツの上に跨った。薬屋の診察台は幅が狭いので自室の寝台のようにいかない。落っこちないように何もかも慎重にする必要があった。
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    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。
    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履 2041

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    8.背叛・下
     雷霆を振るうカトリーヌの名を聞いた者に多少なりとも英雄の遺産や紋章の知識があったならばそれがとんだ茶番だと判るだろう。だが無謬であるセイロス教会が彼女をカサンドラではなくカトリーヌと呼ぶのならそれに従うしかない。カロン家当主としても令嬢カサンドラに死なれるよりはガルグ=マクで生きていてくれた方が良いのだろう。

     ローレンツは霧深い街道をガスパール城に向けて黙々と進んでいた。前方ではクロードとベレトとカトリーヌが何やら話している。五年前、ローレンツは帝国軍が破竹の快進撃を見せた時に正直言ってファーガス神聖王国がほぼ崩壊したと思った。今の彼らの会話を耳にしてもファーガスが凋落しているという印象が深まっていく。青獅子の学級の学生たちは士官学校に入る前に初陣を済ませている者が多いのはダスカーの悲劇以降小規模な騒乱が後を立たずにいるからだ。

     だからあの時ローレンツはフェルディナントと共にミルディン大橋に立った。ファーガスは近々自壊するだろうしパルミラとの国境を守りながら強大な帝国に抗う力が同盟にはない。ならばせめて領地と領民を守りたいと思ったからだ。霧の立ちこめる行路は人生 2090