Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    111strokes111

    @111strokes111

    https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A
    何かありましたら。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 323

    111strokes111

    ☆quiet follow

    蒼月ルートのクロロレです

    家出息子たちの帰還.19───ダスカーやスレンにおける死後の世界は地上と似通っている。死者は皆、地上と同じような生活を送る。ダスカーでは死後の暮らしに困らぬように家財や仕事道具など生活必需品の絵を描いて亡骸と共に燃やし、スレンでは亡骸と個人が使っていた食器や服と共に埋葬する。(中略)死後の世界の王が補佐役にするため優れたものほど早死にするのだという。彼らは死後の世界でも地上にいた頃と同じように活躍する───

     アリルにまつわる伝説はセイロス教の聖典には載っていない。だが人々の口を膾炙して今も伝わっている。ギルベルト、いや、ギュスタヴは罪を贖いたいと思っているようだ。《無責任な男だ!過去は消えない!》罪が帳消しにされることなどあってはならない。もし女神にそんな能力があるとしたら、エーデルガルトの罪も消せると言うことだ。《知ったことか、あの女の首を、城門に晒せ》ディミトリは己の罪が帳消しになるくらいならエーデルガルトの首と共に地獄へ行く。
     歩みを進めるたびに愛した人々の仇に近付いていけるのなら、煉獄の谷もディミトリにとってそう悪いところではない。息をする度に熱が身体に入り込んでくる。右目のように鼻の奥や喉が失われていないことが驚きだった。《そうだ、お前には首を捩じ切る腕もある!首を、あの女の首を》頭の中が、世界が亡者の声で満たされていく。
     ディミトリは彼らの中に溶けてしまいたいのにそれは許されない。だからメルセデスとギュスタヴ、いや、ギルベルトの声が耳に届いた。崖の上に殺すべき敵が潜んでいる。あの時、躊躇せず先に彼らを殺してしまえば父かグレンどちらか一人だけでも助けられたかもしれない。それが炎でも帳消しにできないディミトリの罪だ。
    「……判断も何もない。殺しに行く手間が省けただけだ」
     ローべ伯の忠実な部下グェンダルが目の前にいる。ディミトリは先ず父やグレンにエーデルガルトの首を捧げねばならず、裏切り者を罰するのはその後だと思っていた。だがその機会に恵まれたことが嬉しい。ディミトリはイングリットを狙うスナイパーに向けて手槍を構えた。〔大丈夫だ、グレン〕
     罪を焼く炎は命ごと焼くらしい。ディミトリの手槍から逃れようとしたグェンダルの兵は罪を炎に浄化されて死んだ。《熱い、痛い、苦しい、こんなところは嫌だ》黒焦げになった兵がディミトリに話しかけてくる。〔お前の将であるグェンダルはここがお気に入りのようだぞ〕だが、確かに足の裏が熱いような気がしたのでディミトリは彼の亡骸を踏みつけてロドリグの元へ向かった。


     クロードはその力の及ぶ限り、密偵を放っている。ガルグ=マクもその一つだ。自分がエーデルガルトならあそこは絶対に手放さない。どの国にも行きやすく───何よりもアビスがある。学生時代に探索しきれなかったことが未だに悔しい。
     そのガルグ=マクをセイロス騎士団が奪還した件で円卓会議は日を跨ぐことになった。エドマンド辺境伯によるとフェリクスの実家、フラルダリウス家が兵を動かしているらしい。特に信心深い印象を持たない彼がセイロス騎士団に便宜を図る理由とは何か。
     ディミトリらしき人物が辺りを彷徨いていたと言う話もある。帝国の兵士を卵の殻を割るように殺害できる人物は他に存在しない。膂力は何よりも彼の証明となる。ついに膠着していた事態が動き始めるのかもしれない。それが同盟にとって好ましいものであるよう働きかけるのみだ。
     円卓会議はその方針を決定する。そして円卓会議には参加する諸侯はまともに判断を下すため参加日には必ず休息と食事をとること、という規則がある。祖父からその話を聞いた時クロードは改めてフォドラが好きだ、と思った。理に適っている。

     クロードはデアドラの街中にいくつか、店舗に偽装した拠点を持っていて───ローレンツもいくつかの鍵を持っていた。洋燈の灯り油はもう残り少なく、室内は影が優勢になりつつある。秘め事にはちょうど良い。
    「休息のための時間では?」
     自分から襟締を緩めながらローレンツが問うてきた。彼がどんな工夫をしてここにいるのかクロードは知らない。前にしつこく聞いたら怒られたからだ。野暮な振る舞いだった、と現在は反省している。
    「年寄りたちより体力に自信があってね」
     これからすること、は灯りなしでも問題ない。だがクロードはそっと灯り油を足した。ゆらめく炎は力を取り戻し、辺りを照らしている。壁に出来た影が一枚ずつ服を脱いでいった。影ですらこちらを煽ってくるとはどう言うことだろう。クロードはそっと横たわるローレンツの上に跨った。薬屋の診察台は幅が狭いので自室の寝台のようにいかない。落っこちないように何もかも慎重にする必要があった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖👏👏👏💖👏💖👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    14.誘拐・下
     ローレンツとクロードの記憶通り事態は進行した。一つ付け加えるならばクロードがセテスにちょっかいを出したことだろうか。見当違いだと分かっていることを敢えてセテスに聞いたら先方が何故か安心した、とクロードから聞いてローレンツは眉を顰めた。やはりセイロス教会は何かを隠している。五年前から問題視していたクロードが正しかった。だがそれは大乱を起こす理由になり得るのだろうか。クロードは元から英雄の遺産と白きものについて探っていたがそれに加えてエーデルガルトが檄文で言及していた教会の暗部についても調べ始めた。

    「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったがそんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」
    「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」

     エーデルガルトが見つけたと称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探 2099

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    17.惨劇・上
     南方教会を完全に無力化されてしまったことや西方教会対策やダスカーの幕引きでの手腕には疑わしいところがあったがルミール村においてまず疫学的な検査から実施されたことからもわかる通りセイロス騎士団は手練れの者たちの集まりだ。ベレトの父ジェラルドまで駆り出されている異変においてクロードやローレンツのような部外者が介入しても迷惑がられるだけだろう。

     クロードにしてもローレンツにしても記憶通りに進んでほしくない出来事は数多ある。ロナート卿の叛乱もコナン塔事件も起きない方がよかったしこの後の大乱も起きて欲しくない。だがこのルミール村の惨劇は起きてほしくなかった案件の筆頭にあげられる。他の案件の当事者には陰謀によって誘導されていたとはいえ意志があった。嵌められていたかもしれないが思惑や打算があった。だがルミール村の者たちは違う。一方的に理性や正気を奪われ実験の対象とされた。そこには稚拙な思惑や打算すら存在しない。事件を起こした側は村人など放っておけばまた増えると考えたらしいが二人にとって直接見聞していないにも関わらず最も後味が悪い事件と言える。
    2123