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    「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロードが根っこ目当てで育てているものだ。花に毒性はないのでそう告げると花束に入れたいので分けて貰えないかという。そう言えばベレトは変なところで義理堅く学生全員の誕生日に花束を贈っていた。

    「今月はシルヴァンとローレンツとエーデルガルトの誕生日がある。他の二人はともかくローレンツには何か渡すべきだ。前節世話になったのだから」

     クロードは先月ラファエルに干し肉を渡した。士官学校に進学する平民の学生は級長を務める貴族や王族の学生に誕生日を祝われることを名誉としている。レオニーやイグナーツのことは気にかけていたがローレンツのことは五年前と変わらず失念していた。しかしベレトが言うことは正しい。

     思うところがあるとクロードに対してはっきり宣言したにも関わらず初陣のイグナーツとクロードの実力を信頼しラファエルと共に前線で危険な囮役を引き受けてくれた彼には何かするべきだ。

     六月十三日当日を迎え七月二十四日までの五週間クロードはローレンツの二歳年下になった。茶会はベレトに取られてしまったし手頃な茶葉や茶菓子は他の者と被ってしまう可能性がある。背に腹はかえられぬ、という訳で皆がそろそろ寝ようかという頃クロードはデアドラのリーガン家から黙って持ち出したそれなりに高い酒を手にローレンツの部屋を訪れた。

     扉を開けたローレンツはクロードが持っている酒瓶に目をやると口の端を上げた。どうやら価値がわかっているらしい。

    「君から何か貰えるとは嬉しい誤算だ。入りたまえ」

     そしてクロードには全く期待していなかったらしい。ベレトに言われるまで不義理を極めていたのはクロード自身が誕生日にあまり思い入れがないからだ。パルミラには月に一度その月に生まれた者をまとめて祝う慣習があり誕生日を個別に祝わない。

     ローレンツの部屋は持ち主の気質がそのまま現れたような雰囲気だったが神経質さや頑なさは感じられなかった。ベレト以外からも薔薇の花束をたくさん貰っているのだが花瓶が足りなかったのか小物が入っていたはずの籠にまで活けてある。きっとその中には水を張った杯でも仕込んであるのだろう。花は萎れていなかった。

    「中々、他の奴と被らない物が思いつかなくてな」

     クロードが瓶を渡すとローレンツは慣れた手つきで栓を開けた。下手くそが開けると栓を砕いてしまう。従僕にやらせているかと思っていたがどうやらそうではないらしい。

    「いや、これは重畳だ。だがこれは本当にいい物だから一本丸ごとは気がひける。そうだな、一杯だけいただこう」

     そう言うとローレンツは棚から小さめの杯を二つ出した。琥珀色の液体が二つの杯を満たしていく。クロードはローレンツがこんな柔らかな発想をすると思っていなかった。持参した蒸留酒は甘い物にも合うのでローレンツがリシテアたちから貰った焼き菓子がどんどん減っていく。昔のクロードなら警戒して食べなかっただろう。だが自分の采配が間違っていたせいで戦死したリシテアたちが作った物を今のクロードは拒否することが出来ない。

    「近頃ずっとロナート卿の件で機嫌が悪そうに見えたから気になってたんだ」

     ロナート卿叛乱の報せを受けてからローレンツはずっと怒っていた。きっと彼は領民を巻き込んだことが許せないのだろう。そしてアッシュが処断されないことを不思議がっていたがクロードは今回の件がセイロス教会がダスカーの戦後処理に失敗したせいで起きたのだということを既に知っている。

    「皆から祝われたのだ。君までこうして一杯献じてくれたわけだし嬉しくならないわけがなかろう」

     白い肌が酒精で染まっている。ローレンツは嬉しそうに今日皆がくれた物について細々と教えてくれた。彼がこんなに情が深いと五年前から知っていたら自分は果たして敗戦処理を任せただろうか。五年前の自分は何を見逃したのだろうか。
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    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

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