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    「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    16.鷲獅子戦・下
     ローレンツがグロンダーズに立つのは二度目だ。一度目はローレンツの認識からすると五年前でベレト率いる青獅子の学級が勝利している。敗因は堪え切れずに飛び出してしまったローレンツだ。更に危険な実戦で囮をやらされた時に堪えられたのだから今日、堪えられないはずはない。

     赤狼の節と言えば秋の始まりだが日頃山の中の修道院にいるので平原に下りてくると暖かく感じた。開けた土地は豊かさを保証する。グロンダーズ平原は穀倉地帯でアドラステア帝国の食糧庫だ。畑に影響が出ない領域で模擬戦は行われる。模擬戦と言っても怪我人続出の激しいもので回復担当の学生はどの学級であれ大変な思いをするだろう。

     ベレトが持ってきた地図を見て思うところがあったのかクロードは慌ててレオニーとラファエルを伴って教室から駆け出し書庫で禁帯出のもの以外グロンダーズに関する本を全て借り上げてきた。皆に本を渡し地形描写がある物とない物に仕分けさせた。この時、即座に役に立たない本だけを返却させている。情報を独占し他の学級に無駄足を踏ませた。クロードのこういう所がローレンツは会ったこともないべレスから疎まれたのかもしれない。

     次にクロードは皆に地形について言及している部分を読み上げさせデアドラで購入したと言う美しい意匠の書字板に鉄筆で書き取っていった。学級の者たち全員で協力して戦場の地図を作ったからだろうか。皆きちんとどこに何があるか把握することができた。こんな大袈裟な芝居を打たずともグロンダーズは二度目であるクロードとローレンツの二人で記憶を擦り寄せてさっさと地図をつくってしまう方が話が早い。しかしそれだと根拠に乏しく説得力がないのだ。模擬戦前、最後に行われた軍議の際も皆の理解度が高かった。咄嗟に思いついたクロードはやはり先頭に立って皆を引っ張る力を持っている。

     弓砲台にはどうやらベルナデッタがいるらしい。彼女は独特な言動が目立つが弓の腕は立つ。金鹿の学級はまだペガサスや飛竜に騎乗する者がいないが青獅子にはイングリットがいる。先に弓砲台を潰さねばその強みを活かせないというわけでシルヴァンとイングリットが先駆けを務めていた。金鹿の学級と比較的近い場所に陣を張っていたアッシュはこちらに目もくれず弓砲台を目指している。イングリットたちが無効化した後で利用するつもりなのだ。

    「今日は誰も死なない演習だから我慢せずに皆前に出てみようか」

     いつもなら潰し合うのを待て、と言う筈のベレトが珍しく皆をけしかけた。学級毎に兵種の構成が違うので実際に戦いを挑んでみると学ぶことが多い。金鹿の学級は槍・弓・斧に偏っている。黒鷲の学級は逆に弓が得意な者がおらず全て揃っているのは青獅子の学級だけだ。

    「イングリットさんは素晴らしいな。撃ち落とされることを恐れず一番の強敵に立ち向かっている」
    「うちの学級に来てくれたらありがたいよなあ」
    「それを言うならペトラさんもだろう。僕の不甲斐なさを痛感しているが剣が得意な者が一人もいないのは問題だ」

     ローレンツはベレトに指示された通りクロードと組んでいる。だから二人で前方の動きについて講評ができる訳だ。レオニーはリシテア、ヒルダはマリアンヌ、ラファエルはイグナーツと対になって行動するように言われている。クロードが言うにはべレスも黒鷲の学級で似たようなことをしていたらしい。ベレト本人はフレンと共に行動している。

     前方では先行したイングリットたちを援護する為にドゥドゥが前進しヒューベルトがその動きを阻止せんとしていた。あそこからだな、とクロードが呟く。フェルディナントとペトラそれにドロテアが守る側は魔防が高いマリアンヌやリシテアに任せてある。即死しないように制限がかけられた武器ならば別に恐れることもない。二人とも一度は死んだ身の上だ。ローレンツはクロードの呟きを受け手綱を短く持ち直した。
     
     弓砲台をイングリットとシルヴァンに奪取される前にクロードがイングリットをローレンツがシルヴァンを撃破する予定だ。ベルナデッタは誰に向けて矢を放つか悩ましいことだろう。真っ先にやってくるイングリットを仕留めたいが彼女の回避率は凄まじい。貴重な機会を賭けに使うか自分が倒された後、弓砲台を使うつもりのクロードかアッシュに向けて矢を放つべきか。それとも直接攻撃をしてくるであろうシルヴァンかローレンツに向けて放つべきか。ベルナデッタの的となる側として的は多ければ多いほど良い。当たる確率が低くなるからだ。ローレンツはベルナデッタを警護するソシアルナイトとクロードの間に立ちはだかった。

    「援護を頼むぞクロード」

     既に矢を番えたクロードは言われずとも弓を引き絞っている。ローレンツは振り向かなかったが引き絞る音と殺傷力を低める為、鏃ではなく先端に球体の飾りがついた矢が鎧にぶつかる音を聞いた。この飾りには塗料が仕込んであり命中すると弾ける。鎧が守っていたが右の鎖骨の辺りが塗料で真緑になっていた。審査役を務めるセイロス騎士団の騎士たちが後一回当たったら下がれと叫ぶ。

     戦場で命を散らしたローレンツとクロードからしてみれば実に長閑な演習は金鹿の学級が勝利を収めた。

     その晩、クロードの提案で学年全員が参加する宴が開かれた。まだ幼気な皆と呑んで話すという望外の機会を楽しんでいたローレンツとクロードだが後ろのテーブルでジェラルドの不在を嘆くレオニーの言葉を聞いた途端に酔いが覚めていくのを自覚した。おそらくルミール村で調査をしている。ローレンツはフェルディナントとクロードはペトラと並んで向かい合うような席順で呑んでいたのだがいつぞやの仕返しなのかクロードがテーブルの下でローレンツの脛を軽く蹴った。
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    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

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    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

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