有情たちの夜.19「その後・中」 七年近く失踪していた代償は大きかった。無事、パルミラの大王である父への目通りが叶い、王宮での身分は復活したが、昔と同じく心の置き場がない。血筋の良いシャハドが大して軍功を積んでいなかったことだけが救いだが、先方もそう考えていることだろう。野垂れ死していなかったのは残念だが、華々しい戦果を上げていないのなら許容範囲のはずだ。
均衡を崩したくて大勝負に出たのに王宮内での状況は全く変わっていない。生還を喜ぶ母にせがまれてパルミラと違って熾烈な変化を遂げたフォドラの話をしたが、どうしても祖父、そしてジュディッドの死が影を落とす。不死隊をも打ち破ったエーデルガルトとベレスにどうすれば勝てたのか。苦い記憶は日々、心を蝕むが、それでも───みっともなくベレスとエーデルガルトの慈悲に縋らなかったら母をどれほど悲しませていただろうか。
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