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    「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも早く着いて休みたくない?」

     クロードは伝令のようにそれぞれの班を走って行き来したがそれも限界がある。歩兵の班の最後尾にいたヒルダに武器の班の責任者を務めていたローレンツが駆け寄って行ったのを見た時は正直助かった、と思った。新兵ほど扱いにくいものはない。

     前方でローレンツと彼に呼び出された食糧班の責任者であるリシテアが何やら話し込んでいる。その間、歩兵班は待つように言われたらしく引き離されていた資材班がじりじりと追いついてきた。

    「クロード、食糧を一食分と訓練用の剣を今ここで全員に配布してはどうだろうか。そうすればこちらの空いた荷車に資材を積める」
    「足の遅い資材班を置き去りにせずに済みます」

     ローレンツは進軍速度を均一にする為に提案したようだがクロードはこの後自分たちが盗賊団から襲撃されると知っている。

    「荷が増えた歩兵の足も鈍るかもな。よし、そうしよう」

     クロードはローレンツ達の提案を快諾したが理由が違った。この後盗賊に襲われるのだから手持ちの武器は少しでも多い方がいい。訓練用の剣は刃が潰してあるがそれでも打撃用の武器にはなる。あの時は備えがない状態で襲撃されても皆生き残っていたが彼らにしてやれることがあるならば全てしてやるのが将来、自分のせいで死ぬ彼らへの手向けだとクロードは思った。

     事態はクロードの記憶通りに進み野営地は星空の下、盗賊に襲われていた。槍と剣を使える学生が最前線に立ち魔法や弓に長けた学生が援護している。あの時は気づかなかったが盗賊達は最初から外套を身に付けたガキはどこだ、と叫んでいた。外套は級長の証だ。エーデルガルトは自分を囮にしてまでクロードやディミトリを殺したかったのだろう。クロードのせいで五年間対同盟の先端すら開けなかったのは確かだから気持ちは分からないでもない。あの時は撹乱する為に闇雲に走ったが今のクロードには目指す場所が分かっていた。

     帝国領のルミール村まで辿り着けば壊刃とあだ名されたジェラルドが率いる傭兵団がいる。こっそり抜け出し気づいたエーデルガルトと二人きりになると殺害されてしまう可能性が高いのでクロードはディミトリに気付かれるようわざと物音を立てて逃げ出した。

     一目散に修道院とは全く違う方へ走っていくクロードに気付いたディミトリとエーデルガルトが追いかけてきた。これでエーデルガルトと二人きりになることはない。盗賊達は目当ての学生がいないことに気づき皆クロード達の方へ向かってきた。空がぼんやりと白み始め村の入り口を見張っていた傭兵に助けを求める。後はジェラルドが出てくるのを待つだけだ。

     ディミトリとエーデルガルトが必死に窮状を訴えてくれたのでその間にクロードは息を整えることが出来た。

    「上手いこと仲間と分断されて多勢に無勢、金どころか命まで盗られるところでしたよ」
    「その割には随分とのん気な……。ん? その制服……」

     しかし記憶と違う現実を目の当たりにしたクロードの心臓は早鐘のように脈打ちその場にいる皆の言葉がよく聞こえない。ジェラルドの側に立っているのはベレスではなくベレトと言う名の息子だった。彼もまたエーデルガルトの手を取るならば強く警戒せねばならない。

     ジェラルドとベレトは村に攻め入る盗賊達をあっという間に倒すとその後の展開はクロードの記憶から外れることはなかった。野営地の様子を見に行ってくれた騎兵から残してきた他の学生達が無事であるとの知らせを受けディミトリが微笑む。クロードにとっても初対面であるベレトにディミトリもエーデルガルトも興味津々で二人はまとわりついて離れない。牽制半分からかい半分で彼の好みを問うてみるとパルミラ出身のクロードよりも世間知らずなベレトはベレスとは違いレスター諸侯同盟を選んだ。
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    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    14.誘拐・下
     ローレンツとクロードの記憶通り事態は進行した。一つ付け加えるならばクロードがセテスにちょっかいを出したことだろうか。見当違いだと分かっていることを敢えてセテスに聞いたら先方が何故か安心した、とクロードから聞いてローレンツは眉を顰めた。やはりセイロス教会は何かを隠している。五年前から問題視していたクロードが正しかった。だがそれは大乱を起こす理由になり得るのだろうか。クロードは元から英雄の遺産と白きものについて探っていたがそれに加えてエーデルガルトが檄文で言及していた教会の暗部についても調べ始めた。

    「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったがそんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」
    「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」

     エーデルガルトが見つけたと称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探 2099

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    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
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