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    「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確かだ。しかしフレンさんは助けを待っているだろう」
    「そうだな、ローレンツの言う通りだ。門違いな質問で揺さぶるのは一度だけにする」

     翌日の夕食後、クロードはセテスの執務室を訪れた。

    「失礼します。セテスさん、何故フレンが拐かされたのだと思いますか?貴方ではない理由は何だと思いますか?」

     彼女の兄であるセテスは大司教補佐だ。大司教レアと親しい間柄であるとはいえ補佐に過ぎず権限も財産も持っていない。セテスを意のままに操る為に誘拐したところでたかが知れている。クロードの記憶に残るあの茶番は何を隠すために演じられたのだろうか。

    「何を馬鹿な、いや、すまなかった。確かに考える価値はある。そうだな、まずフレンと違い私を誘拐しようとすれば骨を折るぞ」

     では死神騎士はセテスでも構わなかったのだろうか。

    「セテスさんを脅迫する為に拐かされた可能性もありますよね。何か連絡はありましたか?」

     クロードが見当違いなことを言うとセテスはそれまで緊張していたせいか顔が力んでいたのに一瞬どこか安心したような力の抜けた顔をした。妹は取り返したいが犯人の真の動機についてクロードに知られたくないのだろう。

    「もし犯人から連絡があればとっくに皆を呼び出している。情報の共有は大切だからな」

     やはりフレン本人に何かがあるのだ。そこまではクロードにも予想できる。だがそこから先がわからない。エーデルガルトは半年後セイロス教会へ宣戦布告する。ディミトリはエーデルガルトの動きを見てファーガスにセイロス教会と騎士団を迎え入れた。クロード違ってセイロス教を信じていたからだ。クロードは命を落としたのにまだセイロス教を信じることが出来ない。

    「何か思い当たることがあれば俺に言わなくても良いですがベレト先生には話してください」

     セテスにそう告げてクロードは部屋に戻った。愛用している書字板を開き鉄筆を蝋の上に走らせていく。フレンに限定せず一般的な人体から何を得られるのか。髪の毛は鬘の材料や火口、肉は食材、骨や皮膚は加工品の素材になる。だがそんなありふれた物は人を誘拐せずとも入手可能だ。呪術的な観点から見れば血や眼球が人気だがそんな面倒なことをする位なら直接毒を盛るか剣で斬りつけた方が早い。英雄の遺産のように戦況を一変させる何かをその身に秘めているならば話は別だがそんな物をその身に宿す存在はヒトであると言えるのだろうか。

     仮にヒトではないとしてそれはフレンが消費される理由になるのだろうか。答えの出ない問いがクロードの脳内を満たす。その詳細が分かったところでクロードの好奇心が満たされるだけで彼女がいたのがイエリッツァの部屋であった、と突き止めた理由にはならない。

     クロードは緑色の瞳で書字板を眺めた。長いこと考え込んで単語をいくつも書き散らしたがフレンは何の材料?と言う一文以外は残しておく価値がない。鉄筆の後ろについているヘラで蝋を均した。ローレンツに書字板の中身を見られて以来クロードは覚書を暗号化している。パルミラ語で文章を作りその音をフォドラの文字で記す。その際に平文と暗号文で文字を入れ替えることによってぱっと見では単語すら拾えない状態にしてある。ローレンツには全てを曝け出させたのにひどく不均衡な状態だが知らずにいることで彼は悩みがひとつ減らせるだろう。

     考え込んでいるうちに気がつけばもう夜は更けていた。エーデルガルトたちの悪意に気付かず父であるジェラルドの仇にベレスが与するとは予想出来ずにいた五年前のクロードが大喜びで修道院内を探索していた時間帯だ。きっと挙兵の準備に勤しむヒューベルト辺りからは深夜の徘徊に気付かれていたのだろう。近頃、クロードが出歩かないことを逆に不審に思われている可能性もある。クロードは部屋着の上から黒い外套を羽織った。
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    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156