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    我々が少しでも道を逸れていたらレスター連邦国の歴史は全く異なっていた筈だ。おそらくその方が良かった、と主張する者の方が多いだろう。

    クロロレワンドロワンライ第40回「くちづけ」 パルミラ軍の軍勢は近年稀に見る規模である、との報を受けクロードたちは急遽防衛の任にあたることとなった。こんなことさえなければフェルディアやアンヴァルへ出向いた青獅子や黒鷲の者たちを尻目にガルグ=マクでのんびり読書や探索をしていられたはずなのにどこの馬鹿者がフォドラに攻め込んできたのだろうか。
     物見櫓から降りてきたクロードは改めて母国パルミラの好戦的な将軍たちの顔を脳裏に思い浮かべた。しかし彼らにはあれだけの兵を集める権限がないのだ。嫌な予感がする。

    「クロードくん、どうだった?」
    「ホルストさんが言う通りとんでもない、の一言だ」
    「君の我儘で上ったのだ。判明したことを具体的に言いたまえ」

     フォドラの首飾りと呼ばれる難攻不落の要塞はヒルダ曰く名字と両親と髪と瞳の色以外共通点がない兄のホルストが守将を務めている。そして到着した時の挨拶から察するにどうやらホルストとローレンツ親子は面識があるらしい。きっとヒルダとローレンツも入学以前から顔見知りなのだ。クロードにはこのような蓄積された人間関係というものがパルミラでもフォドラでも構築出来ていない。他の王子たちは母親の実家をあてにできるがフォドラとパルミラの間に国交がないのでリーガン家はゴドフロアが死ぬまでクロードのことを黙殺してきた。そしてフォドラには数年前に来たばかりとくれば士官学校で地道に交友関係を広げていくしかない。学生という身分は祖父オズワルドからの贈り物だ。

     ヒルダは可憐で怠惰な貴族のお嬢様だが最前線の子供でもある。首飾りに到着し緊張する他の者とは逆に寛いでいていた。通りかかる熟練兵たちと気さくにやりとりをしている姿を見れば分かる。試しにクロードが物見櫓に上れないか聞いてみると彼女は快諾しその辺を歩いている兵ではなくわざわざ兄のホルストから許可を取り付けてくれた。彼が久しぶりに会えた妹のささやかな願いを叶えてくれたのでヒルダは大袈裟に礼を言いながら兄に抱きついて頬に口付けまでしている。皆がヒルダとホルストを囲み囃し立てていた。
     腹違いの姉妹たちよりヒルダの方がクロードを弟のように扱ってくれる。姉妹とは本来こんな存在なのだとクロードに教えてくれたのは彼女だ。可愛くて誇らしくて幸せを願わずにいられない。きっとホルストも同じ気持ちなのだろう。クロードはそこにつけ込んだわけだが。

    「ローレンツ、いつもと雰囲気が違うな」
    「む、仕方あるまい。最前線だぞ。緊張くらいするさ」

     喧騒に混ざらず少し離れたところから仲睦まじい兄妹を見つめるローレンツの視線は慈しみに溢れていた。いつものような厳しく査定する視線ではないことがクロードには興味深い。

    「いや、やっぱり実の兄がそばにいると品定め出来ないんだな、と思っただけだよ」
    「失礼な!僕はいつも真剣にお相手と向き合っている!ホルスト卿のことが少々羨ましかっただけだ。僕にも弟妹がいるから……」

     ローレンツは今クロードの目の前に立っているが紫の瞳はクロードではなく故郷に残してきた弟妹を見つめている。異母兄弟に虐められながら育ったクロードには良い兄というものが分からないがきっとローレンツは良い兄なのだろう。

    「そりゃ本当に失礼したな。俺からの詫びだ。受け取れ、兄上」

     クロードは誰にも見られないようにつま先立ちになってローレンツの白い顎に指を添え頬にほんの一瞬唇を押し付けた。彼の唇に指で触れたことはあるがこれは初めてだ。白い頬は思っていたより柔らかくて彼が嗜みでつけている香水と緊張してかいた汗の混ざった匂いがクロードの鼻腔を甘く刺激する。

    「なっ……!何をするんだ!」

     騒ぎを起こしたくないのか小声でローレンツが言い返してきた。

    「寂しそうにしてたからな」
    「妹には絶対近寄らないでくれたまえ」

     クロードは別にローレンツの義弟になりたいわけではない。では彼の何になりたいのだろう。
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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156