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    「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるならばクロードは円卓会議の為デアドラへ戻らねばならない。

     円卓会議でも祖父亡き後や帝国軍の侵攻絡みで何かひとつでも手を打っておく必要があった。クロードの母国パルミラでは王子の一人が潜入中と言うこともありフォドラへの大規模な侵攻は一時中断させている。東部に偏った同盟の戦力を西部に移したいが円卓会議に出席する諸侯からしてみれば狂気の沙汰だろう。

    「もしコナン塔行きが俺のせいで回ってこないならシルヴァンから詳細を聞き出すしかない」
    「無理だ。ああ見えて君と同じく口は固い」

     クロードと同じく、と言うことはシルヴァンもどうでもいいことを大量に話して煙にまく方、ということだ。ローレンツは話しながらも作業の手を止めなかった。濡らして絞った布でそっと馬の目脂をとってやると気持ちが良かったのか彼の真っ白な顔に馬が鼻をこすりつけてくる。暖かく柔らかな感触がくすぐったいのか口の端が上がり久しぶりに年相応な顔をしてローレンツが笑っていた。

    「こらこら、気持ちはありがたいがやめたまえ」

     次に馬は彼の首に鼻をこすりつけた。クロードはその立襟に守られた首が顔より更に白いことを知っている。

    「急いで戻るしかないってことか」
    「君が直接見聞きしたいならば、な。僕たちは天帝の剣の添え物に過ぎない」

     カトリーヌを含むセイロス騎士団の精鋭たちは西方教会を討伐する為に出陣していた。英雄の遺産である破裂の槍に対抗できるのはベレトの持つ天帝の剣だけだろう。

    「ローレンツはテュルソスの杖に触ったことはあるか?俺はフェイルノートをまだきちんと見せてもらったことがない」
    「検査でグロスタールの小紋章を宿していると分かった時に一度触ったことはある」

     クロードがそれっきりか、と言うとローレンツは無言で頷いた。破裂の槍を持つシルヴァン、天帝の剣を持つベレトが攻め込んできた時にテュルソスの杖が手元になかったのならばローレンツに勝ち目はなかっただろう。クロードの方がフライクーゲルを振るうヒルダが共にいてくれた分だけ彼と比べれば有利だった筈だが天帝の剣を手にしたベレスの強さはずば抜けていた。自分の失態のせいで信じてくれた人々を死なせたことは今でも悔やんでも悔やみきれない。

     エーデルガルトとクロードには特に因縁もなく一方的に彼女から殴りかかられたに等しいがそれでも彼女は自分を下に見ることなく全力で敬意を持ってクロードを倒しにきた。その点だけは高く評価したい。

    「クロード、まだ蹄の手入れが残っている」

     喋るのを止めてしまったクロードが何を考えていたのか察したローレンツが雰囲気を変える為に発破をかけた。手を動かせば多少は気が紛れる。飛竜の第二の心臓が翼ならば馬の第二の心臓は蹄だ。馬体の横に立ち馬の前脚を曲げて持ち上げてやる。学生たちの訓練に付き合うよく慣れた馬なだけあって協力的だ。鉄爪と呼ばれる専用の道具で蹄に溜まった藁や糞を掻き出してから刷毛で綺麗にしてやるとこそばゆいのか馬が一際大きく息を吐く。クロードは馬より遥かに頑丈な飛竜の世話には慣れているのでたまに馬の世話をすると傷つけてしまいそうで怖い。

    「どこまで力を入れていいのか分からないんだよな……」
    「変な遠慮をして取り除いてやらない方が可哀想だろう。それとクロード、脚を離す時に気をつけたまえ」

     クロードの足の甲の上に蹄が落ちる音と彼の呻き声がほぼ同時にローレンツの鼓膜を刺激した。足の甲は人間の急所の一つだ。大声で叫んでのたうち回ってもおかしくはないがクロードは馬を驚かせない為なんとか低く呻くのみで堪えている。

    「いってぇ……あぁ〜!もう……!」
    「僕は忠告したぞ」
     
     馬体越しにローレンツの声した。確かに彼の言う通り馬の世話をする際は踏まれないように蹴られないように気をつけねばならない。制服が汚れるのも構わず床に座り込んだクロードにローレンツが近寄ってきてライブをかけてくれた。もうクロードがローレンツを怪しむことはない。
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    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    8.背叛・下
     雷霆を振るうカトリーヌの名を聞いた者に多少なりとも英雄の遺産や紋章の知識があったならばそれがとんだ茶番だと判るだろう。だが無謬であるセイロス教会が彼女をカサンドラではなくカトリーヌと呼ぶのならそれに従うしかない。カロン家当主としても令嬢カサンドラに死なれるよりはガルグ=マクで生きていてくれた方が良いのだろう。

     ローレンツは霧深い街道をガスパール城に向けて黙々と進んでいた。前方ではクロードとベレトとカトリーヌが何やら話している。五年前、ローレンツは帝国軍が破竹の快進撃を見せた時に正直言ってファーガス神聖王国がほぼ崩壊したと思った。今の彼らの会話を耳にしてもファーガスが凋落しているという印象が深まっていく。青獅子の学級の学生たちは士官学校に入る前に初陣を済ませている者が多いのはダスカーの悲劇以降小規模な騒乱が後を立たずにいるからだ。

     だからあの時ローレンツはフェルディナントと共にミルディン大橋に立った。ファーガスは近々自壊するだろうしパルミラとの国境を守りながら強大な帝国に抗う力が同盟にはない。ならばせめて領地と領民を守りたいと思ったからだ。霧の立ちこめる行路は人生 2090