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    クロロレウェブオンリー2022秋当日企画

    今夜、お泊まり 三つ編みが解けたクロードから大学進学を機に同棲したい、と提案された時ローレンツは服を着ていなかった。大切な話というのは普通服を身につけている時にするのではないだろうか。寝物語のようで本気さが感じられなかったが悪ふざけの可能性をクロードがきちんと否定したのでローレンツは服装を整えながら黙って頷いた。
     進学する大学は同じ街にあるが二人は別の大学に通う。高校時代は長期休暇以外昼を共に過ごせたがこれからはそうはいかない。そのことを寂しいと感じていたのが自分だけではない、と分かってあんなに嬉しかったはずなのにローレンツはどうしても一人暮らしをしたい、と言うところまでしか両親に言えなかった。両親は進学する息子には学生寮に入ってもらいたかったらしい。他人と共に過ごすことで集団生活を学べるし人脈も広まる。賄いつきで洗濯も頼めるので家事に煩わされることもない。
     両親からはそう提案されたが家事ができるようになりたい、自立したい、とローレンツが主張すると特に母が喜んで味方をしてくれた。高校時代の恋人と生涯添い遂げるなど滅多に有る話ではないから、と言う理由でローレンツの両親は長男であるローレンツとクロードとの交際をまともに取り合っていない。同棲のことを言い出したら最悪の場合外国へ留学させられる可能性もある。将来、もっと素晴らしい出会いがあってお互いに振ったり振られたりするのは構わなかったが親に別れさせられるのは嫌だった。
     進路が決まった者にとっては長期休暇が始まったようなものだ。皆寛いで過ごし残り少ない高校生活の思い出を作るためといって毎日出歩いている。ローレンツはその風潮を利用し進路が確定するまで我慢していた分だけクロードの家に入り浸っていた。
    「本当に申し訳ない。どうしても同棲のことを両親に話せなかった」
    「何だよそれ」
     ローレンツのせいでクロードの眉間に皺が寄ったが甘受するしかない。クロードが自力で勝ち取ったものを生まれた時から与えられて育ったローレンツは親の意向を無視できないのだ。一週間くらいはふわふわと過ごしたくて告げられなかったが本来なら嫌な話ほど早く伝えねばならない。口に出した言葉は取り消せずローレンツを苛んだが自室に招き入れた途端に聞かされたクロードの方がきっともっと辛いだろう。
    「もし言いだせばプライベート空間が極端に少ない学生寮に入ることになるかもしれない」
     それでもローレンツはクロードの前で一番嫌な予測は口に出せなかった。出せば両親がクロードに憎まれてしまう。想像しただけで心が裂けてしまいそうだった。
    「物件一緒に探そうって約束しただろ……もう良いよ帰ってくれ。頭冷やしたいから」
     こう言う時に声を荒げたり物を投げたりしないからローレンツはクロードが好きなのだが案外そうされた方が気が楽になったかもしれない。常に見つめ続けていた彼の顔が今日に限っては見ていられなかった。

     クロードは祖父と二人暮らしをしている。祖父が遊び回る元気な年寄りであるのを良いことにクロードは度々自宅へとローレンツを連れ込んでいたがいつも時間切れになってしまう。今日こそ、と毎回目論んでいるのだがお互いに経験豊富とは言えないため口や手で終わってしまう。結局、最後まではしたくないということなのだろうか。最後までしなかったらローレンツはクロードとの交際を一時の気の迷いで済ませられる。同棲できない、と告げたローレンツは悲しそうな顔をしてクロードと祖父が暮らしている家を去った。
     高校の最終学年も最終局面に入れば皆が一堂に会するということは滅多にない。空席の方が多い教室で帰り際に同じ理系コースのアネットと会えたのも久しぶりだった。推薦で早々に進学先を決めてしまったクロードと違い彼女は一般受験をしている。
    「えへへ、合格したよ!コンスタンツェとおなじとこ!」
    「おめでとう!やったな!」
    「自治寮にも入れたの!」
     アネットが合格した国内最高峰の某大学にはキャンパスのすぐ近くに自治寮がある。大学が運営している学生寮と違い全てを学生たちで賄うのが特徴だ。通学時間は五分以内だし格安だが寮生たちによる審査に通らなければ入れない。
    「アネットなら大丈夫だと思ってた」
     彼女は一緒にいると気分が良くなる稀有なキャラクターの持ち主だ。アネットが審査に落ちるなら他の誰も受からないだろう。
    「クロードは大学に上がったらどうするの?」
    「俺はきままに過ごしたいから寮生活はお断りかな」
     恋人と二人で同棲すると言えたらどれだけ良かっただろうか。アネットの喜びに水を刺すわけにいかないのでクロードは誤魔化した。彼女はきっと実りある学生生活を送るだろう。
    「そうなんだ。でも私も一人部屋だよ。ほら私夜更かしするから迷惑かけちゃうでしょ?」
    「まあそれが気楽だよな」
     自治寮は先着順で一人部屋か二人部屋を選べるらしい。確かにアネットは集中しすぎると睡眠時間などを気にせず力尽きるまで勉強や調べ物をしてしまう傾向がある。研究肌なところがクロードと気が合う所以だ。
    「そうそう、まだどうなるか分かんないけどコンスタンツェも同じ寮に入りたがってるの」
    「え、あいつ寮に入る気なのか?」
     コンスタンツェは苦学生だ。しかしクロードには彼女がまともな集団生活を送れるとは思えない。
    「もしそうなったらそこはフォローするつもりだよ」
    「あいつが作ったものは絶対に口にしたり身体に塗ったりしたらダメだぞ」
     クロードは一度それで酷い目にあっている。髪の毛が元に戻るまで相当時間がかかった。
    「あはは、それはクロードも同じでしょ!」
    「生活時間が違うと良いな」
    「でも同じ建物に住むんだから同居してるようなもんだよ!困ったことがあったら助けてあげなきゃ」
     そういうとアネットはクロードに重要なことを示唆したとは気付かないまま教室を去っていった。いつものクロードならば彼女が引き取りに来た大荷物を自転車乗り場まで持っていくくらいのことは出来る。だが今日はそれが出来ずクロードはしばらくの間、教室で考えごとをしていた。ローレンツがこのことを知ればなんと気が利かないのだと言って叱ったことだろう。

     気まずい別れの後、自分からクロードへ連絡を取る気になれずローレンツは淡々と自分の部屋を片付けたり入学前講習のテキストを読んだりしていた。あの時浮かれて即答などしなければクロードとこんな風にこじれなかっただろう。ローレンツは毎日、快楽に溺れた結果がこれだと過去の自分を叱りつけている。スマートフォンの写真アプリがピックアップして寄越してくる自分はどれもこれも幸せそうでなんだか腹が立つのだが自分の隣にいるクロードに目が吸い寄せられてしまう。時間が溶けてしまうのは分かっていたし一人暮らしをするための部屋を早く探して確保せねばならないのだがぼんやりとベッドに横たわって画面の中ではしゃぐクロードと自分の姿を眺めていた。それにしても学生同士の交際はなんと脆いものなのか、と思う。これでは両親が自分とクロードとの交際をまともに取り合わないのも納得だった。卒業式の日は馬術部の仲間たちに混ぜてもらうしかない。
     そんなことを考えていたら画面がクロードからの着信を告げた。心臓が跳ね上がり出るかどうか一瞬迷ったが結果がどうあれとにかく早く片をつけてしまいたい。その一心でローレンツは画面をタップしメッセージアプリを立ち上げた。クロードは通話する時にスピーカーモードにして電話を耳に当てない癖があるので顔はまだ見られない。作業しながら話しているのか引き出しを開け閉めする音をマイクが拾った。
    「今、話せるか?」
    「構わない。一人で部屋にいるから」
    「そうか、ひとつ聞きたいんだが……ローレンツ、もう住むとこ決まったか?」
     両親からもせっつかれているのだがあれ以来なんとなく物件探しに身が入っていない。早く探さねば選ぶ余地がなくなってしまう。
    「まだだ。早く決めねばならないのは分かっているんだが」
    「じゃあやっぱり一緒に物件探そうぜ」
    「同棲は無理だと……」
    「いや、同じフロアに住もうと思って」
    「え?」
     ローレンツはクロードが何を言っているのかよく分からなかった。彼が生活を共にしたがった理由は一体何なのか?そもそも生活を共にする、ということの定義から共有できていなかった可能性すらあった。
    「それなら同棲にはならないだろ?いくつか候補見つけたからチェックしてくれ。こっから先は言った言わないになるのが嫌だからチャットにするぞ」
     クロードはそういうと一方的に通話を終わらせてしまった。衣食住の住が絡むことなのでローレンツに付け入るようなことはしない、とでも言いたいのだろうか。次から次へと物件情報のURLが送られてくる。これまで一人で見ても全く頭に入ってこなかった物件情報がようやくローレンツの中で意味を持ってくれた。
    <コンセントが沢山ある部屋が良いんだよ>
     ガジェットマニアのクロードらしい好みだった。毎日タブレットにスマートフォンそれにスマートウォッチなどありとあらゆるものの電池残量を気にしている。
    <それよりお互いの大学に通いやすい場所にあることが大事では>
    <路面電車の圏内ならどこも大して変わらないぞ>

     しばらく世間話すらしていなかったのでURLの間に挟まれる些細なやりとりすら弾んでいるような気がした。自分のせいでここ数日フリーズしていたローレンツと違い物件情報に関しては一人で先に動いていたクロードに一日の長がある。クロードは充電しながらチャットをしているがローレンツはそうではなかったようで電池が、と一言残して既読が付かなくなった。画面の左上時刻表示が改めてかなり長い時間を費やしたのだと示している。
     クロードの祖父はクロードがラップトップPCをいじっている時は何かしら有益なことをしていると判断し何も言わない。しかしスマートフォンを長時間弄っているとその玩具を置けと言ってくる。住まわせてもらっている以上家主の意向を汲むしかない。そろそろお開きにした方が良さそうなので最後に一言だけ送って久しぶりの会話を切り上げた。
    <夜にどんな環境なのか知りたいから物件巡りツアーは泊まりがけで行こう>
     クロードはいかにもレスポンスが早いネット依存という雰囲気だが実は23時ごろから翌朝の7時ごろまでは何某かのデジタルガジェットを弄っていたとしても通知は切っている。ローレンツはスマートフォンを再起動した時にどんな顔をしてどんな返事をよこすのだろうか。きっと彼は送信後に回答は朝まで待つしかない、と思い出す。
     お互い初対面での印象は最悪だった。どこかで聞き齧った俗流の心理学では人間の脳は出会い頭僅か4秒で相手の印象を決めるらしい。クロードの脳が下した結果は覆された。
    決まりを軽視する自分に対してそれまでは注意し怒りを露わにするだけだったローレンツが平行線のような状態にたまりかねて質問してきたことだった。注意する際はいつも真っ直ぐこちらを見ているのに視線が逸れていたせいで逆に狼狽したのを覚えている。
    「僕相手に話す気にならないだけで君はなぜ自分がそんな振る舞いをするのか理由を自覚しているはずだ」
     変なところが冷静だ、まず最初にそう思った。これまでの態度から鑑みてクロードから心を開かれるわけがない、とローレンツは分かっている。それなのにどうして。
    「考えたこともなかったな」
     反射的に嘘をついて誤魔化した。ローレンツの指摘で何故狼狽したのか突き詰めてしまったら今まで通りの自分ではいられない。いつものように怒ってくれたらよかったのに。
     しかしローレンツは首を軽く横に振ってからクロードを見つめた。その視線はこれまで苛立ちしか感じなかったものと全く変わらないなのにもうこれまでと同じ受け取り方が出来ない。
    「怒りの奥には悲しみが隠れているものだ。君、子供のころ周りに上手く馴染めなくて毎日不安だったのだろう?」
     クロードは思わず口元を隠した。その通りだったからだ。
    「だから開き直って拒絶されるに相応しい振る舞いをするようになった」
     これ以上ローレンツの言葉を聞いていたら今までの自分が保てない。あんな風に他人から動揺させられたのはクロードにとって生まれて初めてのことだった。

     昼間は気付かない物件の瑕疵とは何だろうか。もっと考慮すべき要素があったがスマートフォンを再起動したローレンツは一旦そのことについて検索した。やはり騒音や防犯に関して都合の悪いことを黙っている業者も多いらしい。男性といえどもその辺りは気をつける必要がある。
     表向きの提案についてはあっさり結論が出てしまった。もう一つの提案こそが本題だ。これまでクロードにされてきた様々なことがローレンツの脳内に蘇る。ローレンツには受け入れる側であってほしいと言うのがクロードの要求だ。大学入学を控えた今はもう保護者の一筆なしにホテルに泊まることができる。最後まで至らなかったのはとにかく時間切れになってしまったからだ。
    <分かった。手分けして探そう。泊まりがけの件も承知した。僕が受験の時に使ったビジネスホテルで良いだろうか>
     両親にはまずはこの一泊で自分の不在に慣れてもらう、とでも言えば良いだろうか。言葉が濁流のようにローレンツの脳内を駆け巡ったが白い指はゆっくりと本当に必要なことだけ打った。白い指は現時点で引っ越しに向けてするべきことは山のようにある。仕分けして荷物をまとめ部屋を掃除せねばならない。そこにもう一つするべきこと、が加わった。これまでは受験勉強を理由にさけてきたことだ。
     もしかしたら卒業後も就職先によってはしばらくは住む可能性がある。一度のツアーで見つけられるのか気になったがクロードは深夜ある程度の時間になるとスマートフォンの通知を切ってしまうのだ。朝起きてローレンツからの勢いに任せたメッセージが未読99件+と言うのは避けたい。クロードは年度の始まりが異なる国からの帰国子女だ。編入する際の学力テスト次第では大事をとって一つ下の学年に振り分けられてもおかしくなかったが半期ほどカリキュラムを飛ばしてローレンツの学年に編入している。そんな形でクロード相手に僅かな年上風を吹かせることに成功したローレンツは思いの丈をシークレットモードにしたブラウザにぶつけた。検索窓には信じられないような単語が並んでいく。
     求道者のような人々の体験談が一斉に表示され中には画像付きのものもあった。本当に人体がこんな変化を遂げるのだろうか。ローレンツの身体もこんな風に変わってしまうのだろうか。情報を整理するためスマートフォンを胸元に置いたままローレンツは目を閉じた。冷静になって考えてみれば未遂続きとは言えクロードと肌を重ねる前には想像すらしなかった場所ですでに快感を得るようになっている。体験談を読み込むうちに高まっていた緊張はその気付きのおかげで一気に解け全くやってこなかった眠気に負けたローレンツはブラウザを閉じずに瞼を下ろした。
     翌朝スマートフォンのアラームが鳴り響いたのでローレンツは音の方へ長い腕を伸ばした。休み中でも事情がない限り決まった時刻に起きるよう心がけている。昨日は夜更かしをしたのでスヌーズ機能を停止しようと画面をタップした瞬間、ローレンツの目の前に昨日検索した画像と文章が現れた。刺激の強さに心臓が跳ね上がり小さな声が漏れる。他人に見られなくてよかった、と思いながらローレンツはブラウザを閉じ瞼を再び下ろした。

     それぞれ別の不動産屋に行き物件の写真を大量に撮ってからクロードたちは合流した。それぞれのベッドに寝そべってタブレットを使いながら共有した写真を見ている。ホテル近くの居酒屋で軽く飲んだ後の帰り道で雨に降られたので早々にシャワーを浴びて部屋に用意されていた室内着に二人とも身を包んでいるがそれぞれサイズが違う。ローレンツは腕が長いが肩幅も広いのでXLサイズの物をフロントから出してもらっていた。手抜きなのか何なのかよく分からないがここのナイトウェアは膝丈の長衣でズボンがない。部活によっては膝丈のズボンを履くがローレンツは馬術部にいた。競技中は常に長ズボンで隠されていた白く長い足がつま先までクロードの目の前に晒されている。
    「僕が最後に見た物件は駅に行く途中の踏切がなかなか開かなかった上に歩道橋がやたら遠かった」
    「俺が最初に見てきた物件が当たりかな」
     ローレンツも同感なのか黙って頷いたので不動産屋にメールを送った。保育園がすぐ近くにあるので朝晩送迎で騒がしく道が混むのだが車を買う予定がないので構わない。入学祝いに車を買ってもらった学生は絶対に避けるべきだがあの物件なら隣の部屋に住むことが出来る。
     これでもう画面を見る用事は終わった。このホテルはレイトチェックアウトができる。いよいよ至近距離でお互いを見る時間、というわけでクロードはローレンツが横たわっている寝台に乗っかった。タブレットとローレンツの腕の間に無理やり潜り込む。腕の長さを活かしてまだタブレットの画面を眺めているローレンツ薄いの唇に大袈裟な音を立ててキスをするとようやく意図を察したのかタブレットをサイドチェストに置きクロードの背中に腕を回してくれた。タブレット置き場になっているサイドチェストには黒い安物のポーチも置いてあってこういう時に必要となるであろうもの、が入っている。彼の腕の形に背中が温かい。室内着の裾が捲り上がり太腿同士が触れ合った。ローレンツが大きく足を開いてクロードを挟み込みふくらはぎに爪先が擦り付けられる。
    「僕からすれば君の身体は熱いのに不思議なものだな」
     白い親指が靴下の縁を探って中に入り込む。如何にも予想外、と言った口調で話しているが礼儀作法にうるさい彼が足の指で物を摘む方がクロードにとっては驚きだった。やられっぱなしなのは性に合わないのでローレンツの下着の縁に褐色の手をやる。ずり下げて形の良い尻を手のひらに収めた。無駄な肉が何もついていない小ささだからこそ手のひらに収まる。クロードはしばらく触り心地を両手で楽しんだ後に軽く広げた。
    「今日は中に入れさせてもらうから」
     女性のように濡れる器官ではない。だからローションは必須だし下準備も必要になる。
    「時間切れにならないうちに来たまえ」
     背中に回されたローレンツの腕から力が抜けた。サイドチェストにクロードが置いたポーチの中身を彼も察している。今晩は忘れられない長い長い夜になりそうだ。
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