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    そのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート

    有情たちの夜.11「幕間2_3」 フェルディナントとローレンツはガルグ=マクで出会ってすぐに意気投合した。理想の貴族の在り方を語り合った日々は未だに愛おしい。共に何かを成し遂げよう、と言われた時のこともよく覚えている。父親が失脚しても主君を恨むことはなく、彼の帝国への忠誠心は揺らがなかった。フェルディナントの理想として特に不自然なところはない。
     不本意ではあったが帝国出身の学生たちが修道院を去ったあと、ローレンツはクロードと共に彼の部屋を漁った。計画的とは思えなかったが、それでも何か手掛かりがあるかもしれない。フェルディナントの部屋は彼らしく整理整頓されていたが、あくまでも日常の延長、という印象を受けた。あの時、彼がエーデルガルトについていったのは咄嗟の判断だったのだろう。クロードと二人でそう、結論を出した。

     その日からローレンツはクロードと共に毎晩、寮の自室で地図を眺めて考えこんでいる。帝国軍が迫る今、学友たちを全て無事に帰すにはどうすべきか。そのためには何が必要か。
    「顔を盗むための絶対条件を知りたいよな」
     クロードの言葉を聞いたローレンツの眉間に皺が寄る。確かにどんな魔法を使えばあんなことが可能になるのか全く分からない。もしローレンツが顔と名前を奪われたら、自分の偽物が心地よく整えた部屋にクロードを招いたりするのだろうか。好んで集めた香り高い茶葉に毒を混ぜて振る舞う可能性もある。
    「見当もつかない」
    「でも、考えるのをやめたら人間である意味がないぜ?」
     先ほどからクロードの握る鉄筆は蝋引きの書字板に謎の模様ばかり描いていた。だが虚しさではローレンツの握る鉄筆も負けていない。同じ学級に所属する学生の名を書き出しただけだ。
    「答えの出ない問いに囚われて決めるべきことから逃げるな。そちらは保留しろ」
     帝国軍が迫る中、セイロス騎士団は籠城の準備をしている。それでも修道院から脱出する学生たちに物資が提供された。これを公平感が損なわれないように分配せねばならない。
     単純に人数で割れるならローレンツたちは迷わなかった。しかし学生たちはそれぞれ出身地や経済状態が違った。例えばガルグ=マクからかなり近いサウィン村出身のレオニーと遙か東北にあるエドマンド出身のマリアンヌでは、自宅にたどり着くまでの距離が全く違う。
     マリアンヌは平民のレオニーと違って路銀をたっぷり持っているが、身分の高さゆえに誘拐される可能性も高い。その辺りのことも含めてローレンツたちはます指数を作る必要があった。
     距離を基準にするなら移動時間で測るのか、単純な直線距離で測るのか。考え、決定せねばならないことが重大なのに外の状況が全く分からない。
    「でも気になるんだよ。なあ、本当に残酷だと思わないか?」
     クロードはトマシュと仲が良かったつもり、なのであの禁術に思い入れがあるようだ。実はローレンツにも少し心当たりがある。グロスタール家に仕えていた家臣の一人が行方不明になった。その彼が雇った傭兵団がひどい不祥事を起こしたらしく、父エルヴィンはその後始末に今も苦労している。
    「確かに信頼や名誉を搾取されるのは耐えがたい」
    「矛盾をなくすために対象を殺害しているだけなのか、殺害が顔を奪うための絶対条件なのかが気になるな」
     ローレンツは根拠もなく後者だと思い込んでいたが、クロードが言う通りかもしれない。同一人物が二人同時に現れたら面倒なことになる。
    「どちらにしても殺害されるなら、そこを追求する意味はあるのか?」
    「分かった。何にしてもまず、一人きりにならないように気をつけよう」
    「当たり障りがないな」
     不本意だったのかクロードは両手で顔を覆った。しかし奇策ばかり考えつかれてもローレンツは困っただろう。単純に実行が困難かもしれないし、クロードの豊かな発想に強く嫉妬したかもしれない。
    「いや、そんなことないだろ。心構えが違うはずだ」
     顔を上げ、そう言って照れくさそうに笑う彼が顔を盗まれたら。
    「クロード、顔を盗まれたら僕にどうして欲しい?」
     絶対に今、問わねばならない───そんな気がした。



     絶対に今、答えねばない───そんな気がした。
     ローレンツは盟主の指示を仰いでいるわけではない。この一年弱、共に過ごしたクロード個人の意志を確認し、尊重しようとしている。
     クロードは改めてローレンツを見つめた。彼は自分と同じく後は寝るばかり、という格好になっている。絹で出来た寝巻きの奥に潜む柔らかな心がクロードの言葉を、声を欲していた。いつもなら容易に作れるはずの笑顔がうまく作れない。
     武勇でも血筋でも唯一無二の存在であるディミトリやエーデルガルトは不機嫌であることが許されていたようだがクロード、いや、カリードには常に笑顔を浮かべる以外の選択肢はなかった。
     揺らぐ洋灯の灯りは真っ直ぐな紫の髪と同じ色をした美しい瞳を照らしている。ローレンツは感情表現が豊かな方で、クロードも含めた周囲の者は分かりやすい彼をこの一年弱で散々、からかってきた。そんな彼が溢れてくる感情に諦念で蓋をしている。
     ガルグ=マクで共に過ごしていなかったら、彼の顔が穏やかに見えたかもしれない。
     一方でクロードはこれまでになく、楽に息が出来ているような気がした。吸い込んだ空気が鼻からすうっと腑に落ちていく。ゆっくりと息を吐き、吐き終えた時には胸中にあるものの正体が判っていた。幼い頃から渇望していたもののうち、少なくとも一つはここにある。
    「……俺は、俺の名が……汚されないように、最善を尽くして欲しい。それが、お前にとって、どんなに辛いことであっても、だ」
     いざ、口に出してみると言葉がやたらと喉に引っかかった。クロードが顔を盗まれたら闇に蠢くものたちはレスターに禍いをもたらし、その後はパルミラへ進出するだろう。パルミラの諸国への影響力は鎖国気味なフォドラとは比べ物にならない。
     故にクロードがローレンツにして欲しいこと、は決まっていた。リーガン家とグロスタール家の不仲は有名だ。クロードの名誉を救うため、ローレンツが盗人を殺しても政争の一環として扱われ、彼が罪に問われることはないだろう。だが、そういう問題ではない。
     ローレンツは世間から、盟主の座欲しさに友人を殺した、と見做される。かと言ってこの先、闇に蠢く者たちの危険性を広く知らしめるのも考えものだった。偽物だと思ったから処した、と言う建前ができれば社会の箍が外れてしまう。皆が信頼を失えば、恐怖は更なる混乱と悲劇を呼ぶ。
    「心得た。この件、僕以外に引き受けられる者はいないだろう」
     低く静かで労るような声でローレンツは宣言した。
    「……ローレンツ、お前なら俺にどうして欲しい?」
     クロードもまた同じことをローレンツに問わねばならない。笑顔は作らず、真正面から彼の顔を見つめた。この一年弱、監視されてばかりだったから偶には逆も良いだろう。ローレンツもいつものようにクロードを真っ直ぐ見ている。
    「僕も、君と同じことを頼みたい。一族の者や家臣たちは皆、絶対に君のことを信用しないだろう。だが、それでも、だ」
     こんな悲惨な問いの答えが重なったなら、他のものだって重ねても構わないのではないだろうか。撥ね付けられたら一言二言冗談を言って、いつものように笑顔の仮面をかぶればいい。そう考えたクロードは白い手に褐色の手を重ねた。
    「分かった。絶対にお前の望みは叶えてやる」
     こまめに手入れされた白い手は心労のせいで指先が氷のように冷えている。こんな酷な話し合いをしていれば当たり前かもしれない。
    「この件について、君が本物のクロードだ、と確信が持てる今のうちに話し合えてよかった」
     そう言うとローレンツはクロードの手に白い手を重ねた。ガルグ=マクを出て離れ離れになったあとで運が悪ければ全ての言葉、全てのやり取りが奪われてしまう。
    「なあ、俺たち……他にも今、伝えなきゃならないことがあるよな」
     偽物がローレンツに嘘を囁き、彼を弄ぼうとした時に備えて判断材料を与えねばならない───クロードがそう考え、赤く染まった頬に手を添えると自然に彼の瞼は下りた。
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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156