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    「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。

    #クロロレ
    chloroethylene

    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリクスの発言を受けてローレンツは頭の中で暦をめくった。ガルグ=マクに来たばかりの時期らしい。今思えばあの時、行方不明となりその後ずっと姿を表さなかった仮の担任教師は帝国の息がかかった者だったのだろう。本当ならそこに後任としてイエリッツァが潜り込むはずだったのだ。信頼を得て油断したところでディミトリ本人は無理でもシルヴァンかフェリクスを暗殺できれば五年後の蜂起自体が不可能になる。

    「だから山小屋の娘さんとだな……」
    「こちらはまだ雪がないんだ。それならどうとでもなるのを知っているくせに白々しいなお前は」

     まだフェルディアで政変が起きる前、辛うじて体裁を保てていた頃のファーガスの若者たちは傷ついていたがそれでもまだ子犬のような幼気盛りだった。

    「初めての合同演習なのだから瑕疵がないようにしたいものだ」

     そしてそこでディミトリが彼に選ばれるのだろう。あの時はグロスタール家とグロスタール領しか救えなかったがエーデルガルトの悪意を知る今この時期からやり直せるならば今度こそあの戦争が終わるまで自分の足で立っていられるかもしれない。ローレンツは朝食をとり周囲を確かめる為にまだ言い争う二人を置いて食堂へと向かった。

    >>
     クロードは数年ぶりに前髪を編んだ。中途半端に荷解きをしたらしく混沌としていた部屋は見なかったことにして制服を身につけ扉を開ける。そこにはちょうど世間話が終わったらしいローレンツ、シルヴァン、フェリクスがいた。五年後のローレンツは対帝国の防衛戦に出陣できない。グロスタール伯とクロードの方針が合致したからだ。シルヴァンとフェリクスは即位したディミトリによく従い王国西部での戦いで武名を上げていた。だが今は三人ともそんな未来が待っているとは知らない。

    「おはよう、クロード。今日は合同演習だな」

     野盗に襲われ命からがら逃げ出した先でジェラルドとベレスに助けられたクロードは五年後ベレスに殺されるのだ。

    「そうだな、つつがなく終えたいもんだ」
    「僕も尽力しよう」

     クロードの記憶によればこの時期のローレンツはもっと食ってかかってきた印象がある。食堂に向かって歩きながら白い横顔を観察したがまだそこに悪意や苛立ちはない。新しい環境への素直な好奇心があった。母国の王宮に比べればフォドラの人々はまだ素朴で望む姿さえ見せればどうとでも操れると言う思いあがりのせいでクロードは命を失っている。

     ローレンツは言葉通り野営の準備に尽力した。背嚢の数、中身を全て確認してくれたのでクロードは安心して地図を眺めることが出来た。歴史と伝統を誇る士官学校が長年使い続けている経路と野営地だが近年では油断できない、とパルミラの密偵たちはいう。ダスカーの悲劇以降、統治能力を失いつつあるファーガスでは野盗にまで落ちぶれる者も多く治安が悪化している。三国の国境地帯でもあるガルグ=マクは当然ファーガスとも国境を接しておりそこから野盗が入り込むことは当然予想出来た。

     事前に密偵からの警告があったからクロードはあの時も万が一に備えて地図を眺めていた。今回もまた野盗の襲撃があるならば別の村に助けを求めた方が良いのかもしれないと思い改めて地図を眺めてみたがかなり詳細なはずのこの地図ですら徒歩で行けそうな村があの村しかない。丹念に探せば集落があるのだろうがその規模の集落に助けを求めたところで自分を信じてくれた同級生は命を落としてしまうだろう。

    「クロード、全員準備が整ったぞ」
    「ローレンツくんが殆どやってくれたから助かっちゃった!」

     そう言ってにこやかに笑うヒルダに真の名すら教えなかったと言うのに彼女はクロードの命を救うためにデアドラで命を落とした。皆の命を救うために自分に出来ることはなんだろうか。
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    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

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     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

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    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    13.誘拐・上

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    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

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    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
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