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    鶴田樹

    @ayanenonoca

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    鶴田樹

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    ずっと好きだとは思ってたけど作品にはしてなかったにほぶぜをついに書いてみたよ〜〜!!

    【盟約】豊前がいない。

    そう気付いた桑名江は当番表を見に行き、彼の非番を確認した。

    用事は些細なものだった。だけれども、今はそんなことよりも豊前の居場所がわからない不安の方が大きくて、本丸内をぐるりと探す。

    豊前を見なかった?と聞いてまわらなかったのは、もしかしたら豊前がいるかもしれない場所に心当たりがあったからだ。そして本丸内をあらかた探索し終えたところで、桑名江はその心当たりの場所へと向かった。

    その心当たりの場所、日本号の自室は指1本分の隙間を持たせたまま、閉め切られるでもなく閉められていた。それは開けても構わない、のしるしだ。

    そうではあるけれど、特に差し支えがなければ大きく全開にされているのがこの部屋の障子の常である。そのため、桑名江はひとつの確信を持ってその障子を開けることなく部屋の前を去った。

    おそらく、障子を開ければゆったりと昼のまどろみを楽しむ部屋の主の姿と、その大きな身体に寄り添って静かな寝息をたてている探し刀(びと)、豊前江の姿があるのだろう。

    我らがりいだあ、豊前江の恋槍である日本号は、僕たち江にとってりいだあがどんな存在であるかをよくよく承知してくれている。彼の姿が見えなくなれば、不安に思う僕たちの心情を理解してくれている。

    だから、日本号の元に豊前が羽を休めに行く時も、日本号は僕らにちゃんと配慮をしてくれる。

    障子には指1本分の隙間を開けていてくれるし、その開けても構わないのしるしに従って障子を開ければ、僕らは日本号の腕の中ですうすうと安眠している豊前の姿を確認することができる。

    日本号の大きな身体なら、豊前をすっぽり覆い隠して僕らの目に触れられないようにだってできるのに、日本号はいつだって豊前を手前側にして、僕らが安心できるように心を砕いてくれている。

    そう、日本号は器の大きい槍(ひと)なのだ。だからこそ僕ら江も、安心して豊前を任せられる。約束の夜に「今日はちっと日本号んとこに行ってくるわ」と枕を持って出ていく彼の背中を見るのは身内としてこそばゆくなってしまうけれど。でもそんな二振りだから、応援したくなる。

    あぁ、そうだ。僕は当初の用事を済ませなきゃ。

    厨に戻った桑名江は豊前と食べるつもりでいたおやつをラップで包むと、豊前と大きく名前を書いて、冷蔵庫に優しく仕舞った。
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    Hoopono41030595

    DONE初音さん(@itsuki_40)より頂いたお題:くわぶぜの背中合わせ。

    戦闘の緊張感もまったりお部屋のくつろぎ時間も、背中越しにお互いの鼓動を感じていたらいいな。
    ぺたぺたと素足で廊下を歩く。
    何時間くらい寝ていたんだろうなぁ。大きく伸びをひとつ。
    体はすっかり元気になったが、ずっと寝ていたせいで、なまっているように感じる。
    廊下は薄暗く足元を照らす常夜灯が等間隔で小さく灯っている。
    朝にはまだ少し早いようだ。しかし、真夜中というわけでもない。
    「今、何時だろ。」
    豊前はそんなことをぼんやり考えながら自室へと向かった。

    部屋の障子を静かに開くと中には豊前と同室の桑名が、読んでいた本を置いて、静かに微笑んだ。
    布団は敷かれていない。

    「おかえりー。」
    「おー、お前の方が早かったのか。ところで今何時?」
    「今は、朝の5時。僕は6時間とちょっとだったから。豊前は7時間半だったかな。」

    そっか、結構な傷だったんだな。
    でも治ってよかったね。
    お互い重傷を食らって、手入れ部屋に直行したのが昨日の夜。
    手入れ時間を確認し合い、そして無事を確認し合う。

    「どうする?布団敷く?」
    桑名の提案に豊前が首を横に振る。
    「いや、いいよ。よく寝たし。ここがいい。」
    言いながら、腰を下ろしたのは本をもって胡坐をかいた桑名の背中側。
    その背中に自分の背中をくっつける 1327