【イチ桐】ふたりの晩ごはん 日も傾きかけた時刻。春日の家。
入口のドアを開けてすぐの調理スペースで、何やら長身の男二人がひしめき合っていた。
「桐生さん、肉どんくらい使います?」
「そうだな……四分の一くらいでいいぞ」
「うっす!」
ザクザクとニラを切る桐生の隣。春日はペリペリと柔らかいラップを剥がし、垂直にした手で挽肉に縦横と切れ目を入れていく。四分の一……と呟きながら丁度四角く肉にラインが入ると、トレイを斜めにしてゴトクの上に置かれたボウルにぼてっと肉を落としていった。
その音を聞いて桐生が手を止めると、包丁を持ったまま春日に数歩寄ってボウルの中を覗き込み。ふむ……と何か言いたげに声を上げたのに、春日は挽肉と桐生の顔を交互にチラチラと見比べた。
4852