心に巣食う祖母が息を引き取りました。
微笑みながら、どこか待ち焦がれたように。
大好きな祖母は、眠りにつきました。
祖母の影響で英雄譚が好きでした。読んだ本の感想を話し合う時間が好きでした。ひと通り話終わると、祖母は決まって「この人にはこんなところもあったのよ」なんて、まるでその英雄に会ったことがあるように言います。そんなお茶目なところが好きでした。
認知症が進むにつれ、祖母は現代から神代まで、様々な英雄と旅をしたと言うようになりました。母がはいはいと話半分に聞いている横で、熱心にその話を聞いていたのを覚えています。
祖母は私と二人きりになると、必ず恋バナと言って1人の男性の話をしました。祖父ではないその男性の話を、祖母は愛おしげに、それはそれは大事そうにしました。どんな時でも強い意志を持って前を見据える目が、この時だけは右手の甲を見つめ伏し目がちになります。ぽつりぽつりと話す祖母の、時折震える長いまつ毛を眺めるのが好きでした。
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