▶お餅を焼く(2/2)(なんであんなクソ不味ィやつ思い出すんだァ)
鼻に抜けた炭の香りから、人間だったころの人魚を思い出す。揺れる黒髪が艶めかしいと思ったのはいつ頃からだっただろうか。それを知ってから、実弥は義勇を嫌うようになった。今思えば、避けていたのだろう。本能でアイツが女だということを嗅ぎ取って、それを認めたくなくて、避けていた。真正面から見れば、うっかりアイツに惚れちまいそうで、俺は避けていた。
『不死川、神崎から餅を貰った』
最終決戦後、蝶屋敷から退院してお館様に挨拶を終えた後だったか。急に冨岡が話しかけてきた。片腕になったアイツは、未だに女であることを隠していた。書生のような男の装いで、前よりはよく笑うようになっていた。
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