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    masu_en

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    masu_en

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    燐ひめで台詞お題「お好みなら這いつくばって首輪も付けるぜ」
    ちょっと改変してますが某バックナンバーの『エメラルド』よりお借りしています(曲かっこいいよ!)曲お題難しい…楽しい……ありがとうございました!

    ##燐ひめ

    死なば諸共 見つめられることも愛を受け取ることも仕事のうち。“大好き”と言われれば気持ちがいいし、“君に夢中だ”と言われれば狙い通り。
     だけどそれは、『HiMERU』が愛されるべきアイドルだからだ。
    「……ッ、は、っ、はぁっ……!」
     俺は今猛烈に逃げている。何から? HiMERUの所属する『ユニット』のリーダー、天城燐音からである。

     キスをされた。パフォーマンスで。ファンサービスで。否。
     アンコールを終え段取り通りに捌けた下手ステージ袖で、奴は『俺』にキスをした。熱を帯びたターコイズブルーの瞳を不覚にも美しいと思ってしまった。同時に恐ろしいとも。
     舞台から降り、偶像から生身の人間に戻る瞬間を、天城は狙い澄ましていた。糖衣で幾重にも覆い隠した中身を見透かすような視線に身構えた時にはもう、奪われていた。

    「ンな必死こいて逃げンなよ。俺っち傷つく」

     袖の暗がりを飛び出し、楽屋のある廊下を走り抜けた。角を曲がって階段を駆け上がる。この先は調光室だろうか。後方からゆったりと大股で歩いてくる男との距離は、なかなか開かない。
    「何のつもりだっ……俺の弱みでも握ったつもりか!?」
    「こいつは心外だなァ。好きだと思ったからキスした、『おまえ』を知りたいと思った。それだけっしょ」
     目眩がしそうだ。“好き”だ? 日常的に浴びせられる音であるにもかかわらず、こいつの放つそれは全くもって異質だ。
     『HiMERU』が愛されるのは当たり前。では俺は? 俺自身が愛されることなどはじめから想定していないのだ。受け止め方がわからない。そもそもその言葉が本物かどうかも知り得ないのに。
    「どうしたら信じてくれる?」
    「っ、」
     踊り場で手首を捕らえられた。今振り返ってはいけない気がする。
    「信じるも何も、俺は」
    「あんたが望むなら這いつくばって首輪を付けたっていい」
     それが俺の気持ちの証明になるなら。
    「……」
     怖いもの見たさとでも言うべきだろうか。俺は俯き加減のまま、髪の隙間から天城の顔を盗み見た。
     碧が、燃えていた。吃驚して咄嗟に手を振り払ってしまう。
    「──駄目です」
    「なんで?」
    「生身の俺を知れば、誰も、あなたにだって、きっと愛して貰えない」
     この男の前ではどうしてか、死ぬ気で取り繕ったものが暴かれてしまう。俺は、曝け出すことがただ恐ろしいのだ。
     無意識に後ずさった背中がとん、と壁に触れた。人気のない階段。こんな場所に誘い込んだのは他でもない自分自身。思わず舌を打った。
    「試してみねェか?」
     ふ、と口角を吊り上げて笑う天城は不安など微塵も感じていなさそうな口振りで宣う。
    「齧ってみたら毒林檎でした、なァんてオチもあるかもしれねェな。でもふたりで試すなら? 言うほど怖いもんでもねェぜ? たぶんな」
     普段の俺ならば頷かなかっただろう。けれど意外にも静かに燃える碧の温度は、俺に火をつけるのには十分だった。
     暴いた中身が毒だったのか薬だったのか、どちらにせよいずれはっきりすること。今はこいつに騙されてやるのも悪くないだろう。
     悪巧みするみたいに笑って、俺は男の手を取った。

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    masu_en

    MOURNING2022年3月発行『キヲスクアーカイブ2』のBOOST御礼ペーパーだったものです。これもHiMERU(兄)の名を要だと思って書いています。『スカウト!白虎舞』の燐音×『スカウト!ロマンチック?デイト』のHiMERUの謎パロ。すこし大人向けの表現があります。
    BOOSTしてくださった方、改めましてありがとうございました。
    【再録】セクシービューティな隣国の王子さまは俺っちのことが嫌いらしい【白虎×ロマデ】 その男は、北国出身の俺が見ても驚くほどの透き通った肌をしていた。



    「──不法入国者というのはあなたですか」
    「ええまァあんたらが話聞いてくんねェからそういうことになってますけどォ」
     大理石の床に跪かされた俺は、首だけを動かして階段の上の玉座──またそこに超然と座す男──を見上げた。
     彼のためだけに誂られた豪奢な衣装には色とりどりの宝石が散りばめられており、細かな刺繍が施された深紅のサッシュに至っては派手すぎて目がチカチカしてくるほど。しかし何よりも俺の目を奪うのは、煌びやかな装飾に包まれてもなお内側から発光するかのように存在感を放つ、彼自身の持つ美しさだった。
     唇を舐める。左右から押さえつけてくる屈強な兵士たちが睨みを利かせている。ろくに身動きが取れない。
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