未定Azul
一般社員の定時はとうに過ぎたとは言え、僕ら三人は絶賛仕事中の役員執務室で、おもむろにスマホを眺めたかと思えばそそくさと帰り支度を始めたジェイドに僕は小さくため息を吐く。
「すみませんアズール、今日はもう上がります」
「はいはい、またいつもの呼び出しですか」
「えぇ、本当に困ったものですね」
いつもの事とはいえそう言ったジェイドの表情は微塵も困ってなどおらず、むしろウキウキと表情を緩ませているのが癇に障る。例え仕事の途中だろうがこうなったジェイドには何を言っても無駄だ。こいつにとっては彼女の言葉が第一優先で、僕はこの十年でそれを嫌と言うほど見せつけられてきた。
そして浮かれジェイドが帰った後で、僕は呆れを隠しもせず深いため息を吐く。
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