クリスと二人きりの会議室。そわそわと落ち着かない視線が、時折雨彦に向けられる。そんなクリスの様子に、雨彦は最初こそ気づいていないふりをして、彼がアクションを起こすのを気長に待っていた。
だが時計を見ると、そろそろ時間切れになってしまいそうな頃合いだ。
何を切り出すつもりだったかはわからないが、それができなかったとしたら、きっとクリスは落ち込むだろう。はっきりと想像がつくその結末を、できれば避けてやりたいと考えるのは、雨彦にとっては自然なことだった。
「古論、どうかしたのかい?」
「あ、いえ、その……」
今視線に気づいたというように声をかけると、煮えきらない返答が返ってくる。
だが雨彦が投じた一石は、クリスから動かないという選択肢を消したようだ。意を決したような顔で、クリスは雨彦を見る。
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