嫉妬には向かない彼1
――……だって仕方ないことだろう?
月島がおいよりも彼を気にかけることは。彼はおいとは違って、百年前、月島の目の前で死んでいったのだから。
かたや、おいは月島とその後、何十年も共にいた。
だから仕方ない。月島がおいよりも江渡貝に甘いことは。
「今日の午後の会議ですけど。午後は江渡貝が先方との打ち合わせに出るのに私はついていくんで。先方との打ち合わせが終わり次第戻ってきます。ただ外に出るんで、鯉登さんの方の会議には間に合わないかも……」
「ああ、わかった」
月島の中では江渡貝はいまだに二十代の青年のままだ。
「あなたなら大丈夫ですよ。私の代わりに尾形か宇佐美つけてもいいですが」
「いや、資料も準備してあるし、私だけで大丈夫だ」
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