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    可塑chang

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    可塑chang

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    【壮年鯉月】少し不思議なやつ

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    「基、何だか居間が殺風景に思わんか。よう分からんが絵なと買って飾ろうと思うが、好きな柄とかないか」
    「柄って……まあ自分も芸術なんとは疎遠ですから分かりかねます。画廊など見て廻られて、何となしで良いのではないですか」
    「私とお前の家に飾るのだから、それなりのものが良い」
    「二人してそれなりも分からないと言うのに、何を選ぶことがありますか。風景画でも見繕ってみるのがいいんじゃないんですかね。それか気に入った金に困った画家から複数枚、買ったって損はないでしょう」
    「…お前以外のパトロンになる気はないぞ」
    「私はパトロンと添い遂げるつもりなとないですが」
    「ン"ン!それもそうだな!」
    「赤くなってらっしゃいますがね、私に失礼なことを言ったと自覚がないようでしたら…」
    「すすすすまん!言い過ぎた!おいの負けでよか!」
    「謝るのだけはお上手になりましたね」
    「くっ…!ええい、都合をつけて今度街にでも出るぞ!」
    「音之進さん、これがいいです」
    画廊の隅で埃を被った額縁を指差した月島が、鯉登袖を引いた。
    「何じゃ?……海の絵か」
    「大きさも申し分ないでしょう」
    「まあそうだな。おい、これを包んでくれ」
    両腕を広げてやっと抱えられるようなその額縁の中には、水縹色をした海と白烟りの空が在った。
    「懐かしい色を見ました」
    「ほう、お前もか」
    「ええ…故郷の海の色に似ていて」
    帰路の路面電車中で、月島が遠い目をして言った。その目を追うようにして、鯉登も鹿児島の海を思い出していた。
    夜中に目が覚めると、隣に月島はおらず、厠に行ったのかと微睡みの中で彼の帰りを待った。しかしいくら待とうと戻ってこずに、ただいたずらに掛け時計の秒針音ばかりが耳に入る。
    おかしい、人の気配がしない。
    鯉登は寝床から勢いよく飛び出すと、厠を見に行く。月島の姿はない。
    焦り台所を見に行こうと居間を通り過ぎようとしたその時、人影を見留め足を止めた。壁を向き、ぼうっと立つ月島の背に向け声をかける。
    「基、はじめ、何をしちょる」
    ひくりと一度震えた月島が振り返る。何とも間の抜けた表情だった。
    「音さん、これ……」
    ゆっくりと指差す彼の向こう側には、今日買ったばかりの海の絵が掛けてある。
    「呆けとるんか。今日一緒に買ったじゃ、ろ…」
    一歩二歩と近付き異変に気付く。
    壁に掛かっていたのは、濃紺ひしめく夜闇の海の絵であった。
    “ザザーン……”
    泡立つ波に、漣の声すら聞こえてくる。
    「…なんと懐かしい」
    「はじめ」
    望郷の声に視線を移すと、先程まで絵画の前に立っていた月島の姿はなぜか消え失せ、代わりにカンバスの中には燦然した満月が輝いていた。

    (おしまい)
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    可塑chang

    DOODLE【稚鯉】鯉ちゃんってさ…なんかイメージ小さい頃からお喋りさんなとこあるよね……ずーーーっと喋ってる3歳児みたいなの見たいな……足らずの舌で薩摩弁喋りながら月島の膝の上にずーーっとおんのん。可愛いな。可愛がりたいな「あんね、そいでね、ちゅいちま、きいとーか?おやっどゆうちょいました!あぱんま、よーけ、うまかとゆーちょいまいた!おあんのおおげ!おいちーゆうて!おいはね、おあん、よごれとちおもっ。そいはちがーよゆあれた」
    「そうですか、違いましたか」
    「ちあいました」
    「そうですか〜」
    「おちりのな、おちりのこっち、かゆか」
    「汗疹ですかね」
    「わあらん。ちゅいちまかいかいして」
    「血が出ますよ」
    「ち?おいちっとーよ!ちはててんなかな?ながえちょーど。こりょんだあ、でる。いた〜い!!」
    「イタイイタイですね」
    「おちりいたか」
    「えっ痛いんですか」

    ++++++++++++++

    「ちゅいちあ!ちゅいちあ!」
    「はいはい」
    「こたなとお!おったや!」
    「どうしました坊っちゃん」
    「ひゃ〜もう、おいはちかれもした!」
    「疲れましたか」
    「そうよ〜だあってとおかじゃあ!おいがんあってきあした」
    「お疲れ様です」
    「あい」
    「ここは私の部屋ですよ」
    「とおかじゃ〜!」
    「と言うか私ももう寝ようかと思ってるんですが」
    「あんさ、おいはね」
    「はい」
    「いっちょにねたらよかおもおな〜」
    「午前0時ですよ今 858

    可塑chang

    DOODLE中年鯉月(??)邸宅の近くに、それは草花を愛するご婦人が住んでいた。四季折々の色に溢れるその庭を、あの人と歩きながら見るのが好きだった。
    「基、お前はこんなにも彩り豊かな日に産まれたのだな」
    極彩色の景色を眺めながら、あの人が感慨深げに言った。快晴の四月だった。
    その日私達は、ある人に会いに行くことになっていた。駅をいくつか跨いで、東京駅に向かう。未だ慣れぬ雑踏を抜け、ようやく待ち合わせのカフェーへ辿り着いた。美味さの分からぬコーヒーなとを頼み、いかにもなヒラヒラした割烹着を着る女給から接待を受け辟易するも、待ち人の列車の到着を待った。
    ここしばらく、あの人は偉く渋ったような小難しい顔をずっとしていたものだから、私はとうとう勘当なり離縁なりを申し渡されるものだと思っていた。その待ち人だって、もしかすれば若い正妻となる人物やもと考え、とうとう来たかと静観を決めこもうとしていた。
    「なあ基」
    そう言ったあの人の声音は低く落ちていて、そら見ろと思った。言わんこっちゃない、今日がその日だと。
    こちらを呼んだあの人は、その言葉の後はまた黙りこくってしまった。階下から聞こえ上ってくる蓄音機のよくも分からぬ荘厳な音 2030

    可塑chang

    DOODLE【死ネタ】鯉月が早々別離となり数十年後、鯉ちゃんが亡くなってる壮年の話。残された家族の夕べ(鯉月の二人は一度も出てきません)盛大な父の葬儀が終わり、やっと喪があけた頃。あの頃よりもほっそりとした母と静けさの目立つ居間で、庭木を見ながらお茶を飲んでいた。父が亡くなったのは快晴の春。冬の灰色からは想像もつかないような青の目立つ空の日だった。
    小池を臨む縁側は光溢れ、空の青も葉の緑も濃く、初夏の足音がする。眩い生命の庭の片隅では、大輪の白い芍薬が顔を綻ばせている。どこぞの梢でコルリがチヨイチヨイと高く鳴き、夏が来るぞと言っているようだった。まるで父の如き騒がしさだ。
    「○○ちゃん」
    母が私を呼んだ。
    「なあに母様」
    「わたし、あの人に愛されていたのかしら」
    何を言うのだろう。あれほどまでに分かりやすい愛を向ける男など、今日日父くらいしか私は知らない。陸軍将校であり、閣下と呼ばれ、厳格で忠実なあの人が、顔を綻ばせ帰ってくるのを、十数年は見てきた。
    「……どうしてそう思うの?」
    「さあ…何でかしらね……寂しいのかしら、私」
    「父様は騒がしい人だったものね。急に静かになっちゃって、きっと耳が驚いているのよ。こんなに静かなの久しぶりだって」
    「そうね……そうだといいわね」
    浅く笑う母は綺麗だ。華奢な指先、桜貝の如き爪、白 2288

    可塑chang

    DOODLE鶴月「なぜ自分なのですか」
    この男を右腕に選んで数年しても、同じように苦悶の顔で彼は鶴みに尋ねた。何度も、何度も。その度に「お前だからだ」と言い聞かせた。しかし男は「他に最もな適任者がおります」そう言って聞かなかった。大切に育まれなかった男の自尊の心は、いつになっても小さく幼い。
    それを可哀想だとは思わない。自分で育てることだって出来るはずだ。しかし最後の一歩を踏み出せないのだろう。ある程度の地位や名声は人の心を強くする。良い方にも、悪しき方にも。しかし何を与えてもこの男のそれは育ち切らず、天を仰ぐ花弁を誇らしげに見せつけることはなかった。
    事実誰でも良かった。条件が合えば、きっとこの男でなくてもよかった。しかしある一点を除いて、彼に敵う人物は結局のところ現れなかった。どの兵卒でもなく、最終的に“利き腕”としてしっくりくるのは、月しまただ一人だった。
    そのある一点とは、結局は愛玩性だ。鶴み自身の手に余る部分が幾分かないと、愛しみ甲斐がない。手を掛けて育んだと言える部分が無いと、完成した時の達成感は得られない。鶴みは幾度も行った選定の中でそれを学んだ。愛するという事は、そういうことなのだ。
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    可塑chang

    DOODLE少し不思議な原作時間軸の鯉月と、その前日譚(数年前)「鯉登」
    「おお、○○。貴様なぜ旭川に」
    「いやなに、ちょっとした使いだ。久しいな」
    「よう俺の執務室が分かったな」
    「お前の母親に聞いたよ」
    「母だと?」
    「そんな怖い顔をするな。何と言ったか…補佐役の」
    「……月島軍曹か」
    「そうだ月島だ」
    「まったく…母親とはなんだ」
    「あの軍曹、口煩いだろう?まるで母親だ」
    「貴様はまだその様な夢現のようなことを言っているのか」
    「視えるもんは仕様が無いだろう。しかし…あれは何だ?」
    「何だとはなんだ」
    「初めて見たぜ、あんな人間。いや人間ではないのか」
    「まあ感性に乏しい岩のような面白味のない奴ではあるが、列記とした私の部下だ」
    「ふぅん……では人では無くなってしまったのかもな」
    「貴様、何を見た」
    「腹から薄らとした柔らかい管がどこかに伸びてんだ。何かと繋がったものが、すうっと出ている」
    「なにを……」
    「ありゃあ、臍の緒だ。なあ鯉登、お前の世話役、何の子を孕んでるんだ?」
    「馬鹿げたことを!男が子を成すなど有り得ん!貴様はいつだってその様な世迷いごとを」
    「いいやこれは絶対だ。胎に人成らざる物を実らせてる。なあ鯉登、お前気を付けなけりゃ… 2958

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