Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    可塑chang

    @kasokasokami
    ついったで呟いたのの保管

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    可塑chang

    ☆quiet follow

    少し不思議な原作時間軸の鯉月と、その前日譚(数年前)

    #鯉月
    Koito/Tsukishima
    #鶴月
    craneMoon

    「鯉登」
    「おお、○○。貴様なぜ旭川に」
    「いやなに、ちょっとした使いだ。久しいな」
    「よう俺の執務室が分かったな」
    「お前の母親に聞いたよ」
    「母だと?」
    「そんな怖い顔をするな。何と言ったか…補佐役の」
    「……月島軍曹か」
    「そうだ月島だ」
    「まったく…母親とはなんだ」
    「あの軍曹、口煩いだろう?まるで母親だ」
    「貴様はまだその様な夢現のようなことを言っているのか」
    「視えるもんは仕様が無いだろう。しかし…あれは何だ?」
    「何だとはなんだ」
    「初めて見たぜ、あんな人間。いや人間ではないのか」
    「まあ感性に乏しい岩のような面白味のない奴ではあるが、列記とした私の部下だ」
    「ふぅん……では人では無くなってしまったのかもな」
    「貴様、何を見た」
    「腹から薄らとした柔らかい管がどこかに伸びてんだ。何かと繋がったものが、すうっと出ている」
    「なにを……」
    「ありゃあ、臍の緒だ。なあ鯉登、お前の世話役、何の子を孕んでるんだ?」
    「馬鹿げたことを!男が子を成すなど有り得ん!貴様はいつだってその様な世迷いごとを」
    「いいやこれは絶対だ。胎に人成らざる物を実らせてる。なあ鯉登、お前気を付けなけりゃ……喰われちまうぞ。……あれは人成らざる物の嫁だ。いくら欲しくたって、手を出してはならない。覚えておけよ、鯉登」

    +++++++++++++

    ある時月しまが消えた。それはもう見事に、音も立てずに、消えたのだ。その日は夕餉を過ぎても業務が立て込み、飯を食みながら書類を片付けたのを覚えている。明日は日曜で一応休日なのだがどうにも日を跨ぎそうだ。月しまは今夜が不寝番だと言っていたが、どうやら兵卒に変わってもらったらしかった。
    仕事が片付き、鶴みが宅に着いたのがそれこそ丑三つ時だったろうか。送り届けてくれた月しまを泊まらせ、明日は朝から二人で過ごそうと思っていた。水だけ張られた湯船を温めるため、外に薪を取りに行くと言ったまま、彼は消えてしまった。
    あの屈強な男が音もなく連れ去られるはずも無く、煙草を二本ほど燻らせた頃に、ようやく鶴みはその静けさに立ち上がった。家の裏手も、風呂場も、勿論寝所も厠も、どこにも居ない。積まれた薪が崩れることもなく、鉄砲風呂の竈には真新しい薪が数本火も点かず刺さっているだけだ。
    薪置き場に残置物もなく、また乾いた砂地に足跡すらなく、本当に自分は月しまを伴って帰宅したのかと疑いたくなるほどだった。近くを探そうにも、陸軍の宅地である。騒ぐことも出来ず、まんじりと朝を迎えるしかできない。鶴みはその日一睡もせず、明け暮れする空を眺めながら月しまの帰りを待った。
    彼が行方知れずとなってから三日が過ぎた頃から、隊内、連隊内、陸軍内と話は笑えるほどの速さで広まっていく。駆け落ちだ、脱走だ、いいや痴情のあれそれで死んでしまっただの。娯楽に飢えた人間は嬉しそうに口にした。彼を信奉する者たちはみな悔し涙を飲んで、そんな筈は無いと鶴みに嘆願すらした。
    和だ大尉などからは始終「お前が負荷を掛けすぎた。何でもかんでも月しまに頼りよって……優秀な人員を使い捨てるな」と酷く叱咤されたものだ。そんなことは、鶴みが一番よく分かっていた。何せ右腕がもがれてしまったのだから。不便で仕方がない。
    月しまを探すにしても、当人ほど優秀な腕がないのだから手掛かりは梨の礫で、結局彼が戻ってくる一ヶ月半の間鶴みは一本腕でどうにかこうにかやっていた。
    そして月しまの帰還はと言えば、なんとも肩透かしな有様で、とある月曜にひょっこりと何食わぬ顔で執務室にやってきたのだから、流石の鶴みも怒鳴り散らしてしまった。
    胸倉を掴み上げ、どれ程迷惑を被ったか、仕事が進まなかったか、上司に叱られたか。
    陳情と罵詈雑言を並び立て、怒りの熱が消化された頃。鶴みはようやくこの男を抱き締めることができた。
    「……どこに行っていた」
    「どこへも行ってはおりませんが……一体どうなさったと言うのですか」
    「一ヶ月と半だ。お前が消えて、それほどの日が過ぎた」
    「待ってください。自分が消えた…?」
    「あの日忽然と消え、探そうにもどこも見当たらず、散々な噂ばかりが流れる始末だ。駆け落ち、無理心中、脱走してもう北海道には居ないだとか。みな面白可笑しく囃し立てていた」
    「あの日…あの日とはいつです?自分は土曜の仕事が長引き、日曜の早朝に兵舎の自室で床につきました。……その、何年振りかと言うくらいよく寝た気がするのです。今朝だって寝坊して朝餉も食えず、急いでこちらに…」
    「お前が寝坊?兎に角、事は全て大尉殿に伝える。査問会が開かれることは必至だ。減俸や罰則、営倉行きもだろうな。取り敢えず人目に付かぬよう終日ここで話を聞く」
    「…承知しました」
    困惑の色濃い顔付きで頷く月しまは、どんな罰でも慎んで受けますと付け足す。それからどんなに話を聞こうとも、月しまの言い分は変わることがなかった。本人の言い分が自室で一日寝過ごした、というものなだけに証人となる人物は上がっては来ず、最終目撃者は鶴みしか居なかった。
    査問会でありのままを伝えたが、罰を免れることは不可であり、不在・逃亡の事実は変わらなかった為、減俸の上で営倉行きとなった。行動は制限され、休日の外出は三ヶ月間取り上げられ、営外任務の単独行動も忌避され三人での行動が義務付けられた。
    しかしまた月しまは消えた。
    見通しの良い師団通りで、旭橋を渡り切ったところで姿を消した。共に営外より帰営する途中だった一等卒と上等兵一名ずつが、血相を変えながらこう言った。
    「軍曹殿は、自分達と並び立って歩かれ、自分の左側に立っておりました。○○一等卒はその一歩後ろにおりました」
    「あの時自分達の後ろで、何やら子供達が大声を上げてはしゃぎ走っておったので、三人でそれに気を取られ……振り向いたのです」
    「騒がしいなと笑い合いながら向き直ろうとした時、既に軍曹殿は居られませんでした。ほんの、ほんの一瞬のことだったのです」
    その二名が微罰の清掃と休日の外出禁止を言い渡された一週間後に、薄汚れた格好の月しまが戻ってきた。外套は草の汁で所々変色し、軍帽も無く、半長靴と脚絆は土に塗れていた。震える彼はこう言った。
    「気付いたら半面山の麓にある北野神社の傍に居りました」
    それなら近い。徒歩で2時間程度だ。
    一週間も掛かるはずがない。
    「明け方頃に目が覚めて、帰営まで今まで掛かりました」
    昼過ぎの正門前に立っていた月しまの顔は、やはり混乱で青白くなっていた。夢の病だったとして、再度消えたのは夕刻頃だった。徒歩で帰営する途中、部下の前で瞬く間に消えた。尋常ではない。
    「物憑きではあるまいか」
    とある将校が鶴みに言った。
    「俺の生まれたとこではそうやってしばし、人が何度も消える話がある。物憑きならまだしも、山祇に気に入られでもしてみろ。えらい事になるぞ。悪い事は言わん、物は試しと祓ってもらうなりしてみろ」
    「山祇に気に入られるとどうなるんだ?」
    他の将校が冷やかす様に返す。
    「孕まされるぞ」
    その言葉に場は一気に笑いの渦となった。青い顔をしているのは、月しま本人、ただ一人だった。

    (おしまい)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💯👏👏👏🙏👏💖🌋🌋🌋🌋👏👏👏👏👏👏👏🍚
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    可塑chang

    DOODLE【稚鯉】鯉ちゃんってさ…なんかイメージ小さい頃からお喋りさんなとこあるよね……ずーーーっと喋ってる3歳児みたいなの見たいな……足らずの舌で薩摩弁喋りながら月島の膝の上にずーーっとおんのん。可愛いな。可愛がりたいな「あんね、そいでね、ちゅいちま、きいとーか?おやっどゆうちょいました!あぱんま、よーけ、うまかとゆーちょいまいた!おあんのおおげ!おいちーゆうて!おいはね、おあん、よごれとちおもっ。そいはちがーよゆあれた」
    「そうですか、違いましたか」
    「ちあいました」
    「そうですか〜」
    「おちりのな、おちりのこっち、かゆか」
    「汗疹ですかね」
    「わあらん。ちゅいちまかいかいして」
    「血が出ますよ」
    「ち?おいちっとーよ!ちはててんなかな?ながえちょーど。こりょんだあ、でる。いた〜い!!」
    「イタイイタイですね」
    「おちりいたか」
    「えっ痛いんですか」

    ++++++++++++++

    「ちゅいちあ!ちゅいちあ!」
    「はいはい」
    「こたなとお!おったや!」
    「どうしました坊っちゃん」
    「ひゃ〜もう、おいはちかれもした!」
    「疲れましたか」
    「そうよ〜だあってとおかじゃあ!おいがんあってきあした」
    「お疲れ様です」
    「あい」
    「ここは私の部屋ですよ」
    「とおかじゃ〜!」
    「と言うか私ももう寝ようかと思ってるんですが」
    「あんさ、おいはね」
    「はい」
    「いっちょにねたらよかおもおな〜」
    「午前0時ですよ今 858

    可塑chang

    DOODLE中年鯉月(??)邸宅の近くに、それは草花を愛するご婦人が住んでいた。四季折々の色に溢れるその庭を、あの人と歩きながら見るのが好きだった。
    「基、お前はこんなにも彩り豊かな日に産まれたのだな」
    極彩色の景色を眺めながら、あの人が感慨深げに言った。快晴の四月だった。
    その日私達は、ある人に会いに行くことになっていた。駅をいくつか跨いで、東京駅に向かう。未だ慣れぬ雑踏を抜け、ようやく待ち合わせのカフェーへ辿り着いた。美味さの分からぬコーヒーなとを頼み、いかにもなヒラヒラした割烹着を着る女給から接待を受け辟易するも、待ち人の列車の到着を待った。
    ここしばらく、あの人は偉く渋ったような小難しい顔をずっとしていたものだから、私はとうとう勘当なり離縁なりを申し渡されるものだと思っていた。その待ち人だって、もしかすれば若い正妻となる人物やもと考え、とうとう来たかと静観を決めこもうとしていた。
    「なあ基」
    そう言ったあの人の声音は低く落ちていて、そら見ろと思った。言わんこっちゃない、今日がその日だと。
    こちらを呼んだあの人は、その言葉の後はまた黙りこくってしまった。階下から聞こえ上ってくる蓄音機のよくも分からぬ荘厳な音 2030

    可塑chang

    DOODLE【死ネタ】鯉月が早々別離となり数十年後、鯉ちゃんが亡くなってる壮年の話。残された家族の夕べ(鯉月の二人は一度も出てきません)盛大な父の葬儀が終わり、やっと喪があけた頃。あの頃よりもほっそりとした母と静けさの目立つ居間で、庭木を見ながらお茶を飲んでいた。父が亡くなったのは快晴の春。冬の灰色からは想像もつかないような青の目立つ空の日だった。
    小池を臨む縁側は光溢れ、空の青も葉の緑も濃く、初夏の足音がする。眩い生命の庭の片隅では、大輪の白い芍薬が顔を綻ばせている。どこぞの梢でコルリがチヨイチヨイと高く鳴き、夏が来るぞと言っているようだった。まるで父の如き騒がしさだ。
    「○○ちゃん」
    母が私を呼んだ。
    「なあに母様」
    「わたし、あの人に愛されていたのかしら」
    何を言うのだろう。あれほどまでに分かりやすい愛を向ける男など、今日日父くらいしか私は知らない。陸軍将校であり、閣下と呼ばれ、厳格で忠実なあの人が、顔を綻ばせ帰ってくるのを、十数年は見てきた。
    「……どうしてそう思うの?」
    「さあ…何でかしらね……寂しいのかしら、私」
    「父様は騒がしい人だったものね。急に静かになっちゃって、きっと耳が驚いているのよ。こんなに静かなの久しぶりだって」
    「そうね……そうだといいわね」
    浅く笑う母は綺麗だ。華奢な指先、桜貝の如き爪、白 2288

    可塑chang

    DOODLE鶴月「なぜ自分なのですか」
    この男を右腕に選んで数年しても、同じように苦悶の顔で彼は鶴みに尋ねた。何度も、何度も。その度に「お前だからだ」と言い聞かせた。しかし男は「他に最もな適任者がおります」そう言って聞かなかった。大切に育まれなかった男の自尊の心は、いつになっても小さく幼い。
    それを可哀想だとは思わない。自分で育てることだって出来るはずだ。しかし最後の一歩を踏み出せないのだろう。ある程度の地位や名声は人の心を強くする。良い方にも、悪しき方にも。しかし何を与えてもこの男のそれは育ち切らず、天を仰ぐ花弁を誇らしげに見せつけることはなかった。
    事実誰でも良かった。条件が合えば、きっとこの男でなくてもよかった。しかしある一点を除いて、彼に敵う人物は結局のところ現れなかった。どの兵卒でもなく、最終的に“利き腕”としてしっくりくるのは、月しまただ一人だった。
    そのある一点とは、結局は愛玩性だ。鶴み自身の手に余る部分が幾分かないと、愛しみ甲斐がない。手を掛けて育んだと言える部分が無いと、完成した時の達成感は得られない。鶴みは幾度も行った選定の中でそれを学んだ。愛するという事は、そういうことなのだ。
    776

    可塑chang

    DOODLE少し不思議な原作時間軸の鯉月と、その前日譚(数年前)「鯉登」
    「おお、○○。貴様なぜ旭川に」
    「いやなに、ちょっとした使いだ。久しいな」
    「よう俺の執務室が分かったな」
    「お前の母親に聞いたよ」
    「母だと?」
    「そんな怖い顔をするな。何と言ったか…補佐役の」
    「……月島軍曹か」
    「そうだ月島だ」
    「まったく…母親とはなんだ」
    「あの軍曹、口煩いだろう?まるで母親だ」
    「貴様はまだその様な夢現のようなことを言っているのか」
    「視えるもんは仕様が無いだろう。しかし…あれは何だ?」
    「何だとはなんだ」
    「初めて見たぜ、あんな人間。いや人間ではないのか」
    「まあ感性に乏しい岩のような面白味のない奴ではあるが、列記とした私の部下だ」
    「ふぅん……では人では無くなってしまったのかもな」
    「貴様、何を見た」
    「腹から薄らとした柔らかい管がどこかに伸びてんだ。何かと繋がったものが、すうっと出ている」
    「なにを……」
    「ありゃあ、臍の緒だ。なあ鯉登、お前の世話役、何の子を孕んでるんだ?」
    「馬鹿げたことを!男が子を成すなど有り得ん!貴様はいつだってその様な世迷いごとを」
    「いいやこれは絶対だ。胎に人成らざる物を実らせてる。なあ鯉登、お前気を付けなけりゃ… 2958

    related works

    recommended works