Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    可塑chang

    @kasokasokami
    ついったで呟いたのの保管

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 10

    可塑chang

    ☆quiet follow

    【死ネタ】鯉月が早々別離となり数十年後、鯉ちゃんが亡くなってる壮年の話。残された家族の夕べ(鯉月の二人は一度も出てきません)

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    盛大な父の葬儀が終わり、やっと喪があけた頃。あの頃よりもほっそりとした母と静けさの目立つ居間で、庭木を見ながらお茶を飲んでいた。父が亡くなったのは快晴の春。冬の灰色からは想像もつかないような青の目立つ空の日だった。
    小池を臨む縁側は光溢れ、空の青も葉の緑も濃く、初夏の足音がする。眩い生命の庭の片隅では、大輪の白い芍薬が顔を綻ばせている。どこぞの梢でコルリがチヨイチヨイと高く鳴き、夏が来るぞと言っているようだった。まるで父の如き騒がしさだ。
    「○○ちゃん」
    母が私を呼んだ。
    「なあに母様」
    「わたし、あの人に愛されていたのかしら」
    何を言うのだろう。あれほどまでに分かりやすい愛を向ける男など、今日日父くらいしか私は知らない。陸軍将校であり、閣下と呼ばれ、厳格で忠実なあの人が、顔を綻ばせ帰ってくるのを、十数年は見てきた。
    「……どうしてそう思うの?」
    「さあ…何でかしらね……寂しいのかしら、私」
    「父様は騒がしい人だったものね。急に静かになっちゃって、きっと耳が驚いているのよ。こんなに静かなの久しぶりだって」
    「そうね……そうだといいわね」
    浅く笑う母は綺麗だ。華奢な指先、桜貝の如き爪、白い肌。
    最近ようやく髪に白いものが交じるようになった母は、それでもまだ良家の娘然とした貞淑さを持っていた。
    「母様は?父様を愛してた?」
    「ええ…だって……フフ、私が一目惚れしたのよ」
    「そんなの初耳だわ!」
    「あの人格好良いでしょう?肌も綺麗で…見たことなくてね。一目で恋に落ちたわ」
    「良家のお坊っちゃまはみーんななまっちょろいものね」
    「まあ、なんてことを言うの。でも本当は、そうね、私もそう思ったの。あの人に出会ってから」
    「私母様に似て良かった。兄様みたいに父様に似たら、女子を夢中にさせてたわ」
    「あら、貴女お顔は父様にそっくりよ」
    「嬉しいやら、嬉しくないやら」
    「フフ…涼し気な目元が一等似てる」
    茶菓子の饅頭を口に放り込んで、何とも言えない気持ちを外に出ないようにした。
    「私があの人と結婚出来たのも…巡り合わせとかじゃなくて、ただ単に運が良かった。それだけなの」
    母は庭のそのまた遠くを見つめているようだった。
    「他にも言い寄るご令嬢は沢山居たでしょうに、数多の釣書の中で運良く私に返事が来た。それだけな気がするの」
    「まさか。父様だって母様に一目惚れしたのよ」
    母は、娘の私から見ても愛らしく美人だった。控え目な性格ではあるが、芯のある気丈な人だ。
    「初めてお会いした日、あの人ったら死にそうな程酷い顔をしていたの。私が一目惚れした人と同じ方だなんて、思えないほどやつれて」
    あの快活な父が、やつれていただなんて。考えられない。
    「まるで葬式帰りのような顔付きで、憂いた目が乾いていてね。悲壮と言うのはきっとああ言った顔なのね。そんな人見たことがなかったから。私は言ったの。貴方を支えたいって。そうしたら気のない返事を一度して、申し訳ないと謝るじゃない。初めてお見掛けした時とはまるで別人なの。その時は部下を連れて街を歩いてらっしゃって。ハキハキと楽しそうにお話してらしたのに。今目の前に居るのはしょぼくれて死にそうで、やつれきった毛並みの良いただの人。憧れの殿方ではなくなっていたの。どうしたのかと聞けば、部下が亡くなったと。きっと心が弱ってらっしゃったのね。だから……私はその心の隙間につけ込んだの。私は運が良かった、それだけ。ずっとそんな風に思っていたからかしら……今こうやって振り返っても、あの人と恋が出来ていたとは思えないのよ。いつも一方から、私からあの人を好いていて……」
    「でも父様はその想いに報いてくれたんじゃなくて?」
    「………そうね、あの人はそんなに酷い人じゃないものね…」
    「母様は添い遂げたのよ」
    「ええ、ええ…………でもやっぱり、欲しかったの。あの人の真心からの恋と愛を」
    母ははたりと涙を滴らせた。清いその涙に、私は何も言えなかった。
    「○○ちゃん、内緒の話を聞いて頂戴」
    今更これ以上、何を聞かされるのか。私の胸が少し軋む。
    「父様はね、誰が亡くなろうと、どの部下が亡くなろうと、あんなに身を崩すほど悲しみに暮れたことはなかった。あとにも先にも、見合いの席で見たっきり」
    部下?どうしてまた急にその話題を掘り下げるのだろう。
    「父様の真心は、今きっとその方のところへ戻ったのよ」
    戦友の元へ、父の魂は“戻った”と言うことだろうか。
    「私はもう、あの人が夜半の暗闇の中、ひっそりと古ぼけた写真を撫でるのを見なくてもいいのね……」
    ワッと少女のように泣き出した母は、卓に突っ伏して尚更泣いた。
    「今際の際まであの人は何も言ってはくれなかった。骨を分けろとも、何も言ってはくれなかったの。あの人の骨はこれからも鯉との墓の中で私を待ってる」
    「母様…」
    母にしか分からぬ何かがあるのだろう。その何かに罪悪を感じて、彼女は今の今まで黙っていたのだろう。私にはどうすることもできない。
    「あの人の真心だけはどうか、その方の同じ、ひと処へどうか」
    母はまるでそれを欲しがったことを嘆いて後悔しているようだった。それを欲する権利は、母には十分すぎるほどあると言うのに。
    一頻り泣いたあと、母は存外すっきりした顔で笑いながら言った。
    「○○ちゃんに聞いてもらって踏ん切りが付いたわ。明日にでも陸軍に問い合わせて、あの人をあんなに悲しませた人が誰なのか、聞いてみようと思うの」
    積年の自責の念から開放された母は、やはり芯の通った気丈な人だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏💯🙏❤💞🙏💘🙏😭😢😢😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    可塑chang

    DOODLE【稚鯉】鯉ちゃんってさ…なんかイメージ小さい頃からお喋りさんなとこあるよね……ずーーーっと喋ってる3歳児みたいなの見たいな……足らずの舌で薩摩弁喋りながら月島の膝の上にずーーっとおんのん。可愛いな。可愛がりたいな「あんね、そいでね、ちゅいちま、きいとーか?おやっどゆうちょいました!あぱんま、よーけ、うまかとゆーちょいまいた!おあんのおおげ!おいちーゆうて!おいはね、おあん、よごれとちおもっ。そいはちがーよゆあれた」
    「そうですか、違いましたか」
    「ちあいました」
    「そうですか〜」
    「おちりのな、おちりのこっち、かゆか」
    「汗疹ですかね」
    「わあらん。ちゅいちまかいかいして」
    「血が出ますよ」
    「ち?おいちっとーよ!ちはててんなかな?ながえちょーど。こりょんだあ、でる。いた〜い!!」
    「イタイイタイですね」
    「おちりいたか」
    「えっ痛いんですか」

    ++++++++++++++

    「ちゅいちあ!ちゅいちあ!」
    「はいはい」
    「こたなとお!おったや!」
    「どうしました坊っちゃん」
    「ひゃ〜もう、おいはちかれもした!」
    「疲れましたか」
    「そうよ〜だあってとおかじゃあ!おいがんあってきあした」
    「お疲れ様です」
    「あい」
    「ここは私の部屋ですよ」
    「とおかじゃ〜!」
    「と言うか私ももう寝ようかと思ってるんですが」
    「あんさ、おいはね」
    「はい」
    「いっちょにねたらよかおもおな〜」
    「午前0時ですよ今 858

    可塑chang

    DOODLE中年鯉月(??)邸宅の近くに、それは草花を愛するご婦人が住んでいた。四季折々の色に溢れるその庭を、あの人と歩きながら見るのが好きだった。
    「基、お前はこんなにも彩り豊かな日に産まれたのだな」
    極彩色の景色を眺めながら、あの人が感慨深げに言った。快晴の四月だった。
    その日私達は、ある人に会いに行くことになっていた。駅をいくつか跨いで、東京駅に向かう。未だ慣れぬ雑踏を抜け、ようやく待ち合わせのカフェーへ辿り着いた。美味さの分からぬコーヒーなとを頼み、いかにもなヒラヒラした割烹着を着る女給から接待を受け辟易するも、待ち人の列車の到着を待った。
    ここしばらく、あの人は偉く渋ったような小難しい顔をずっとしていたものだから、私はとうとう勘当なり離縁なりを申し渡されるものだと思っていた。その待ち人だって、もしかすれば若い正妻となる人物やもと考え、とうとう来たかと静観を決めこもうとしていた。
    「なあ基」
    そう言ったあの人の声音は低く落ちていて、そら見ろと思った。言わんこっちゃない、今日がその日だと。
    こちらを呼んだあの人は、その言葉の後はまた黙りこくってしまった。階下から聞こえ上ってくる蓄音機のよくも分からぬ荘厳な音 2030

    可塑chang

    DOODLE【死ネタ】鯉月が早々別離となり数十年後、鯉ちゃんが亡くなってる壮年の話。残された家族の夕べ(鯉月の二人は一度も出てきません)盛大な父の葬儀が終わり、やっと喪があけた頃。あの頃よりもほっそりとした母と静けさの目立つ居間で、庭木を見ながらお茶を飲んでいた。父が亡くなったのは快晴の春。冬の灰色からは想像もつかないような青の目立つ空の日だった。
    小池を臨む縁側は光溢れ、空の青も葉の緑も濃く、初夏の足音がする。眩い生命の庭の片隅では、大輪の白い芍薬が顔を綻ばせている。どこぞの梢でコルリがチヨイチヨイと高く鳴き、夏が来るぞと言っているようだった。まるで父の如き騒がしさだ。
    「○○ちゃん」
    母が私を呼んだ。
    「なあに母様」
    「わたし、あの人に愛されていたのかしら」
    何を言うのだろう。あれほどまでに分かりやすい愛を向ける男など、今日日父くらいしか私は知らない。陸軍将校であり、閣下と呼ばれ、厳格で忠実なあの人が、顔を綻ばせ帰ってくるのを、十数年は見てきた。
    「……どうしてそう思うの?」
    「さあ…何でかしらね……寂しいのかしら、私」
    「父様は騒がしい人だったものね。急に静かになっちゃって、きっと耳が驚いているのよ。こんなに静かなの久しぶりだって」
    「そうね……そうだといいわね」
    浅く笑う母は綺麗だ。華奢な指先、桜貝の如き爪、白 2288

    可塑chang

    DOODLE鶴月「なぜ自分なのですか」
    この男を右腕に選んで数年しても、同じように苦悶の顔で彼は鶴みに尋ねた。何度も、何度も。その度に「お前だからだ」と言い聞かせた。しかし男は「他に最もな適任者がおります」そう言って聞かなかった。大切に育まれなかった男の自尊の心は、いつになっても小さく幼い。
    それを可哀想だとは思わない。自分で育てることだって出来るはずだ。しかし最後の一歩を踏み出せないのだろう。ある程度の地位や名声は人の心を強くする。良い方にも、悪しき方にも。しかし何を与えてもこの男のそれは育ち切らず、天を仰ぐ花弁を誇らしげに見せつけることはなかった。
    事実誰でも良かった。条件が合えば、きっとこの男でなくてもよかった。しかしある一点を除いて、彼に敵う人物は結局のところ現れなかった。どの兵卒でもなく、最終的に“利き腕”としてしっくりくるのは、月しまただ一人だった。
    そのある一点とは、結局は愛玩性だ。鶴み自身の手に余る部分が幾分かないと、愛しみ甲斐がない。手を掛けて育んだと言える部分が無いと、完成した時の達成感は得られない。鶴みは幾度も行った選定の中でそれを学んだ。愛するという事は、そういうことなのだ。
    776

    可塑chang

    DOODLE少し不思議な原作時間軸の鯉月と、その前日譚(数年前)「鯉登」
    「おお、○○。貴様なぜ旭川に」
    「いやなに、ちょっとした使いだ。久しいな」
    「よう俺の執務室が分かったな」
    「お前の母親に聞いたよ」
    「母だと?」
    「そんな怖い顔をするな。何と言ったか…補佐役の」
    「……月島軍曹か」
    「そうだ月島だ」
    「まったく…母親とはなんだ」
    「あの軍曹、口煩いだろう?まるで母親だ」
    「貴様はまだその様な夢現のようなことを言っているのか」
    「視えるもんは仕様が無いだろう。しかし…あれは何だ?」
    「何だとはなんだ」
    「初めて見たぜ、あんな人間。いや人間ではないのか」
    「まあ感性に乏しい岩のような面白味のない奴ではあるが、列記とした私の部下だ」
    「ふぅん……では人では無くなってしまったのかもな」
    「貴様、何を見た」
    「腹から薄らとした柔らかい管がどこかに伸びてんだ。何かと繋がったものが、すうっと出ている」
    「なにを……」
    「ありゃあ、臍の緒だ。なあ鯉登、お前の世話役、何の子を孕んでるんだ?」
    「馬鹿げたことを!男が子を成すなど有り得ん!貴様はいつだってその様な世迷いごとを」
    「いいやこれは絶対だ。胎に人成らざる物を実らせてる。なあ鯉登、お前気を付けなけりゃ… 2958

    related works

    recommended works