baroque原因不明の謎の大災害によって、世界のあらゆるものが崩壊し、人や物すべてが歪んでしまった世界。
大災害が起こったその日から、空は赤く染まり、日が沈むことも朝が訪れることもなくなってしまった。
都市は破壊され荒廃し、歪んだ者たちの呻き声が堪えず聞こえてくる。
そして歪みの影響は、精神だけではなく肉体にまで影響を及ぼし始めていた。
地上で辛うじて生き残っていた者たちは、徐徐にその形を留めることが出来ず、変異し『異形』となった。
それは歪んでしまった人間の成れの果て。一度『異形』と化し、奇怪に歪みモンスターとなった人々にすでに理性はなく、残酷な殺戮が日々絶えることはなくなった。
失った記憶と罪の意識に苛まれている“主人公”の男は、今にも終末を迎えそうなその世界で目覚め、その地を彷徨っていた。
そんな男の前に、天使の羽を持った一人の青年が現れる。
大きな翼を持った“天使の男”は、『異形』と戦うための兵器『天使銃』を主人公に授けると、「あの塔の頂上へと向かえ」「それがおまえの使命だ」と神託を告げる。
“天使の男”が指し示した先、荒れ果てた大地にひと際高くそびえ立つ、奇妙に歪んだ塔。
虚ろな心を抱えた主人公は、ただその胸に残された強い罪の意識に従い、“天使”に導かれるまま外界に別れ告げた。
訪れる度に内部の構造が変化する『神経塔』と呼ばれる生きた塔。
その頂上を目指し登っていく主人公。
塔の中を徘徊する理性なき『異形』は、呻き声を上げながらこちらに襲い掛かってくる。その肉を食べれば飢えは満たされ、その心臓を喰らえば活力が湧く。
“天使の男”は、ことあるごとに主人公の目の前に現れ、助言を残し去っていく。
「おまえは自分が何をすべきか、すでに知っているはずだ。わかるだろう?」
「この世界で罪を償うためにすべきことを」
「人間は善いことをする生き物のはずだ」
“天使の男”は、世界が滅んでしまった原因であるという主人公に、自らの手で罪を償えと迫ってくる。「それが、世界を救う方法だ」と。
そして主人公は、ついに『神経塔』の頂上にある神殿で、“神”と呼ばれる存在と対面することになる。
主人公は“天使の男”の言われた通り、この世界を変貌させた原因である『狂ってしまった“神”』を、託された『天使銃』を使って殺さなければならない。
その引き金を引き、神託の通り「神殺し」を行った主人公は、気付くとまた外界に降り立っていた。
そして再び主人公の目の前に現れる“天使の男”。
『天使銃』を託され、言われるがままに塔へと登り、また“神”を殺す。それを何度も繰り返す。たとえ塔の半ばで力尽き死に絶えたとしても、またその繰り返し。
主人公はその繰り返しの中で、度々過去の幻影を見るようになる。
なぜ幾度も死に、幾度も蘇るのか。何度も塔を登り「神殺し」と「死」を繰り返すことによって、主人公は自身の失われた記憶を少しずつ取り戻していくこととなる。
そしてその繰り返しの最期に、主人公は「“神”を殺す」か「“神”と融合するか」のどちらかを選ばなければならない。
世界が崩壊する前。
『マルクト教団』と呼ばれる新興宗教が存在していた。
人工の“神”を自ら創り出し「我々は世界を維持する“神”を守らなければならない」「それを守り続けることによって、この世の平和は維持され、世界は救われるのだ」と信じ、それを最上の使命とした“天使”と称される構成員で組織された教団。
“天使の男”は、その組織の構成員であり、その“神”に仕える忠実なる使徒であり、組織のトップに君臨する長であった。
そして主人公もまた、その教団に属する幹部の一人であった。
その頃、世界では様々な歪みが起こり始めていた。
世紀末な空気が漂い、残虐で異常な犯罪が多発し、退廃的な雰囲気に人々の心が荒み始めていた。
「そのような歪みが現れ始めたのは、我々が信奉する“神”が狂い始めたからだ」と教団内部では考えられ始めていた。
それに対して、教団の長であった青年は「『狂った“神”』を殺し『新たな“神”』を創るべきだ」と主張した。
がその時すでに幹部であった主人公の男は「“神”と融合が出来れば、融合した人間から“神”の力を操ることが出来る」「オレにはそれが出来る」とそれに真っ向から反対した。
だがそれは、融合する人間を“神”の依り代とし、その身に「狂った“神”を降ろす」いわば人柱のようなものだった。
そしてその人柱に名乗りを上げたのが主人公の男だった。
度重なる審議の結果、決行される人間と“神”の融合の儀式。
しかし主人公と『狂った“神”』が融合する直前、その場を襲撃した“天使の青年”が『狂った“神”』を殺害したことによって、儀式は失敗に終わる。
その身を引き裂かれた『狂った“神”』は悲鳴を上げ暴走し、その余波によって世界は焼き尽くされ、世界は滅んだ。
その断末魔と共に放たれた力は、地上を破壊しただけではなく、世界中のありとあらゆる人や物を歪ませたのだった。
そして塔の頂上にある神殿で、かつて教団に“神”と呼ばれ、信奉されていた存在と対面する主人公。
すでにどうしようもなく狂ってしまった“神”は「我らは再び一つとなって、共に世界をやり直すべきだ」と主人公に求める。
だが主人公は「世界をやり直して正しい姿にするなんて、そんなものはただの人間のエゴだ」という。
「今のありのままを受け入れて、歪みを抱えたまま人々は生きていくべきだ」と。
記憶を取り戻した主人公の男は、最期に再び「“神”と融合すること」を選んだ。
主人公は『“神”テスカトリポカ』と融合し、新たな『テスカトリポカ』となる。
それからまた下界に降り立つと、滅亡した世界で目を覚ます。
赤い空も、呻き声も絶えず、荒れ果てた大地に歪んだままそびえ立つ塔も、そのままの世界に。
主人公“テスカトリポカ”は、己だけの“天使になった男”に会いに、今日も『神経塔』を昇っていくのだった。
【主人公“神テスカトリポカ”となった人間】
『マルクト教団』の幹部であり、世界を救うために「“神”との融合」という名の生贄に名乗りを上げた男。
主人公である“テスカトリポカ”が何度も蘇っていたのは、不完全ながらも神の力を体に宿し始めていたから。一度神と融合し掛けていた名残で、神の力の一片を持っていたからだった。
何度も生き死にを繰り返し、戦い抜いた先で戦士となること。
何度も神を殺し、世界を終わらせること。
『異形』と化した人間たちを生贄に捧げ、その血肉と心臓を喰らうこと。
下界や塔内部に残る『異形』の人々から話を尋ね、願いを叶え、その人々を楽園へと旅立たせること。
そのすべてが人から“神”になるための儀式のひとつでもあった。
【人工“天使”にされた青年デイビット】
『マルクト教団』の長であった青年。
幼い頃から両親がいなく、組織に拾われた子どもの一人。
生まれながらに人間性の欠落が見つかりこれ幸いと、いずれは“神”に仕え、その身も心もことごとくを“神”に奉る使徒である“天使”となるように育ってられた少年。
『偽翼』というまがい物の羽を、背中に移植されている。
彼の正体は、それだけのただの人間である。
デイビットが組織に拾われた時、すでに組織の幹部であったテスカトリポカは、そんな彼の教育係であり、育ての親代わりであった。
主人公であるテスカトリポの前に現していたその姿は、すべて幻影である。
融合の儀式を襲撃し“神”を自らの手で殺したデイビットは、“神”の怒りによってその身を吹き飛ばされ『神経塔』の頂で串刺しとなっており、今でもその肉体は罪人のように磔となったままである。
『神経塔』は『マルクト教団』の本拠地があった施設であり、“神”が創られた場所。“神”との融合の儀式が行われた神殿であった。しかし儀式は失敗に終わり、世界の歪みの震源地となった塔は、今では“神”の肉体の一部と化している。
“神”の一部分と化している塔にその体を刺し貫かれているおかげで、この先もその身に死が訪れることはないが、デイビットの本体である肉体は今でも苦痛に苛まれ続けている。
彼は死ぬことも出来ず、そこから動くことも、誰かに救われることもない。
そんな彼の「この世界で罪を償うためにすべきこと」「世界を救う方法」は…。
『天使銃』とは
>“天使”の肉体の一部が銃弾に込められた銃。撃たれた相手は歪み、そして一瞬で消えていく。
本当に“神”は狂っていたのか?
>人間の都合のいいように作られた神であり、狂ったのではなく、はじめからそういうモノだったというのが正しい。
いずれ“神”の下僕である“天使”となるデイビットと、それをどうにしたかったテスカトリポカ。
そんなテスカトリポカが『狂った“神”』の依り代となることを、世界を破壊してまで止めたかったデイビット。
そんなすれ違いの話。
記憶を取り返しこの世界の“神”となったテスカトリポカは、この歪んだ世界で今日も己の守護天使に会いに、神殿へ昇っていく。
「世界を救うことより、僕は貴方が大切だった」
「世界を救わないのか?」「こんなことが善いことのはずがない」
「世界中の者たちが、いまだ苦しんでいるというのに、その根源であるおまえたちは、この世界を狂ったままにするというのか?」
「かまわないさ。オレは世界よりお前が大切だ」