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    misawa_0123

    @misawa_0123

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    misawa_0123

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    以前書いたモブ変態教師×ショタ🐯の続き。
    ばじ視点です。
    大して長くないのに難産やった…。

    ここからばじには大分こじらせて行ってほしい。
    無自覚に過保護をこじらせていってほしい。
    次続き書くなら一虎引きこもり編かな。

    #ばじとら
    punIntendedForAHatchet

    とある病院の個室に場地はいた。
    目の前の白いベッドに静かに眠る一虎。
    場地はベッドの直ぐ側に置いた椅子に座り、じっとその寝顔を眺めていた。


    数時間程前の事。
    道端で体調を崩し気を失ってしまった一虎は救急車で運ばれる事となった。
    一虎が突如おかしくなってしまった理由。場地はそれを頭に思い浮かべた。
    公園で一虎の横に立っていた、30代位だろうか…。パッと見特に怪しい所のないひょろっとした普通の優男に場地は見えた。
    つい先程まで場地と一緒にいた一虎は特におかしな所のないいつも通りの一虎だった。昨日やってたお笑い番組について話していた一虎は屈託なく笑っていたのを思い出す。
    場地が喉が渇いたと一虎をその場に残し少し自販機へと行ってる僅かな時間の事だ。缶ジュースを片手に戻ってきた場地の前にあったのは知らない大人の男に手を掴まれ顔を真っ青に染めた一虎の姿だった。
    目の前の異様な光景に場地は動揺する。
    ─なんだこの状況…
    そんな場地に気付いたのか男は朗らかな様子で場地に話し掛けてきた。
    男は自分は一虎の知り合いだと言った。久し振りに会ったので話したい事が沢山あって、だから今日はこのまま一虎を連れていくと。男のその話ぶりは本当に普通そのもので男単体で見ると怪しい素振りなどは一切なかった。
    けれど、男の傍らに佇む一虎の様子を見るに、その認識は間違いなのだろうと場地の本能が警報を鳴らす。
    一虎の顔面は蒼白で、冷や汗を浮かべ、男に掴まれた手は小刻みに震えていた。これで何もないというのならなんだと言うのだろう。
    けれど、場地も目の前で突然出くわした出来事に少し冷静さを欠いてしまっていた。
    男にそれらしい事を一方的に話し掛けられ、しかも男の言動はあまりにも普通過ぎたので、もしかしたら本当に一虎の知り合いなのか?男が言ってることは本当なのか?…と思ってしまったのだ。
    でも、どうしても男のきな臭さが抜けなかった場地は一虎からちゃんと直接話を聞きたいと思い、一虎を見つめながら名前を呼んだ。
    でも、一虎は一瞬口を開こうとしたものの、そのまま口を閉ざしてしまう。それどころか顔も見ないようにとぎゅっと下を向いてしまった。
    何も言葉を発さない一虎に場地は思わずイラッとした。
    ─なんでなにも言わないんだよ一虎!!?
    心の中で叫ぶが、勿論答えなんかは返ってこない。
    そうこうしている内に男は、それじゃあぼくたちはこれで…なんて言いながら一虎を連れてどこかへ行こうとしてしまう。
    ヤバい…と場地は思った。焦りが募るなか男に手を引かれるまま場地の横を通りすぎようとする一虎を場地はじっと見つめていた。
    するとそこでようやく少し上を向いた一虎と目があう。
    場地と目が合った瞬間、ハッと見開かれた目。その目には不安や恐怖がありありと映し出されており、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
    しかし一虎は目を合わせるつもりはなかったのだろう。射ぬくような場地の目線から慌てて目を反らし何を言うでもなく男に手を引かれるまま、とぼとぼと後をついていった。
    「…っ」
    ここまで来て何も言わない一虎に場地は訳の分からない感情に苛まれた。
    カッ!とした感情が一気に爆発する。
    その後は身体が勝手に動いていた。




    救急車で運ばれた一虎が処置を終えてこの部屋に運ばれてからかれこれ1時間ほど経つ。しかし一虎は未だ眠ったままだった。
    病院に運ばれた時の冷や汗を流しながらグッタリとしていた様子と比べると幾分顔色の良くなった頬へと手を伸ばす。
    処置をされた時に綺麗にしてもらったのか、嘔吐した跡や涙の跡は既に見当たらなかった。けれど、大量に流した涙のせいでその目の回りは赤く染まっていた。
    その痛々しい跡を場地はそっと親指の腹で撫でた。

    コンコン

    その時病室の扉を軽くノックする音が聞こえた。
    場地は慌てて一虎の頬から手を離す。
    ノックから一拍おいた後病室の扉が開かれた。少し焦りながら扉の方へ目を向けると男性の看護師が消毒液や点滴のパックやらを乗せた台車を押しながら病室に入ってくる所だった。
    ガラガラと音をさせながら近付いてきた看護師は慌てた様子で突っ立っている場地に優しく笑い掛けた。どうやらちょっとした検査かなにかの為に来たらしい。ちょっと友達の様子を診させてもらうね、と場地に伝えた後一虎の側へ台車ごと近付いた。
    未だ目を覚まさない一虎に対し看護師は慣れた様子で、一虎の左腕に繋がれている点滴の残りを確認したり、腕にばんどみたいなのを巻き付けて何かを測ったりしていた。その様子を場地は少し離れた場所から見つめていた。
    台車から体温計を取った看護師は体温を計るために一虎の服を少し寛げる。
    その時、ずっと閉ざされたままだった一虎の瞼がゆっくりと開かれた事に場地は気付いた。微かに開かれた瞼から見える蜂蜜色に場地はすぐにでも駆け寄りたくなったが、まだ検査の途中たったのでグッと耐えた。
    看護師も一虎が目覚めたことに気付いたようで、明るい声で一虎に呼び掛けた。ぼんやり虚空を見つめる一虎は自分の置かれている状況を分かっていないようでゆっくりと視線を周囲へと動かした。しかしそこで状況が一変する。ゆっくり動く一虎の蜂蜜色の眼球が側に立つ看護師の存在を捉えた瞬間、その顔を恐怖でひきつらせた。
    「は、……ぁ、っや………っ」
    先程までは静かすぎる位だった病室内に一虎のか細い声がこぼれ落ちる。
    「や…やだ……やだ…っ、……こないで……はっ……こっち、こないで……やだ…っ、やだ、や、だぁ……っ」
    一虎の突然の変化に看護師も場地も驚いた。
    カタカタ震えながら小さな声でうわ言のような言葉を繰り返している。
    どうやら酷く錯乱してしまっているようだ。一虎は看護師から距離を取ろうと身体を必死に後退りさせている。そのせいで腕に刺さっている点滴のチューブがピンと引っ張られる。周りが見えていないようで一虎の身体は今にもベッドから落ちてしまいそうだった。それに気付いた看護師が慌てて身体を支えに行くが近付くのは逆効果のようで、身体に触れられた途端一虎の身体は遠目に見ても分かるくらいビクリと跳ねた。
    一層恐怖で顔を歪ませた一虎は、看護師と自分の間に震える腕を入れ少しでも物理的な距離を取ろうと必死だった。
    ボロボロと涙を流しながら、やだ…やだぁ…と悲痛な声を漏らす一虎。その呼吸が次第に乱れていく。はっ…はっ、はっ、と浅くなるその呼吸音には聞き覚えがあった。
    ダメだ…。
    突然の出来事に何も出来ず呆然と立ち尽くしていた場地は咄嗟に思う。全身から嫌な汗がどっと出てくるのを感じる。
    数時間前の、道端での光景が頭の中に甦る。
    胃の中のものを全て吐き出して尚、苦しそうに胃の辺りを押さえながらうめく一虎の姿。場地の腕の中でボロボロと涙を流していたと思ったら前触れもなくプツリと回線が切れてしまったかのように意識を失ってしまった一虎。グッタリと動かなくなってしまった身体に場地は酷く動揺した。慌てて覗き込んだ顔は青を通り越し紙のように真っ白で、触れた頬と握った手は氷水をぶっかけられたみたいに冷たかった。そのあまりの冷たさに、あの時場地は一虎がこのまま死んでしまうんじゃないかと思ったのだ…。
    「……っ、一虎ぁっ!!」
    いてもたってもいられなくなった場地は思わず叫んでいた。錯乱してしまっている一虎に急に話し掛けて状況が余計悪くなってしまう可能性だってあった。けど、そんな事を考えてる余裕なんてなかった。
    場地はなりふり構わずベッドへと乗り出した。
    「!」
    虚ろな目で弱々しげに看護師を遠ざけようと抵抗していた一虎が場地の声に僅かに反応したのが分かった。それが分かった場地は続けざまに一虎の名前を呼ぶ。すると今度こそハッキリ場地の声が一虎の耳に届いたのだろう。一虎の顔がゆっくりと場地の方へと向けられた。
    真っ直ぐこちらを見た目が大きく見開かれ場地を捉える。
    真ん丸に開かれた綺麗な蜂蜜色。場地を捉えたその目からは今までとは比にならない量の涙が次から次へと溢れ落ちた。
    「………っ、ばじ…っ、ばじっ!」
    「!!」
    場地の名前を呼んだ一虎は震える手を場地の元へと必死に伸ばしてきた。その姿はまるで幼い子供のようだった。
    場地は名前を呼ばれた事にも自分へと伸ばされた手にも酷く驚いた。思っても見なかった反応だったから。
    その普段の一虎からは考えられないような姿に場地は胸を握り締められたかのような痛みを感じる。
    無意識にこの伸ばされた手を絶対に拒絶してはならないと場地は強く感じた。
    「一虎…っ、大丈夫、大丈夫だから…ゆっくり息しろ」
    迷う事なく伸ばされた一虎の手を取り、その身体を強く抱き締めた。場地の腕の中に引き寄せられた一虎は驚いたのだろう。息を詰めビクリと身体を硬直させる。しかし、それも一瞬の事ですぐに身体を弛緩させた一虎は有らん限りの力で場地の服を握りしめてきた。
    「ば、じ…っ、はっ…は、ば、じ…」
    「…大丈夫だから……オレはここにいるから…」
    場地の胸に顔を埋めながら止めどなく涙を流す一虎に自分の存在を伝えようと必死になって声をかけ続ける。
    しかし、腕の中にいる一虎の震えは一向に収まる気配がない。カタカタと身体を震わせる一虎は小さな声でこわいこわい…と繰り返した。
    怖い…その言葉を聞いた場地はすぐにその対象に思い至る。
    あの男の事だ…。
    場地は今の弱りきった一虎の様子に、一度見ただけの男に強烈な殺意を覚えた。あの男…再起不能になるまでボコボコにのしてやれば良かった、と狂気的な考えが浮かぶ。でも、今ここで後悔した所で意味はない。場地は自分の中に沸き上がってくる怒りを唇を噛んで耐えた。
    「…大丈夫だ一虎…ここは病院で、あの男はここにはいねぇから。だから安心しろ」
    錯乱してる一虎が理解しやすいように、一言一言区切るようにゆっくりと耳元で言葉にしてやる。
    場地の言葉を聞いた一虎がそろそろと顔を上げて虚ろな目でこちらを見上げてきた。
    その顔が本当に?と問い掛けていたので、場地は大きく頷いた。
    すると漸く安心出来たのか中々収まらなかった震えが次第に収まっていく。腕の中の振動が落ち着いていくのに比例して、場地を見詰めていた一虎の目が再びうつらうつらと微睡んでいった。一虎は限界だったのかそのまま場地にしなだれ掛かる形で完全に意識を手放してしまった。
    数時間前と少し似たような状況に場地は肝を冷やして慌ててその手とその頬に手を伸ばす。
    ─良かった…あったかい
    手のひらに伝わる仄かな温かさに場地は心の底からホッとした。
    場地は自分を落ち着ける為に、目を閉じてふぅぅ…と長く息を吐く。
    ゆっくり瞼を開き、目の前にある涙の筋がいくつも浮かんだ顔をそっと撫でた。
    その顔を見ながら場地は道端で倒れた一虎が気を失う前に漏らした言葉を思い出していた。
    『たすけて……』
    あの言葉が自分に向けられたものじゃない事に場地はなんとなくだが気付いていた。そもそも誰かに向けて発されたものではないのかもしれない。
    そう思わせる程に一虎の悲痛に歪んだ声は小さく今にも消え入りそうな声だった。
    その言葉を聞いた時、場地は苛立ちを感じる以上に無性に悲しくて仕方なかった。
    なんでこんなに近くにいるのに頼ってくれないのか。なんで、もっと自分に助けてくれと言ってくれないのか。
    自分は一虎にそれだけ信頼されてないのだろうか…と。
    でもだからこそ、先ほどの一虎の反応に驚いたのだ。
    自分を見とめた瞬間の一虎の表情。自分を呼ぶ声。必死に伸ばされた両手。
    今ここで一虎が頼れるのは場地しかいないのだ、と全身全霊で叫ばれているようだった。
    ズクリと這い上がる何かを感じる。

    正直オレはバカだから一虎が何を考えてるのかは分からない。
    デリカシーもないから人の相談に乗るのも正直苦手だ。
    けど、あんな迷子の子供のような顔を見せられて知らぬ存ぜぬでいれる訳がなかった。
    温かい…でも自分よりは体温の低い一虎の身体に自分の熱を分け与えようと場地はその身体をぎゅっと抱き締める。
    温かい体温に包まれた一虎の顔は、先ほどより幾分穏やかな表情を浮かべているように場地には見えた。
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