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    男主人公+シドー/ss
    えるしっているか ぽいぴくは文章も投稿できる
    画像っぽいところをクリックまたはタップすると読めるみたいです。

    ##dqb2_novel

    主人公とシドーが食事をとっているまものとの戦いのおりに、シドーの歯が抜けた。

    乳歯だったのだろうか。
    次の日見た時には、もう新しい歯が生えていて。ビルドはなんとなく、かじっていたパンを差し出して、食べる?と聞いた。





    シドーが食事を摂るようになると、ビルドも同席した。シドーは肉が好きそうな雰囲気を醸しているが、野菜や果物も好んで食べた。特に懇意にしている住人たちの手塩にかけた作物はよく眺め、味わって咀嚼する。肉もそうだ。シドーも家畜の世話は手伝っているので、色々と思うところがあるのかもしれない。
    咀嚼するところから、嚥下までなんとなしに眺めるビルド。自身の食事の手は、皿に乗ったトマトにフォークを突き立てたままとまっていた。ここにこの島の女王さまが同席していたら、はしたないわよ、と咎めていただろう。しかし、朝の緑の開拓地。僻地に建てられたこの家には、あたりまえのようにビルドとシドーのふたりしかいなかった。


    破壊神シドーは、それを信じるものの命がいちばんの好物だと聞いたことがある。


    「僕が死んだらさ、」

    シドーは先日もらったいちごジャムの瓶に手をかける。

    「食べる?」

    蓋をおさえて、

    ゆっくりひねると、抵抗もなく開いて、

    赤赤としたジャムが顔をのぞかせる。

    「……ハァ?」

    「何言ってるんだ、オマエ」

    「人間は死体じゃなくて、生きたまま食うのがイイんだ」

    シドーはたまに真顔でとぼけたことを言うが、これもそうなのか判断するよりも先に、なるほどなぁという念がビルドに去来する。

    「あのな…食わねーよ」

    質問の答えをやや不機嫌にかえすと、シドーはジャムをたっぷり塗ったパンをひとくち。

    ビルドは、そうか、とからから笑って。

    「僕も、生きたまま食べられるのはちょっとヤダな」

    とても美味しそうだったので、ビルドもパンにいちごジャムを塗ることにした。
    シドーが使ったあとの瓶ものは大抵、蓋がかたくて開けにくくなっている。ビルドは腕まくりをして、気合いじゅうぶんに瓶をつかんだ。


    おわり

    2023.6
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