分けられない物〜そして君はいなくなった〜
「君ばっかり狡いじゃないか」
ナム孤島の夕焼け空の下、ユーリとカロルの前で口を尖らせ、フレンは軽く親友を睨んだ。
ユーリはフレンのほしいものばかり見つけては取って行く。食べ物も剣も人も好んだ物全部、既にユーリの手中にある。
お互い半分に分け合っていた昔はそれでよかった。
分けられない物はユーリに譲っていた。
年を重ね、譲りたくないものが出来て、半分こは駄目になった。
「もう譲るのは嫌なんだ、今だって楽しそうに一緒に仮装して……」
「いや、罰ゲームだからなこれ」
「ユーリがジュディスに負けたからでしょ、ボクはただの巻き添えだもん」
「連帯責任だ」
冷静にユーリがツッコミを入れるがフレンの耳には入らない。
悪魔と天使のコスプレをして買い物に出かける、夕べの大富豪で首位が命じた罰ゲームの内容だ。
しかしフレンの目には、二人が悪魔と天使の仮装に扮して楽しくデートしている様にしか映らない。
「僕も君と一緒に……」
「えっフレン、ユーリと一緒にいたかったの!? ボク邪魔しちゃってた?」
「いや違」
「全然気付かなかったよ……ごめんね」
背中に付けていた天使の羽根をフレンに渡すカロルにユーリが口元を抑えて噴き出した。天使の仮装をする必要はないが、流れでフレンはそれを受け取った。
付けてあげる、と言うカロルの厚意に流され、屈んだフレンの背中に真っ白い一対の翼が生まれた。
「よく似合ってるよ! ね、ユーリ」
「ん、まあな」
「じゃあボク行くから。二人はゆっくりしてて」
フレンが一緒にいたかった相手は勘違いして帰ってしまった。たしかにユーリとフレンは親友として仲が良い、それを普段から知っていたカロルが誤解するのも……
「無理があるだろ」
「だな」
ユーリが悪魔の角を乱暴にむしり取り、フレンも羽根を数枚引き千切った。
お互い視線で牽制し合い、先にユーリが鼻で笑った。
「通じなくて残念だったな、フレン」
「まだこれからだよ。君の気持ちも伝わってないみたいだし」
「ハッ、やれるもんならやってみやがれ」
「遠慮しないよ。こればっかりは半分こに出来ないしね」
「よく言うぜ、昔みたいに譲りやがれ」
「嫌だね」
ユーリとフレンが火花を散らしてる頃、
「レイヴンただいま〜。これナム孤島のお土産!」
「あら、少年あんがとね〜。青年とはもういいの?」
「フレンがユーリに会いに来たから帰って来ちゃった」
ナム孤島からユウマンジュに帰ってきて、畳の上に寝そべっていたレイヴンに抱きついた。
そのまま、仲良くお土産を相伴する姿が女性陣に目撃されていたと言う。
2014.3