壊れた約束(あなたのために) ずっと一緒にいるから、そんな約束をしたのは、俺たちがまだ日東学院にいた頃だった。その言葉は存外にするりと出てきた。俺はギノを喜ばせたくて、彼の家庭環境を知ってそう言った。ずっと一緒にいるから、一人にはしないから、だから俺の手を取ってくれないか。そんなふうに、映画みたいな台詞を使った。今ではバカだったと思うがあの時は本気だったし、恋愛における約束というものは大体そんなものなのだろう。
俺がその約束を破ったのは、きっと執行官堕ちをしてからだ。もしあのまま、平穏なまま時が過ぎ去っても、一生執行官として生きるしか術がなかった俺と、公安から厚生省に上がる約束があったギノじゃあ上手くはいかなかっただろう。青柳とその恋人がそうだったように、俺もあんなふうに終わっていたかもしれない。俺の場合は槙島がそうさせたが、また違った事件で独断専行をして、彼から離れたかもしれない。そして今は海外を放浪している。これじゃあ一緒にいるどころか、他の国に渡航してしまって同じ言葉も喋れない。
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