『頼む九郎、迎えに来てやってくれ』
握野さんからのLINKに、急いで指定された店へ向かう。
事務所近くのその店は、315プロダクションの成人勢がよく通う小さな居酒屋だった。
「お疲れさまです」
「おー!九郎!よく来たな!」
小さく会釈すると、天道さんの陽気な声が店内に響いた。
座敷の下座に座っていた握野さんと目が合う。
少し困ったように笑って、こちらに手招きをした。
「ごめんな九郎、急に呼び出したりして」
「いえ、大丈夫です。ちょうど事務所に居りましたので」
とりあえず上がれよと握野さんに促され、私はこの席に混ぜてもらうことになった。
「あ!きよすみ!きよすみだ!!」
「見ての通り、龍が変な酔い方しちまってるんだ…」
木村さんは満面の笑みでこちらに手をぶんぶんと振っている。
隣りに座っている信玄さんも苦笑いだ。
「普段ならここまで飲まないんだけどさ、なんか今日は様子が違っててさ…」
手に負えなくて九郎を呼んじまった、悪いな。そう言って握野さんは頭を掻く。
「きよすみ、なあ!こっち来いよ!」
完全に酔っ払っている木村さんに熱烈に呼ばれている。
半ば無理やり手を引かれて、私は木村さんの席に呼ばれてしまった。
「ほら、きよすみはここ。」
「き、木村さん!」
座らされたところを背中から抱き込まれる。
人前だというのに木村さんは一切気にしていないようで、後ろからハグされるような体勢になってしまった。
「木村さん、皆さんの前ですから…!」
「おっ、熱々だな!」
天道さんはからかうように笑う。
人前でこんなに触れ合うことがない私は木村さんの行動に驚いてしまい、軽くパニックになってしまったのだった。
.