最寄り駅の改札を出て、二人でエスカレーターを下る。
今日は清澄が俺の家に泊まりに来る日だ。
久しぶりにふたりきりで過ごせるオフに心が踊る。
清澄が泊まるのに不足しているものはないだろうか…頭の中で一つずつ挙げていく。
…あ、“あれ”が無いかもしれない…
清澄に了解を取って、俺たちは駅前の薬局に入ることにした。
「えーと、体温計…じゃない、絆創膏…でもない…」
目当ての品物がどこにあるか分からず、とりあえず片っ端から陳列棚を確認する。
「何をお探しなのですか?」
「ん、内緒」
清澄に伝えるわけにはいかない。気づかれずに買う…のは無理だとしてもなるべく見せないようにしないと。
「あ、」
あった。
それは奥の方の棚のにこじんまりとコーナーが作られていた。
迷わずに俺はいつも使っているメーカーの箱をひとつ手に取る。
よし、さっさと会計して帰るぞ。
「ありましたか?」
「わ!」
不意に清澄が横から覗き込んでくる。
俺はめちゃくちゃ驚いてしまって、手元にあったその箱を床に落としてしまった。
「驚かせてすみません、私が拾いますね」
「あー!きよすみ待って…!」
俺が止めるのも聞かず、清澄は小さな箱を拾い上げる。
そして、その品物がなにかを理解した瞬間、清澄は硬直してしまった。
ほら!だから言ったのに!!
煙草のパッケージほどの小さな箱は、耳まで赤く染まった清澄の手元でぎらぎらと蛍光灯の光を反射させていた。
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