「わあぁああぁ!!」
背後から大きな声がして振り返ると、そこには足を滑らせた木村さんがこちらに向かって倒れてきた。
「き、木村さん……!」
これはぶつかる、と思い反射的に目を瞑る。
身体が大きく傾き、頭から事務所の床に叩きつけられる―――と思いきや、その衝撃は想像していたより小さいものだった。
恐る恐る目を開けると、視界には事務所の天井と木村さんの黒い上着が広がっていた。
頭には大きな手が添えられており、直接床にぶつかることはなかったようだ。
「ごめん清澄!怪我とかなかった!?」
「は、はい、大丈夫です…」
腕に抱き込まれるような形になった私はどうしていいかわからずあわあわと慌てふためいてしまう。
か、顔が近い…
木村さんに巻き込まれた形だけれど、咄嗟に私を庇ってくれる彼の優しさを身に沁みて感じる。
そして、不運とはいえこうして抱きとめられたことに少しの喜びを感じてしまうのであった。
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