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    oct_summer_moon

    @oct_summer_moon

    文章練習頑張りたい。基本オクライばっか書きます

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    oct_summer_moon

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    なるべく毎日かこうという自主練その4。ゲームをする幼少期のオクライ(とその後)の話。ゲームに既視感がある?最近プレイしてるからね。ついね。

    ぼっこぼこ「オー。頼んでいたやつ、買ってくれた?

    「ああ、もちろんだぜ、アジャイ!」

     俺の部屋の扉を閉めるなり、アジャイは間を置かずに問いかけてきた。俺が準備していた物を取り出すと、アジャイは俺の手からそれを強奪して、真っ先に俺の部屋にあるテレビへと駆け寄る。
     それは俺のゲームなんだけどな、なんて思いながらもそれを咎めることはしない。彼女にとって唯一ゲームをすることができる空間がこの場所、俺の部屋だけだと知っているからだ。
     俺たちはそこそこの家の生まれだ。そう言われると欲しい物何でも手に入ると思われることもあるだろうが、実際はそんなに甘くない。それぞれの家庭の教育方針によって、手に入る者は大きく制限される。アジャイの家は娯楽に関するものは徹底的に親に管理され、自宅でゲームをプレイすることができない。その点、俺の家では比較的その辺は自由だ。なので、アジャイが気になるゲームがあれば俺が購入し、アジャイは俺の家でプレイするというのが俺たちのスタイルとなっていた。

     アジャイが今回プレイしたいといったのは、最近子供の間で人気のアクションゲームだ。難易度は子供向けに設定されていてファンシーな世界観だが、深掘りするとよく寝られた世界観がクセになると、大人からもコアな人気がある作品だった。その最新作をプレイしたいとアジャイは俺に頼み込んだのだった。

    「オー!早くプレイするよ!」

     ゲームをセットしたアジャイは早くもコントローラーのスタートボタンを押して準備完了をしている。マルチプレイ対応だということで、今回は俺も一緒にプレイするようだ。
     こちらを振り返っているアジャイの瞳は、テレビの中のファンシーなキャラクターの瞳と同じく、まるで星がきらめくように輝いていた。
     アジャイに促されるまま、俺は自分のコントローラーを握る。正直、こういうタイプのゲームは俺の趣味じゃない。それでもアジャイが楽しめるのが一番の楽しみと言っても過言ではない俺は、このゲームを少し楽しみにしていた。

     ゲームを進めるたびに、アジャイは登場キャラクターたちに感情移入していった。特にアジャイのお気に入りは、今作の新キャラクター。故郷に帰るために主人公に助けを求めたかわいい猫のようなキャラクターに体操ご執心だった。事あるごとに可愛い可愛いと話しかけ、そのキャラクターから少々うざがられている様子だった。
     俺はと言うと、なんとなくそのキャラクターが好きになれなかった。その理由はわからなかったが、なんとなくそいつが信じきれなかったからかもしれない。後半になっていくとそのキャラの言動は明らかにおかしくなっていくのだが、純粋なアジャイはそれに気づいていないようだった。

     最終決戦。ついに本性を表したそのキャラクターに、俺は特になんの驚きもなかったが、隣のアジャイは口を大きく開けて目を瞬かせていた。画面上のキャラクターと同じ表情に少し笑いが漏れるが、同時に心配にもなる。あれだけ大事にしていたキャラクターだ。相当なショックだっただろう。しばらくするとアジャイは俯き、肩を震わせてしまった。

    「あ……アジャイ……?」

     泣いてしまったと思ったアジャイに手を伸ばすと、彼女はバット顔を上げ、その眉を吊り上げた。

    「騙してたのね!!」

     ゲーム内のキャラクターに思いっきり怒りを顕にしたアジャイは、コントローラーのボタンを押してストーリーを進める。

    「裏切ったなんて!!許せない!!!オー!!ボコボコにするわよ!!」
    「アジャイ!?」
    「さっき言ってたでしょ!この子。ドラゴンをボッコボコのコテンパンにしてって!今度はこっちの番よ!!!」

     アジャイは鼻息荒く、次々にボスキャラを倒していく。先程までののんびりしたプレイとは違い、どこか荒っぽく、そして勇ましくゲームを進めていく。
     そしてついにラスボス戦。先程の宣言通り、一切の手加減なしにそのキャラクターをボコボコにする。本当に隙がない。容赦がなかった。

    「はースッキリした!!可愛さに騙されちゃダメよね!」

     まだどこかプリプリと頬を膨らませながらエンドロールを眺めている。それでもよほど楽しんだのか、コントローラーを手放す様子はなかった。

    「オー。まだ時間あるわよね?ミニゲームと高難易度モードもクリアしましょ!!」

     ノリノリのアジャイはまだこのゲームを遊び尽くすつもりらしい。断る理由もなかった俺はそれを快諾し、その日は日が暮れるまでずっとゲームをしていたのだった。

    ☆★☆

    「裏切ったのね」

     その声はどこか震えていた。似たようなことがあったな、なんて。遠い過去を思い出した。もちろん、そのときはその言葉を向ける相手は俺ではなかったが。

    「あんたがそう思うなら、そうなんだろうな」

     俺の言葉にアネキの表情は歪む。初めて向けられたその感情に、ちくりと何かが痛む感覚がした。
     俺とアネキの道は違えてしまった。それを裏切りと言うならそうなのかもしれない。どちらの道が正しいのか、それはまだわからない。アネキが正しいかもしれないし、もしかしたら俺のほうが正しい可能性もある。それは誰にもわからない。でも、目指す先が違うのだけは明確だった。
     アネキは強い。裏切り者でも、自分の信じた道を進むために、そいつを切ることができる。乗り越えることができる。俺がいなくても、きっと大丈夫だ。

    「いいぜ。あんたが俺を許せないってんなら、自分の手で俺を止めるんだな」

     俺は彼女に背を向けて歩みだす。彼女が怒りに震えているのは見なくてもわかった。

    「いいわよ。分かったわ」

     彼女は今まで聞いたどんな声よりも大きく力強く答えた。

    「あんたをボッコボコのコテンパンにしてやるわ!」
    「やってみな。楽しみにしてるぜ」

     ああ、彼女は本当にやるだろうな。こんなときでも何故か俺の口元は弧を描いてしまっていた。
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    oct_summer_moon

    TRAININGなるべく毎日かこうという自主練その4。ゲームをする幼少期のオクライ(とその後)の話。ゲームに既視感がある?最近プレイしてるからね。ついね。
    ぼっこぼこ「オー。頼んでいたやつ、買ってくれた?

    「ああ、もちろんだぜ、アジャイ!」

     俺の部屋の扉を閉めるなり、アジャイは間を置かずに問いかけてきた。俺が準備していた物を取り出すと、アジャイは俺の手からそれを強奪して、真っ先に俺の部屋にあるテレビへと駆け寄る。
     それは俺のゲームなんだけどな、なんて思いながらもそれを咎めることはしない。彼女にとって唯一ゲームをすることができる空間がこの場所、俺の部屋だけだと知っているからだ。
     俺たちはそこそこの家の生まれだ。そう言われると欲しい物何でも手に入ると思われることもあるだろうが、実際はそんなに甘くない。それぞれの家庭の教育方針によって、手に入る者は大きく制限される。アジャイの家は娯楽に関するものは徹底的に親に管理され、自宅でゲームをプレイすることができない。その点、俺の家では比較的その辺は自由だ。なので、アジャイが気になるゲームがあれば俺が購入し、アジャイは俺の家でプレイするというのが俺たちのスタイルとなっていた。
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