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「阿絮ーーー!?ちょっ!何やってんのっ?!?!」
「うるさいな、あっ返せっ!」
朝、結い上げた髪に簪を挿す。一般的にはごく普通の光景だ。しかし阿絮がそれをするのは稀で、ましてや手にしているものは…
「こんな危ない物を髪に挿そうとする方がおかしいでしょ」
阿絮から取り上げたのは簪の形をしていた武庫の鍵だ。
雪がが溶け、ようやく陽の光を浴びるのことができるようになったとたん、阿絮はずっと武庫の周りを散歩していた。阿絮に着いていくのは私の日課だから日向ぼっこが好きなはずの彼が足下しか見ない『散歩』を妙に思っていた。そんな日が何日か続き、偶然この武庫の鍵を見つけた。見つけた時の阿絮といったらもう………
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