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    #鍾タル
    zhongchi

    散る紅葉の中を、ただどこまでも歩く。けれど季節は巡らず、白の大地にたどり着くこともない。
    「戻る道などないぞ」
    「やだなあ、分かってるよ」
     文字通り雲の上のひとだと思ってたのに、神隠しなんて安いことするなあ。



     触れた頬が既に冷たいことも、流れ落ちることなく凍ったのであろう命の色も……ああ、これが末路かと息をついた。
    「せんせ、大丈夫?」
     大丈夫ではない。なにせお前の死を悲しんで……ん?
    「その人は俺の影武者。あーあー無残にやられちゃって、これは仕返しが必要だなあ」
    「……なぜそんなものを準備した?」
    「いや? 先生が悲しんでる隙に襲ったらどうなるかなあと。まあやめたんだけどさ」
     言って、指の隙間から武器を霧散させて──公子殿はにやりと笑う。
    「先生、そんな顔もできたんだね」


     人は地に足をつけて歩く生き物だ。道具や特殊な方法で飛ぶことこそできるが、基本的には重力に抗うことはできない。
     ならば、と空を見上げる。流れるひとすじの光は、いつかどこかで聞いた話によれば──地に着くことはあまりなく、空中で燃え尽きるものばかりだ、と。
     だからこそ、惹かれたのだろうか。そうかもしれない。手に入らないものほど価値があるように思えるのは、きっと人も神も同じだろう。
     だが、いつか。己はそのきらめきを掴むのだ。そして永遠に、燃え尽きなどさせるものか。
     ……ああそうだ、彼の命の輝きが好きだ。無理に手中に収めれば、消えてしまうであろうそのうつくしさを。
    「あいしている、からな」
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    hiwanoura

    DONEパティシエのタルタリヤと大学の先生をしてる鍾離先生の現パロ。鍾タルです。捏造しかないので要注意。(Twitterに上げていたものと一緒です)
    パティシエのタルタリヤと大学の先生な鍾離のお話①ふわり、と。
    鼻先を掠めた匂いに思わず顔を上げる。会話も、物音も少なく、かすかに聞こえるのは紙の擦れる僅かな音ばかりの図書館にはあまりにそぐわない、甘い匂い。それは書物へと没頭して、つい、食事を忘れがちな己の胃を起動させるには十分なものだった。壁にかかるシンプルな丸時計を見るともう昼はとうに過ぎ、どちらかと言えば八つ時に近い。なるほど、甘いものを食べるにはちょうどいいな、と。昼食すら食べてないことからは目を背け、手にしていた本を棚へと戻した。
    さて何が食べたいか…足音を飲み込むカーペット素材の床を踏み締めつつ、書籍で埋まる棚の間を進む。平日の昼間なせいか自分以外の人影を見かけなかったのだが、知らぬうちにもう一人、利用者が増えていたらしい。珍しい、と。なんとなしに興味が引かれ、知らず足が向く。こちらの事など気がついても居ないのだろうその人物は、立ったまま手にした本を熱心に読んでいた。赤みの強い茶色の髪の下、スッと通った鼻筋と伏せられた目を縁取る長い睫毛。恐らく自分よりは歳若いその青年は、特に目立つ格好をしている訳でもないのに、何故か無視できない存在感があった。ここまで気になるという事は、もしかしたらどこかで会った事のある同業者か…生徒の一人かもしれない、と。記憶の中で赤毛を探すが残念ながら思い当たる人物はみつからず。知り合いでは無いのならばあまり見ていては失礼にあたる、と無理やり視線を剥いで、青年の後ろを通り過ぎた。
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