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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第二十九回 お題:「雨宿り」「兄弟」
    司視点 両想い
    20分オーバーしました

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    「うわ、凄い雨だな…」


    薄暗い空から降り注ぐ大粒の雨に辟易しながら、傘を広げた。

    朝からずっと雨予報となっていた今日は練習も中止になってしまい、休日だったことも相まって突如暇となってしまったので、気晴らしにと外に出かけることにした。

    雨が降るとはいえ四六時中大雨が降るというわけではなく、強くなったり弱くなったりを繰り返しているから、合間に移動をすれば、と考えていたけれど、そう都合よく弱まるわけがなかったなと思いながら雨の中をゆったりと歩く。






    その時。視界に、不安そうな顔が写った。


    思わず足を止めて、そちらを見る。
    しまっている店の前で雨宿りをしながら不安そうな顔で空を見上げている、小学校低学年くらいの男の子の姿があった。
    そして、彼のその手には、折れてボロボロになった傘が鎮座していた。





    「…なあ、君。傘、壊れちゃったのか?」


    いてもたってもいられず、声をかける。
    ずっと不安だったのか、見上げるその目には、涙が浮かんでいた。


    「…うん」
    「お母さんや、お父さんは?」
    「いない。僕、お使いとお迎えに行ってるの」



    「お使いと…迎え?」
    「うん。弟の、お迎え」

    早く行かないと泣いちゃうのに、と壊れた傘を握り締めている。
    壊れても止んた間に、と思っていたが、全く止む気配がないから不安だったそうだ。


    そんな、不安そうな顔が。
    昔の、自分と重なった。







    「…よかったら、これを使うといい」
    「え、でも…」

    「この後友達と待ち合わせしているから、その人に入れてもらう!だから、弟を早く迎えにいってやってくれ!」


    だって君は、お兄ちゃんなんだろう?

    そう言うと、目に浮かんでいた涙を拭って大きく返事をすると、お礼をいって走って去っていった。





    走っていった姿を見送って、ホッと息をついてから、空を見上げる。
    同じ「お兄ちゃん」だからこそ、彼のことは応援したかった。
    友達が来るなんて嘘をついてしまったが、後悔はなかった。



    ふと、前にあったことを思い出す。
    雨降りの中、偶然にも出会った類に、話したこと。

    迎えにきた子が羨ましくて、寂しくて。
    その思いを、「兄だから」という理由で封じていたと気付いた、あの日のことを。

    結局、お礼も何も言えないまま別れてしまって。それからは、変わらない関係を築いていた。




    (まさか今回は送り出す側になっちゃうなんてなあ)

    苦笑しながら、更に雨量が増した空を見上げる。









    …類、なら。

    寂しいということを知った類なら。
    迎えに、きてくれないだろうか。


    いつの間にか寒さでかじかんでいた手でスマホを開く。
    震える手を抑えながら類の番号を選び、通話ボタンを押す。

    ルルルルル…ルルルルル…と、暫し呼び出し音が鳴った後、ガチャリと音が鳴る。



    「!る」
    『ただいま、電話に出ることができません』
    「あ」

    出なかったか…と、思わず肩を落とした。
    きっと機材の作成が忙しいんだろう。仕方ない。

    『ピーという発信音の後に、お名前ご要件を、お話ください』
    「!これだ…!」

    留守番電話!
    これに残しておけば、気づいたときに来るかもしれない!





    ピー、と音が鳴ったのを確認し、すーはー、と深呼吸をする。
    初めて甘える形になるのだ。時間がかかっても許して欲しい。そう思ってしまう。


    「……類。…迎え、きてほしい。場所は」
    ブツッ


    「……え」
    鈍い音が響いて、電話が切れる。
    慌てて画面を見ると、スマホが充電切れになってしまったのか、うんともすんとも言わなくなっていた。

    「充電、されていなかったのか…!?」

    思わず頭を抱えてしまうほどの失態だ。
    そうしている間にも、空からは更に大粒の雨が降り注いだ。





    ----------------------





    あれから、どれくらい経っただろう。
    少なくとも日は落ちてしまい、辺は暗くなっていた。

    結局雨足が弱まることもなく、むしろ強くなった風のせいで、下半身はもうびしょびしょに濡れている。


    初めは寒さから手をこすり合わせていたが、それさえもできなくなるほど、疲弊していた。
    思考が、鈍る。何も、考えたくない。

    考えれば、公衆電話を見つけたり、もっと広い雨宿りポイントなんかにも移動することができただろう。
    でも、それをしなかったのは。









    信じて、いたかったからだ。類のことを。

    場所も伝えられなかったから、来なくてもおかしくはないと言われればそれまでだろう。

    でも。


    きっと、類は来てくれる。
    その思いだけで、ずっと待っていた。








    ゆっくりと、空を見上げる。
    もう暗すぎて、空がどこかなんてわかったもんじゃない。
    そんな空から落ちる雨粒も、大きさも変わらずに降り注いでいた。

    上を向いているのが辛くなり、視線をそっと地面に落とす。
    そしてそのまま、目を閉じた。

    ざあざあという音だけが、耳を支配する。
    天気予報で言われていただけあって、そばを通る人もいない。
    本当に、一人ぼっちだ。



    「…あーめあーめ、ふーれふーれ…かーあさーんがー」


    あの日と同じ、曲を紡ぐ。


    「じゃーのめーとおーむかーえ…うーれしーいなー…」




    ぼんやりとした視界の中、紡がれる歌は雨にかき消されて、もう何もわからなかった。














    筈、だった。






    「…さくん!…司くん!」


    「……へ?」


    耳に届いた、待ちわびたその声に、目を見開く。

    辺りを見渡しても、暗い通りしか見えない。





    夢、か?幻聴、だったのか?

    ……否。






    遠くからバチャバチャと音を立てて、此方に向かっている影が見える。

    盛大に息を切らして此方にきたのは。
    正真正銘、待ちわびていた、類その人だった。



    「る…………類っ!」

    待ちわびていたその姿に、思わず屋根から飛び出す!

    此方に向かっている類が、びっくりした様子で更に急いでいたけれど、気にしない。


    そのまま俺達は勢いのまま、抱きついた。



    「…っのバカ司くん!なんで屋根から飛び出して……え、司くん…?」

    類の声を無視して、抱きしめる腕の力を強める。

    待ち望んでいた、声と暖かさが、ここにある。
    なんて、幸せなんだろう。


    慌てた類の声をBGMに、オレの意識はぷつりと切れた。










    ----------------------







    「…それで?弁解することは?」
    「ありません本当にごめんなさい」

    布団の中で頭を下げるオレに、類はため息をついた。



    あれから気が付くと、類の部屋で寝込んでいた。
    まだ微熱が残っているが意識ははっきりしている俺に、類は説明してくれた。


    咲希から寧々経由で、オレが帰ってこない。電話も通じないと、ヘルプが届いたそうなのだ。
    寧々もオレ同様電話をして留守番電話になったから、家に直接出向いて説明したらしい。
    家がお隣さんだからこそできる芸当だ。


    思い当たる場所を手分けして探し、連絡を取り合っていた最中、俺からの留守番電話に気づいたらしい。
    途中で切れてしまっていたが、オレが深呼吸している間の人の声や建物から漏れ出た音からおおよその場所を探り当て、ここまで来たらしい。


    なんという推理力。



    ちなみにオレはというと、ずっと寒い中にいたことも相まって案の定風邪をひいていたらしい。
    それも込で、類には説教をされた。



    治ったら説教の続きをやるからと、布団に寝かされる。
    類の匂いがする布団に、改めて安心感を感じる。



    「…る、い」

    「…ん?どうしたんだい?」

    首を傾げる類に、これだけはいわなくてはと、回らなくなってきた呂律をどうにか回して言葉を紡ぐ。



    「み…っけて…くれて……あり、がと…」

    類は目を見開くと、仕方ないといったようにため息をつきながら、頭を撫でてくれた。


    「今度からは、もっと早く連絡してね。絶対に早く見つけてあげるから」


    その言葉に安心感を抱きながら、オレの意識は途切れていった。
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    サンプル6P+R18シーン4P

    冒頭導入部とエッチシーン抜粋です🫡❣️

    あらすじ▼
    類のガレージにてショーの打合せをしていた2人。
    打合せ後休憩しようとしたところに、自身で発明した🌟の中を再現したというお○ほを見つけてしまった🌟。
    自分がいるのに玩具などを使おうとしていた🎈にふつふつと嫉妬した🌟は検証と称して………

    毎度の事ながら本編8割えろいことしてます。
    サンプル内含め🎈🌟共に汚喘ぎや🎈が🌟にお○ほで攻められるといった表現なども含まれますので、いつもより🌟優位🎈よわよわ要素が強めになっております。
    苦手な方はご注意を。

    本編中は淫語もたくさんなので相変わらず何でも許せる方向けです。

    正式なお知らせ・お取り置きについてはまた開催日近づきましたら行います。

    pass
    18↑?
    yes/no

    余談
    今回体調不良もあり進捗が鈍かったのですが、無事にえちかわ🎈🌟を今回も仕上げました!!!
    色んな🌟の表情がかけてとても楽しかったです。

    大天才小粒まめさんとの合同誌、すごく恐れ多いのですがよろしくお願い致します!
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