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    3iiRo27

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    3iiRo27

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    ritk版深夜の60分一発勝負
    第百一回 お題:「絹製品」「ぬいぐるみ」
    自身の親を見習って、未来を見据えたプレゼントを贈ろうとする司のお話。
    司視点、途中から類視点

    #類司
    Ruikasa
    #ワンドロ

    ずっと、傍に。「はい、ではこれで終了です。ありがとうございました」


    「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」




    色んな人が、達成感や成長を感じている中。

    オレはただ1人、やりきったように息を吐いて、グッと手を握った。





    (やった……。やりきった……!やっと……!)





    表情に出ないように気をつけながら、同じエキストラだった人達に挨拶をして、足早に更衣室に向かう。





    (やっと、目標までいった……!)




    強い達成感と同じくらい、強く残る疲労感から目を逸らしながら。

    やりきった自分を、褒めたたえた。







    ----------------------------







    そのきっかけは、なんてことない。

    何時も通りの日常の中で、オレの目に入ったものがきっかけだった。





    「……あ、これ……」


    仕事で忙しい母さんの代わりに家事をやっていた時に、目に入ったもの。

    それは、室内に大切に干された、一枚のストールだった。





    これは、ただのストールではない。
    ある年の結婚記念日に、父さんが母さんに送ったものだ。


    絹製品であるそれは本当に肌触りがよく、母さんはそれを本当に大切に使っている。

    昔見たときはもっときれいだったけど、紫外線に弱いから若干変色はしてきていた。
    それでも母さんは捨てることなく、家の中でだけ使うくらいには、大切にしているのだ。




    (……いいなあ)

    1つのものを、大切に使っていくのは、そう簡単なことではない。

    大変ではあるけれど。それでもきっと使ううちに、愛着が沸くもの、だったりするんだろう。





    そう、思ったら。













    (……類にも、あげたいな)




    そう、強く思った。


    いつかは、互いに夢の道に進むことになる。

    もしかしたら、寧々と同様に、海外にいくことも、あるかもしれない。



    そんな、いつ離れてしまうかもわからない今だからこそ。


    類との繋がりが感じられる、ずっと傍に置いておけるものを、渡したくなった。







    ----------------------------







    雑誌と睨めっこしたり、お店を覗いたりと色々した結果。

    理想通りの商品は見つかったのだが、1つ問題が発生した。




    それは、金額と、時期。




    それなりに値が張るそれは、オレでも流石に簡単に出せる金額ではない。

    しかも、その商品は期間限定らしく、受付はあと数日。
    それ以降は、当分売られなくなってしまうものだそうだ。





    期間限定で、金額も足りない。


    オレの頭を悩ませたその2つの問題は、あっさりと解決することができた。





    とりあえず商品自体は、貯金を切り崩して買う。

    ただ、この貯金は無駄遣いを防ぐため、現在の金額を通帳で報告しないといけない。
    だから、商品を買った後の、次の報告までに、お金を集められれば良いのだ。


    貯金を使っても、同等の金額を集めることができれば、怒られることはない。

    その代わり、タイムリミットは、1月だけ。



    だから今月だけは、できるだけお金を集めることができるよう、限界までバイトを入れた。




    かなり大変だろうと、思ってはいたけれど。


    類の為に、絶対に渡したい。




    その一心だけで、その1月は、頑張っていた。





    そうして、頑張った1月。


    類達には、予定が山ほど入っていることを怪訝に思われたけれど。

    どうにか誤魔化して、理由を隠したまま、お金を集めることができた。

    商品も無事郵送され、受け取ることができた。






    やっと、類にプレゼントができる。















    そう思っていたのに。

    現実は、そう甘くはなかったようだ。











    ----------------------------








    「……司くん!!!」

    「っ!?る、類!?なんでここに……!」

    「レンくんから教えてもらったんだ。司くんの様子がおかしいって……」




    ぜえぜえと、乱れた息を整える。

    慌てて出てきたから髪を整える暇もなかったし、汗もびっしょりだ。


    ところどころ白いそれで覆われた司くんは、申し訳なさそうに僕の汗をふてくれた。






    鼻につく、消毒液の匂いと、目が痛くなるような、真っ白な部屋。

    そう。そこは、病院だった。






    司くんの姿を見て、安心して力が抜けてしまった僕を傍に座らせて、司くんは説明してくれた。




    最後のバイトも終わり、帰ろうとしたその時。

    突然襲撃してきた女の人に、物を投げつけられたそうだ。



    司くん自身も後から聞いた話だそうだけど、その人はエキストラのうちの1人の、結婚相手だったらしい。

    でも、結婚する前に問題を起こしていたみたいで、婚約破棄を言い渡したところ
    逆上して襲撃してきた、ということだったらしい。



    自暴自棄になっていた彼女は、傷つけられるのなら誰でもと、手当たり次第に物を投げていたらしい。

    そして司くんは、そんな物から、近くにいて動けなくなっていた女性キャストさんを庇ったそうだ。

    顔を守る余り、腕や下半身が疎かになってしまったので、ダメージを負ってしまったそうだ。




    そう言うと、司くんは切腹しそうな勢いで頭を下げてきた。




    「すまん、迷惑をかけてしまう。服の下だから隠れるとは思うが、激しいものはできないかもしれなくてな……」

    「迷惑なんかじゃないよ。今回は君は巻き込まれた側じゃないか。」

    「……だが……」



    それでも、と続けようとする口に、僕は指を添えて抑える。




    「どうしてもというのなら、答えてほしいな」

    「……え?」

    「最近忙しそうにしていたのは、どうしてだい?」




    目を見開き、ひゅ、と変な音を立てた司くんに、僕は続けた。







    「ごめん、このタイミングに託けて、聞いてしまって。どうしても、聞きたくて」

    「…………」

    「……今回の怪我。受身を取れるようなものもあったけれど、上手くできてないとこもあるよね。」

    「えっ」



    何故類がそれを、と言いたそうな顔だ。

    そこは誰にも聞いていないけれど、怪我の範囲は既に聞いているのだ。
    そこが、受身を取れる場所が取れない場所かなんて、すぐにわかる。




    「普段からずっと演出を試してもらってるんだ。見ればわかるよ」

    「…………」

    「……なんで、受身を取れなかったか。司くんの疲れが、取れていないからだろう」




    話を聞いてる限りでも、空いている日はどこなんだと思うくらいには、ギチギチに詰まっていたのだ。

    短気なのかどうかは知らないが、確実に身体にガタは来ているだろう。



    そう思いながら、改めて「どうしてなんだい?」と問いかける。

    すると司くんは、申し訳なさそうに、鞄を漁った。






    「……すまん。……類に、これを渡したくて、な」

    「……これ?」



    首を傾げる僕に、1つの箱が手渡される。

    片手に収まるほどの大きさのそれを受け取ると、それは大分軽かった。


    そっと開けてみると。









    ペンほどの細さだが、長さは半分以下。

    濃い、暗めの紫の地に。

    綺麗に輝くものが、特定の形を作って、鎮座している。




    そう。これは、





    「……ネクタイ、ピン?」

    「ああ。ペガサス座が刻印された、ネクタイピンだ。」



    よくよく見ると、ペガサス座の部分には小さく光る何かが埋め込まれているようだ。

    いや、それを抜きにしても、色といい質感といい、これは。




    「あの、司くん。これ、かなり高いんじゃ……」



    入れ物からしても、明らかに普段送り合うようなプレゼントじゃない。

    そう思いながら言うと、司くんは頷きながら、言った。




    「ああ。安い買い物ではなかった。でも、だからこそ類にあげたくてな」

    「?それって、どういう……」




    「オレの家族は、記念日に物を送りあっていてな。それを、本当に大切に使っているんだ。」

    「これから先、俺たちはずっと傍にいることはできない。互いに仕事もあるし、地方にも、海外にも行くかもしれない。」





    「でも、これを持っていてくれるのなら。大切にしてくれるのなら。ずっと俺たちは繋がっていると、そう言えると思うんだ!」




    そう話す、司くんはとても眩しくて。

    ポロポロと流れるものを、止めることができなかった。




    「……あり、がとう。司くん」

    「どう致しまして。……オレこそ、迷惑かけて、すまないな」

    「そんなこと言わないで。とっても嬉しいんだから。……そうだ。」



    思いついたそれに、司くんは首を傾げながら見つめてくる。

    そんな司くんに、僕はにっこり笑いながら、伝えた。




    「僕も、司くんに負けないくらいの、大切にして欲しいもの。送るから、覚悟しておいてね?」









    僕が送りたかった、大切にして欲しいもの。


    オーダーメイドで作ってもらった、最高の触り心地を実現した、抱き枕サイズのカモノハシのぬいぐるみ。そして、同じ素材でできたキーホルダー。

    キーホルダーとぬいぐるみなら、どこにいても傍に入れるし、なんならセカイにも出てきてくれるかもしれないね?



    そう、笑顔で伝えて。

    真っ赤な顔をした司くんに、力のこもってないパンチを食らうまで、あと。
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