ずっと一緒にいれますように))「……司くん、大丈夫かい?」
「う……うむ……」
眠そうに眼を擦る司くんの頭を撫でながら、その手にホカホカのコーヒーを手渡す。
ふうふうと息を吹きかける司くんを見つつ、そっとスマホを開く。
そこには、普段の司くんでは考えられないような、遅い時間が表示されていた。
えむくんにもらった、星がよく見えると評判の宿。
ちょうど流星群の日とも被ったことも相まって、こうして外で待っているのだけれど。
(……やっぱり、司くんはしんどいよねえ)
現在時刻、深夜1時。
年越しでやったショーの時なんかでもとても眠そうにしていたのだ。
元々夜更かしはあまりやってこなかったのだろう。
それでもどうにか見ようと、目を擦ってでも起きようとするその姿に、愛しさが止まらない。
「司くん、無理しなくてもいいんだよ?」
「うう……い、いやだ……」
「司くん、そんなに流星群見たかったのかい?」
そういう僕に、司くんは首を横に振る。
首を傾げる僕に、司くんは口を開いた。
「……大学」
「え?」
「大学、いったら……こうして、2人で過ごすことも、少なくなるし……少しでも、思い出を作りたい……え?」
司くんの言葉を聞くや否や、その手からコーヒーを取り上げる。
ぽかんとする司くんを尻目にサイドテーブルにコーヒーを置くと、すぐに司くんを全力で抱き締めた。
ぐえ、と色気もないような声が上がったのは気のせいだ。
「な、なに、するんだ」
「嬉しいんだよ、そう言ってくれるの。……僕も、同じことを考えていたから」
司くんから、へ、と気の抜けたような声が聞こえる。
今日の旅行は、卒業前に大学の合格祝いとしてえむくんからもらったホテルのクーポンを使用しているのだ。
あまりえむくんの家柄の関係でもらうものを使用することは少ないけれど、今日だけは特別。
司くんと、これから先どれだけしんどいことがあっても思い出せるような、いい思い出を作りたいからだ。
「これから先、更に忙しくなって、会う機会も少なくなる。だからその前に、思い出を作りたかったんだ」
「類……」
「同じことを思っていてくれて、嬉しかった。本当は、夜更かしが苦手だって知っていたから、少し悩んだけれど」
「う……。い、いやでも、頑張りたいんだ!オレも、類と思い出を作りたい!」
ぐ、と両手を握る司くんに、思わず笑みが零れる。
「うん。わかったよ。でも、限界が近そうだったら部屋に連行するからね?」
「うぐぐ……わかった。そうならないように……。星よ、降りてこーい!」
「ふ、ふふふ。司くん、流石にそれじゃ……」
司くんらしい大げさなくらいの身振り手振りに、思わず笑いがこみ上げる。
流石に止めようと、司くんの傍によった。
それが、始まりの合図だったかのようだった。
「…………え」
「な……!」
絶句する僕達の前で、1つ、また一つと、星が流れていく。
目を凝らさなくてもわかるほどの量に、圧倒されてしまう。
「……来てくれた、ね」
「……ああ」
そう、短く言葉を交わして、無言で空を見上げる。
寒さで冷たくなった僕の手を、コーヒーで温かくなった司くんの手が握ってくれる。
その手をそっと握り返しながら、心の中でそっと、願い事をする。
(どうか、これからも)
((司くん/類 と、