ビール仕事が終わって待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせには間に合う程度の残業が発生したために、宿舎に戻る時間はなかった。
「おつかれ、日光」
部屋に付くと日比谷はバスローブで、ビールを開けていた。日が落ちても蒸し暑さが続いていて、冷房が効いているはずの車内だってそんなに涼しくはない。冷房の効いた室内にキンキンに冷えているであろうビールが、自分の乾きを自覚させた。
「暑かったでしょ。ビール、いる?」
「一口だけ、そっちからもらうわ。」
設備の簡易冷蔵庫からビールを取り出そうとする日比谷を制止して、机の上の飲みかけを手に取る。いくら室内が涼しいとはいえ、温度差で表面に水滴が浮いていた。乾いた喉にビールは潤いだけじゃなくて爽快さをもたらして、幾分か体温を下げてくれる。一口くらいなら、アルコールで体温が上がることもない。
「じゃ、シャワー浴びてくる。」
日比谷に缶を返して、ついでに軽く口付ける。冷えてるビールとは対照的に、その唇は少し暖かかった。