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    Jem

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    Jem

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    ハリポタパロなら書かなきゃ!クィディッチ杯!肉体派🍃さんvs知略派🐍さん。🔥さん💎さんも参戦❣️

    #不死川実弥
    #伊黒小芭内
    Iguro Obanai
    #鬼滅の刃
    DemonSlayer
    #ハリポタパロ
    hollywoodPotterParody
    #魔法探偵
    #さねおば
    aunt

    安らかなれ、マイ・レディ④思い出のクィディッチ杯 じっとりと霧をまとう冬。あの日も、こんな風に暗かった。突然、家に黒い服を着た大人たちが大勢入ってきた。彼らは、幼いケイトの頭を撫でて抱きしめ、とても悲しそうな顔で告げた。

    ――もう、パパとママは帰ってこない。

     教会の鐘。閉じられた2つの棺が埋められていくのを、ケイトはじっと見つめていた。

    ――可哀想なケイト。あの日から、パパとママを恋しがり、寂しくて…お布団の中で抱き合って泣いた。私はそばに寄り添うことしかできなかった。



     暖かく燃える暖炉前に、不死川が濡らしたタオルを掛けた。部屋が乾きすぎないように。いつもの野郎2人住まいなら気にすることはないが、今日は、失神したケイティをソファに寝かせている。
     ブラックフェン村での闘いのあと、不死川と伊黒は気を失ったケイティを連れて、ベイカー街のタウンハウスに戻った。失礼して、ケイティの小さなバッグを検分したが、身元につながるような小物は一切持っていなかった。結局、どこに連絡することもできないまま、ケイティは丸1日、眠り続けている。

    「おーい、伊黒ォ…何かわかったかよ?」

     紅茶とスコーンをトレイに乗せて、不死川が書斎のドアを開けた。伊黒は朝から書斎に篭って、ケイティの身元をタロットカードで占っていたのだ。そろそろ、お茶が要るだろう。

    「…何も、わからん」

     伊黒が、椅子の背もたれに背を預けて、体を伸ばす。

    「住所、配偶者、親族、友人、出身地…あらゆる視点から占ってみたが、そのたびカードが混乱するんだ」

    「…ふーん…?」

     不死川が軽く首を傾げる。ホグワーツでの占術学の科目は…狼の直感だけで無理やり突破したクチだ。「数打ちゃ当たる」ともいう。

    「そして、失敗のたびに飛び出してくるカードは“死神”と“塔”…」

     伊黒のしなやかな指先が、カードを集め、順番を整え始めた。もう占いは終了だ。

    「それって、どういう意味だァ?」

     伊黒が呆れたように、不死川の顔を見やる。習っただろう、と言わんばかりだ。

    「占いの“失敗”かもしれんし、“今、ケイティの具合が悪い”という意味かも。ともかく、大した情報は得られていない」

    「おいおい、“今、ケイティの具合が悪い”のは見りゃぁ、わかる…おいィ!?」

     苦笑してソファを振り向いた不死川が、目を見開いた。
     ケイティがいたはずのソファはもぬけの殻。毛布だけが、跳ね除けられた形で取り残されていた。



     ガス灯が霧に滲む。しっとりと濡れた石畳を、人々が足早に通り過ぎていく。小さな影が、ふらりとガス灯の根元に寄りかかった。随分と衰弱しているようだ。気にして足を止める人はいない。
    影は、またよろりと起き上がって歩を進める。

    ――ちくしょう、私は、負けない…

     目指す先は、ソーホーのホテル。見た目ばかり立派なその窓を、霧の中からグリーンの瞳が睨みつけた。



     ケイティが消えてから丸2日経った。一応、警察にも届けてみたが、何しろケイティの身元を示す証拠は何もない。警察は首を傾げつつ受理はしたものの、それらしい身元不明死体が上がったら知らせます、などと言う。まともに捜査する気はなさそうだ。

    「まぁなァ…ロンドンは人も多いし。身元不明の女1人、探すのは無理ってかァ」

     不死川が、汗を拭く。少し呼吸をおいて、次に取り掛かるのは腕立て伏せだ。
     今日は、風も強く、外に出かけるのには向いていない。暖炉の燃えるリビングで、不死川は筋トレに勤しみ、伊黒は、ふかふかの椅子に身を沈めて、それを眺めている。

    「ふん…お前はあの頃から、変わらんな」

     ふ…と、伊黒がおかしげに笑んだ。

    「へ…“あの頃”?」

     不死川が顔を上げる。

    「ホグワーツにいた頃から、筋肉バカだ。…あの、3年生の時のホグワーツ・クィディッチ杯!」

     くすくすと、伊黒は楽しげに笑う。



     その年の、ホグワーツ・クィディッチ杯は圧巻だった。優勝がかかった、グリフィンドール対スリザリン。試合終盤、グリフィンドールのシーカーが、スニッチに手を伸ばした。

    「おっとォ!グリフィンドール・炎のシーカー、2年生の煉獄杏寿郎が、スニッチを取るかァ!?」

     実況席の声がスタジアムに響き渡る。観客席は赤と金の旗で揺れ、大歓声が耳をつんざいた。

     ――その瞬間。
     轟音と共に、ブラッジャーが一直線に襲いかかる。

    「来やがったァ!!」

     不死川が雄叫びを上げて飛び出した。ブラッジャーを打ち返すべく、豪腕で棍棒を振り上げる。

    「いけーッ!しなずかわー!!」

     盛り上がる観客席。その時、不死川を狙って、緑と銀の煙幕が炸裂した。

    「あーッ!これは!?緑と銀に輝く――煙幕!?花火か!?」

     実況の声が裏返る。スリザリンのチェイサー、5年生の宇髄が放った火薬玉だ。

    「反則か!?いや、魔法じゃない!!判定・有効!!」

     視界を奪う煙幕の中で、ブラッジャーを打ち返す不死川の手元が狂い、バランスを崩したホウキが失速する。
     その時、緑と銀の霧の上を滑るように――小柄なシーカー、伊黒が冷ややかな笑みを浮かべて現れた。

    「…いただくぞ、杏寿郎!」

     すり抜けざまに伸ばした手が、黄金のスニッチを正確に捕らえた。

    「冷血シーカー、伊黒小芭内がスニッチ捕獲ゥーッ!!150点追加!!試合終了!!今年の勝者はスリザリンだァー!!」

     実況に、スタジアムは割れるような歓声とブーイングで揺れた。



    「あの煙幕は、卑怯だろ!俺はまだ納得してねェからな!!」

     不死川が腕立て伏せから起き上がる。伊黒が優美な手つきで紅茶を注いで、勧めた。

    「違反じゃない。火薬玉は魔法じゃないし。…それに、宇髄は何と言っていた?」

     不死川が、カップを受け取って、忌々しげに指を立てた。

    「“ただの美的演出だ。派手派手に盛り上がったじゃねぇか”」

     2人の口真似が重なる。ププッと、伊黒が安楽椅子の中で体を折って笑う。不死川も笑みを浮かべた。
     懐かしい、学院の日々。あの頃から、不死川の肉体主義も、伊黒の知略っぷりも変わらない。



     その時、暖かなリビングに、無粋なドアブザーが鳴り響いた。
     転がり込んできたのは、トム・ダックワースだった。強風で髪は乱れ、顔面蒼白だ。

    「…お茶でも?」

     こいつ自身は客人に椅子も勧めない無礼者だったが、伊黒は一通りの礼儀を守って、紅茶で迎えた。

    「頼む…頼む!君たち、“魔法探偵”なんだろう!?助けてくれ!!僕のところにも怪異が現れるようになったんだ!!」

     以前のつれない素振りから一転、トムは、伊黒に縋り付くように懇願した。
     ――事件の新局面だ。伊黒と不死川が、目を見交わした。


    〈つづく〉
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    ――もう、パパとママは帰ってこない。

     教会の鐘。閉じられた2つの棺が埋められていくのを、ケイトはじっと見つめていた。

    ――可哀想なケイト。あの日から、パパとママを恋しがり、寂しくて…お布団の中で抱き合って泣いた。私はそばに寄り添うことしかできなかった。



     暖かく燃える暖炉前に、不死川が濡らしたタオルを掛けた。部屋が乾きすぎないように。いつもの野郎2人住まいなら気にすることはないが、今日は、失神したケイティをソファに寝かせている。
     ブラックフェン村での闘いのあと、不死川と伊黒は気を失ったケイティを連れて、ベイカー街のタウンハウスに戻った。失礼して、ケイティの小さなバッグを検分したが、身元につながるような小物は一切持っていなかった。結局、どこに連絡することもできないまま、ケイティは丸1日、眠り続けている。
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     別れは、別れを予期したその時から始まる。唐突な別れには到底望めない心の準備とも言えるその悲哀の過程は、失われゆくものと残されるものの双方とって得難い救いとして機能する。童子が戯れに砂で塔を作るような無益も、緋櫻毬が大地に落ちる様に目を凝らして必死に見守るような不毛も、喪失さえ糧として生きながらえる人間にとって、必要な儀式の一環であろう。
    1946